スタートアップの資金調達・ビジネスマッチングサイト

事業計画書の作り方(前編)

camera_alt 寄稿者 Shutterstock_Rawpixel.comさん

はじめに

事業計画書は、事業内容や企業の売上・利益、今後の見込みや企業戦略を説明するための資料です。

事業を立ち上げしたり、継続したりするときに必要な資金を調達する際、対外的に必要な資料でもあります。

また事業計画書を作成すれば、自社の事業を客観的に見つめ直したり、外部の専門家に示して意見を聞いたりすることで改善のためのアイデアを得ることもできます。

このような様々な使い方ができる事業計画書ですが、作成には書き方のポイントや注意点があります。

本シリーズでは事業計画書の作り方について、前編、中編、後編の3回に分けて詳しく紹介します。

まずは本記事、前編で事業計画書の作成目的・必要性、作成時期やメリットなど解説します。

1. 事業計画書とは?

事業計画書とは、事業の内容を説明するとともに、ビジネスの将来的な売上・利益の見込み、その計画を達成するための戦略等をひとつにまとめて記載した書類をいいます。

また、事業計画書のタイプにもよりますが、書類によっては事業内容だけでなく、会社の沿革、創業者のプロフィールや企業のビジョン、取扱商品・サービスの特徴、取引先関係一覧等まで幅広く盛り込んでいるものもあります。

さらに、事業計画書は、起業の際は「創業計画書」として形を変えて作られ、事業の将来について出資先への説明資料として使われたり、あるいは銀行等の金融機関から融資を受ける際にも必須書類として活用されたりします。

2. 事業計画書の作成目的

事業計画書を作る主な目的は、書類を公的・民間の金融機関や投資家等に提示して、融資や出資の形で資金調達することです。

企業が利用する主な資金の調達方法には、返済義務が伴う融資(借入)と返済義務のない出資(投資)がありますが、どちらも説得力ある事業計画書の提示なしには資金調達できません。

金融機関としてはその事業で将来の返済が見込めないような企業にはお金は貸せないし、投資家も会社や事業が成長して将来リターンが見込めない先に大事なお金を投資したいとは思わないでしょう。

そこで資金を必要とする事業者(起業家)は、自社の事業がいかに将来性や成長性に満ちていて、融資・出資後、確実かつ継続的に利益(リターン)が出るかを事業計画書で示して、相手を納得させた上で資金調達する必要があるのです。

3. 事業計画書の必要性

では、事業計画書を作る必要性とは何でしょうか?

もちろん融資や出資の申請の際も事業計画書は作りますが、それ以外にも作る必要性があります。

以下では、3つの視点から事業計画書の必要性を解説します。

3.1 事業のアイデア・思考を可視化するため

事業計画書の必要性の1点目として、事業計画書を作ることで、事業者は事業のアイデアや思考の可視化ができるようになる点が上げられます。

「どういう目的で新規事業を起こすのか」「現状のアイデアは一体どのようなものか」「事業ではどのようなプロセスで売上が立ってどのように展開していくのか」「事業を取り組むに当って諸条件や内外の環境が整っているか」など、事業計画書を項目に沿って記載していくことで、それまであいまいだった自分の思考が整理され可視化できるようになります。

さらに、作成の過程で、これまで思いつかなかった新たなアイデアさえ湧いてくることもあります。

3.2 事業の方向性を関係者で共有するため

必要性の2点目としては、事業計画書を作ることで、関係者の間で事業の方向性が共有できる点が上げられます。

会社関係者とは具体的にいえば、経営者含む役員や従業員、さらには資金調達先である投資家や金融機関などです。

また、ケースによっては、仕入れ販売先等の取引先まで関係者に入れることもできます。

なぜなら取引先は会社の株式への投資(出資)を通じて株主にもなるからです。

役員や従業員はまさに会社チームの一員であり、事業を展開する上で同じビジョンを共有し、働く方向性を同じくして事業を展開していく必要があります。

その点、仲間内でビジョン・方向性を共有するため、事業計画書の存在が欠かせません。

またそれは外部関係者である投資家や金融機関でも同じです。

会社や事業の方向性や業績見込み等を、事業計画書を通じて具体的に示し、投資家や金融機関に理解・共有してもらうことで、初めて資金調達が可能になります。

3.3 資金調達時の必須書類であるため

必要性の3点目としては、事業計画書が資金調達時の必須書類であることが上げられます。

事業計画書(起業の場合は創業計画書)なしに資金調達することは不可能といって過言ではありません。

それくらい事業計画書は対外的には必須の書類であるということです。

さらに事業計画書は、単に記載項目を埋めるだけでなく、その内容のでき具合いが資金調達の成功率や達成額に大きく影響してくるということを指摘しておきます。

いくら経営者が「我が社の事業は必ず成長します」「返済することを約束します」など口頭でアピールしたところで、その計画に具体性がなければ、「リターンが期待できない」「返済能力に疑問が残る」等判断されて、出資や融資が実現しない、実現しても調達額が著しく減らされて必要な額まで到達しないことがあります。

また、資金調達の目的が「大きな額の設備投資」や「新たな販路拡大のための海外進出」だった場合、さらに精緻な事業計画書の作成を求められるので、根拠のある数値に基づく綿密な計画書の策定が必要です。

4. 事業計画書を作成する時期とは?

