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資金調達ラウンドの概要と留意点について(後編)

camera_alt 寄稿者 Shutterstock_VideoFlowさん

はじめに

資金調達ラウンドの概要と留意点(前編)に続き、後編の本編では、ラウンド4のシリーズAからラウンド6のシリーズC~の概要と留意点について解説します。

シリーズAからは前シリーズまでに準備してきた会社の事業がいよいよ本格化します。

またシリーズC以降に入ると、創業者や投資家が投下資本を回収する機会となるIPOやM&Aが射程内に入ってくるので、調達方法の幅が広がるとともに獲得金額も大型化してきます。

ラウンド4.シリーズA

シリーズAとは、事業が本格的にスタートして顧客が増え始めている段階のことです。

以下、シリーズAで必要な資金調達額や調達までに必要な期間、主な資金調達先と留意点、主な資金使途など解説します。

必要な調達金額と調達期間

シリーズAでは、すでにプロトタイプが完成しているので、企業経営の核となる商品やサービスを市場に提供しています。

マーケティングを積極化させ企業を広く世間に認知させるとともに、顧客の獲得を図っていく段階です。

リリース済みの商品・サービスで売上を拡大させていくため、様々なコストが発生して資金調達額の相場も数億円に膨らみます。

調達にかかる期間もこれまでの数ヶ月程度から短くて半年以上は見ておく必要があります。

資金の主な調達先と留意点

この段階で資金調達に協力してくれる先は、VCやCVCがあります。

ここでCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)とは、別の事業を行っている会社が自己資本を元にファンドを組成して、主として未上場会社に対して出資(投資)を行う組織をいいます。

VCがキャピタルゲインを目的として事業とは独立し投資を行うのに対して、CVCはあくまで自社事業とのシナジーを期待して出資するのでその目的が違います。

これらの投資家が出資を行う上で何を重視するかというと、「シリーズAから将来までの展望が見えているか」「主力商品・サービスでマネタイズが可能か」などの点です。

そのための戦略や施策が正しいかどうかを投資家にきちんと吟味されます。

もちろん投資家に評価されなければ出資は見送られるか、修正を求められることになるでしょう。

主な資金使途

シリーズAでの主な資金使途は以下のようなものです。

・マーケティング費

・設備投資費

・人件費など

ラウンド5.シリーズB

シリーズBとは、顧客の獲得にめどが付き、商品・サービスの拡充を進めている段階のことです。

以下、シリーズBで必要な資金調達額や調達までに必要な期間、主な資金調達先と留意点、主な資金使途など解説します。

必要な調達金額と調達期間

シリーズBでは、商品・サービスが市場で評価され、ユーザーも順調に増えて事業が軌道に乗ってきます。

さらに売上を伸ばすため、商品の品質向上・顧客体験の向上を目的としたサービスの機能拡充等が求められ、それに併せて設備投資や研究開発も必要です。

優秀な人材の確保も行われるため、さらに必要資金の規模が大きくなってきます。

シリーズBでは資金調達額の規模は数億円から数十億円まで引き上がり、調達までに必要な期間は投資家、金融機関の審査が長期化するため、最低で半年以上、長ければ1年は見ておく必要があります。

資金の主な調達先と留意点

シリーズBではすでに事業も軌道に乗っており、社会的信用度も高まっていることから、審査が厳しい相手でも調達のめどが図れるようになります。

主な資金調達先としては、これまで同様、VCやCVCからの出資が期待できます。

また新しい資金調達先として、金融機関からの融資、国・地方自治体からの補助金・助成金が候補に挙がってきます。

ただしシリーズB以降は調達額も大規模になっていくので、単独のVCやCVCからの出資だけでなく、複数の投資先からの資金援助が必要になってくるでしょう。

さらに融資や補助金・助成金を利用する場合も、事前に厳しい審査を通過しなければならないので、事業経営を安定させ黒字を継続する努力が必要になってきます。

主な資金使途

・マーケティング費

・設備投資費

・商品品質向上・サービス機能拡充費

・人件費、採用費など

ラウンド6.シリーズC~

シリーズC~とは、経営が安定して黒字経営が定着、新規事業へのチャレンジや新商品・サービスの開発・展開を実施していく段階のことです。

またこのシリーズでは、企業の成長度合いに応じてシリーズがD・E・Fと続く場合があります。

シリーズC~の会社では、新規事業や売上拡大の動きを加速させるため、資金調達額がより大規模になっていきます。

また創業者や投資家がイグジット(Exit)と称し、投資した資本の回収を図るためのIPOやM&Aが見え始めるのもこの段階です。

以下、シリーズCで必要な資金調達額や調達までに必要な期間、主な資金調達先と留意点、主な資金使途など解説します。

必要な調達金額と調達期間

シリーズC~では、利益面で黒字が続き経営が安定するため、新規事業の開始含む事業の多角化、海外展開も含めた事業規模を拡大していく段階に入ります。

そのため必要な資金調達額の相場も数十億円から数百億円単位となってきます。

また調達先も出す資金が大規模になるため、審査の厳しさから調達までの期間も相応の長期を考えておかねばなりません。

目安としては、シリーズB同様、半年以上、ときには1年以上かかります。

資金の主な調達先と留意点

シリーズC~では経営の安定をさらに強固にするため様々な事業展開が予想されます。

またそれに沿い資金調達額も数十億円から数百億円と巨大になってくるので、様々な資金調達手段を準備しておかねばなりません。

期待できる資金調達先としては、シリーズBで利用できた調達先に加え、この段階からは以下のような調達先が考えられます。

・PEファンド

・シンジケートローン

・IPO(株式公開・新規上場)

PEファンドとは、プライベート・エクイティ・ファンドの略で、これはVCと同じく、投資ファンドの1種です。

ただし一般的なVCが出資にあたり、投資先企業の株式を過半数超えない範囲で取得するのに対して、PEは株式の過半数、ときには全部取得することをめざそうとします。

シンジケートローンとは、複数の金融機関が「シンジケート団」と呼ばれる組織を結成して、同じ条件の下、対象先に融資を行う方式です。

融資を受ける側はまとまって多額の資金調達ができるメリットがあり、金融機関側としては融資のリスク分散が図れます。

またシリーズC以降はIPOで資金調達していく可能性も出てきます。

シリーズCでは、すでに会社の組織として確立しており有能な人材も集まってきているので、IPOをめざした社内チームの結成も可能です。

IPOが実現すれば企業としての知名度・信用度がはるかに上がるので、資金調達の難易度も格段に下がります。

主な資金使途

・新商品・サービス開発費

・設備投資費・販売促進費

・海外事業展開費

・人件費、採用費など

資金調達方法別のリスクについて

最後にこれまで見てきた各調達方法の中から、主な方法を取り上げそのリスクをまとめます。

投資家から出資(投資)を受けるときのリスク

エンジェル投資家、VC、CVC、PE等、いわゆる投資家と呼ばれる個人及び法人から出資を受けるときのリスクは以下の通りです。

・経営の自由度が下がる(または失う)

スタートアップやベンチャー企業は投資家から出資を受ける際、資金と交換に保有する株式の一部または全部を投資家に引き渡さねばなりません。

しかし保有株式の渡し具合によっては投資家に会社経営に口を挟まれてしまい、自由に会社経営ができなくなってしまう恐れがあります。

特に保有株式の50%超、つまり出資比率の過半数以上を投資家に握られてしまうと、投資家は株主総会で現経営陣を解任できるので、経営権を失ってしまいます。

経営者は、資金の必要度合い、経営への関与度等を総合的に判断して投資家への資金援助を申込む必要があります。

・IPO(会社上場)できなくなる

投資家の中には普通の方に紛れて反社会的勢力がいることがあります。

出資を受ける際、うっかりこれら投資家と関係を持ってしまうと、上場審査で規定に引っかかってIPO(上場)が難しくなってしまいます。

特に資金調達の初期ラウンド、エンジェルからシードでは経営者も資金難の場合が多く、反社会的勢力の出資の甘言に乗ってしまうことがあるので余計に注意が必要です。

金融機関から融資を受けるときのリスク

民間または政府系金融機関から融資を受ける際のリスクは以下の通りです。

・審査が通らない

エンジェル・シード等、まだ事業実績がない段階から出資が受けられる投資と違い、金融機関からの融資は企業がある程度売上が立って利益が得られるようになってから受けられます。

なぜなら金融機関の融資には審査があるからです。

審査の前提には売上や利益などの事業実績が必要であり、返済力に応じて融資額が決まります。

もちろん企業実績がなくても、スタートアップやベンチャーが作成した創業(事業)計画書で融資を検討してくれる金融機関はあります。

しかし計画書だけでは融資額が希望額に届かないケースもあるし、企業実績があっても審査に通らないリスクや、通っても希望額を減らされるリスクもあります。

・返済不可になる

投資家からの出資は、株式の交換と引き換えに行われる資金調達方法であり返済義務はありません。

しかし融資は返済が伴う資金調達方法であり、また返済期間も5年~10年と長期にわたるため、毎日、毎月のキャッシュフローに留意して返済していかないと、景気や業況の変動から資金繰りに圧迫を生じてしまいます。

そして融資の返済を怠ると、金融機関から途中で融資が引き上げられたり、追加融資が拒否されたりします。

融資を止められると、最悪のケース、倒産してしまうので、融資を受ける際には返済計画を十分練って無理のない経営を行う必要があります。

国・地方自治体から補助金・助成金を受けるときのリスク

国及び地方自治体から補助金や助成金を受けるときのリスクは以下の通りです。

・資金調達額が少ない

補助金や助成金の受給メリットは創業前でも申請できる、受給後も返済が不要な点です。

しかしこの資金は国や地方自治体から出るので調達できる額に上限があります。

そのため調達額そのものが小さく、大きな資金を必要とする会社によっては申請の手間ばかりかかる割に物足りない結果になるかもしれません。

・後払いである

補助金や助成金の申請は国や地方自治体ごとに募集期間が定められており、年中申請できるわけではありません。

また受給には事前審査があり審査期間も比較的長めです。

それに加え受給後も、資金が適切に使用されているか定期的な監査があるため、会社に取り手間のひとつです。

さらに補助金や助成金の支給は審査後の後払いなので、受給できるまで企業としては自社で運転資金を確保していく必要があります。

終わりに

資金調達ラウンドの概要と留意点について、前編及び後編の2回にわたり詳しく解説してきました。

会社経営にとって資金調達はとても重要です。

しかし資金調達は同時に、会社経営の事業戦略上の1要素に過ぎません。

自社にとって今、本当に資金が必要なタイミングかも含め、事業戦略の優先順位を考えていく必要があります。

また企業ごとにラウンドも異なるので、今最も必要な資金はどのようなタイプなのか、どれくらい必要か、よく考えた上で最も適切な資金調達手段を選ぶようにして下さい。

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