事業計画書を作成するタイミングですが、主に以下の2つのケースがあります。

  1. 会社の設立や新規事業を起こすとき
  2. 出資の募集や融資申込みを行うとき

以下詳しく説明します。

4.1 会社の設立や新規事業を起こすとき

会社を設立したり、新たに新規事業を起こそうとしたりするとき、事業計画書(含む創業計画書)を作成する必要があります。

会社を設立する際、新規事業を起こす際、事前の準備として、自分の頭の中にあるビジネスプランや取扱い商品・サービスの強み弱み、資金調達の内容等を事業計画書に落とし込んでみます。

さらに、計画書を作る過程で、商品・サービスに係る市場調査や競合調査等も行い、自社事業の実現性、成長の可能性等も含め、様々な視点から検討します。

中長期的な視点から事業の具体的スケジュールを、事業計画書をもとに明確化していくことで、現実的かつ無理のない計画が作れるようになります。

さらに、会社設立後に新たな課題が出てきても、事業計画書をつくる過程でその課題がすでに想定済みの範囲なら、早めに対策してリスク回避することも可能です。

4.2 出資の募集や融資申込みを行うとき

対外的に出資の募集や融資申込みを行うとき、事業計画書を作る必要があります。

出資の場合は法人や個人の投資家に対して、融資の場合は資金の目的に応じ各種金融機関に対して、事業計画書の提出が必要です。

事業計画書は投資家や金融機関が出資・融資判断する際の最も重要な判断資料になるため、損益見込み、資金計画、売上高等の数値根拠を可能な限り明確にして、相手ができるだけ投資や融資に前向きになれるよう説得力ある事業計画書を作る必要があります。

5. 事業計画書作成のメリット

事業計画書を作成するメリットは様々あります。

この章では代表的なメリットを2つ紹介します。

5.1 事業を可視化して客観視できるようになる

事業計画書を作るメリットの1つ目は、経営者としての意欲や主観を別にして、事業を可視化かつ客観視できるようになることです。

経営者(含む創業者)が自分の事業計画を固めていくと、自社事業に自信を持っている方ほど「これで完璧だ、間違いない」と思い込みがちになります。

しかし、いくら完璧と本人が思い込んでいても、事業は様々な諸条件や内外環境の変化によって刻々影響を受けるので、不完全な部分ができてしまうのを避けることはできません。

でも、事業計画書を作れば、不完全な部分さえ経営課題として可視化できるようになるので、自分の事業を客観視できて早めに対策できるようになります。

加えて起業の場合は、すでに事業が軌道に乗っている場合に比べても、様々な不確定要素によって事業の先行きが左右されてしまいます。

そのため起業のケースでは、まずはしっかりとした創業計画書を策定しておいて、常に現状の環境変化に応じて計画書も適宜修正を加えながら、事業を臨機応変に展開していく必要があります。

事業計画書に沿って現実的に対応することで起業の成功率も上がってくるのです。

5.2 出資や融資等、資金調達の成功率が上がる

事業計画書を作るメリットの2つ目は、資金調達の成功率が上がる点です。

事業計画書は出資や融資の際、申請先に審査書類として提出しますが、その内容の出来が資金調達の成功率や調達額そのものに影響してきます。

事業計画書がより綿密に作り込まれていれば、調達の成功率が上がってくるし、調達額そのものも増えるでしょう。

資金申請する経営者が調達先に口頭でいくら返済の確実性や事業の成功をアピールしたところで、所詮それは「事業者の主観・気持ち」に過ぎません。

資金を出す側の担当者としてはそんなアピールは腐るほど聞いているので、やはり根拠数字に裏付けられた事業計画書をもとに資金調達の必要性を説く経営者の方が有利になります。

「設備投資」「販路拡大」であれ「起業資金」であれ、調達目的に応じた事業計画書を作成し資金調達の必要性をアピールして、出資・融資先が事業の目的達成が可能と思わせることに成功すれば、自ずと成功率が上がり、希望の調達額に近づくことができるでしょう。

おわりに

前編では事業計画書の作り方について、その作成の目的や必要性、作成時期やメリットなど、詳しく説明してきました。

引き続き中編では、事業計画書の記載内容と書き方のポイント、重要な関係書類である会社概要について詳しく解説します。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スタートアップ企業が直面する資金調達、事業会社とのビジネスマッチング、プロフェッショナルの選定、IPOとM&A、企業PR などのハードシングスを解決できるプラットフォーム

LEADERS online(リーダーズオンライン)

企業価値、株価算定等についてのご相談は、以下からお気軽にお問い合わせください。

株価算定の無料相談はこちらへ(南青山株価算定サービス)

SaaS型ストックオプション管理ツール 「ストックオプションクラウド」

仮想株式を活用した業績連動型報酬制度 「エンゲージメントストック」

関連記事

公式Facebookページ

公式Xアカウント