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IPOにおける中期経営計画策定のポイント

camera_alt 寄稿者 Shutterstock_zaozaa19さん

はじめに

中期経営計画とは、会社が作成する事業計画のうち、3~5年先を見据えて作成する計画のことをいいます。

事業計画とは、会社の事業上の目標とそれを達成するための手段を盛り込んだ計画のことです。

事業計画は、社内に対しては社員が一丸となって達成すべき目標を共有し共に活動するための羅針盤であり、社外に対しては金融機関や取引先、株主などのステークホルダーに対して、会社の現況や事業の収益性、成長性を説明する資料になります。

さらに会社がIPOをめざす場合、IPO審査においてこの中期経営計画の策定が必要です。

今回の記事では、IPOにおける中期経営計画策定のポイントを詳しく解説します。

IPOにおける中期経営計画の必要性

IPOにおいて、なぜ中期経営計画の策定が必要なのか、その理由を説明します。

中期経営計画とは?

中期経営計画とは、会社が行っている事業の3~5年先を見据えて作成する事業計画のことをいいます。

会社がIPOをめざす場合、それまで資金調達や経常的取引で協力してくれていた金融機関や取引先のみならず、あらたにIPO実現のために様々な支援機関との連携が必要になります。

IPOにおける支援機関とは、主幹事証券会社、監査法人、コンサルティング会社、ベンチャーキャピタルなどです。

こうした関係者の協力のもと、会社はIPO実現をめざしますが、証券取引所による上場審査の際には提出資料として事業計画が必要であり、事前に支援機関も事業計画が内容的に妥当なものか精査します。

そして事業計画のチェックに使う資料がこの中期経営計画なのです。

IPO準備において必要な中期経営計画とは?

ではIPOの準備において策定が必要な中期経営計画とは、一体どのような要素を備えたものでなければならないでしょうか?

まず中期経営計画はIPO審査前に内外の様々な支援機関の評価を受けるので、それぞれが納得できるような質の高い事業計画である必要があります。

また中期経営計画は多くの要素から構成されているので、それぞれの整合性が取れていなければなりません。

そこでどの立場から見ても納得性が高く整合性が取れている中期経営計画を策定するには、会社は以下のような点に留意しておく必要があります。

① 数値目標、計画などの定量的説明だけでなく、自社が置かれている内外の経営環境、競合状況等の定性的分析も織り込んだ厚みのある中期経営計画であること。

② 経営者単独のトップダウン、あるいは各現場責任者のボトムアップ等、一方通行からの目標数字を並べただけの計画でなく、経営者と現場間で双方の意見を開示して十分協議され練られた結果としての実現可能な中期経営計画であること。

③ 数値の裏付けや根拠等、算出方法が合理的に誰にでも説明できる中期経営計画であること。

またその際には、将来の市場規模、会社の占有率、顧客ニーズ等の数字にも、明確な根拠を持って合理的な説明ができるよう準備する必要があります。

さらに会社の留意すべき点として、中期経営計画の策定にあたっては、計画1年目は、その会社の年度予算の対象期間と同じなので、数値計画は完全に一致しておく必要があります。

IPOにおける中期経営計画の策定手順及び策定ポイント

IPOにおける中期経営計画に関して、次は策定手順及び策定上のポイントについて解説します。

計画策定の流れは、大きく分けて、「過去の事業の整理」、「現在の事業の説明」、「今後の計画」となります。

STEP1・・・会社の基本情報の整理

中期経営計画策定の第一段階は、会社の過去からの事業の変遷を踏まえ、基本情報を整理します。

整理する項目は、会社概要、沿革・設立経緯、経営理念やビジョン、行動指針などです。

特に経営理念・ビジョンは、経営環境や技術等が大きく変化する中にあっても、その会社が社会で存続するための基本姿勢なので、経営者としてもこの機会にしっかり見直しして作成する必要があります。

STEP2・・・計画の土台となる売上、利益等達成数値目標の作成

次に中期経営計画の基礎となる大きな数値目標を仮で策定します。

仮で作成するのは、後の段階で目標数値を各事業単位で割り当てする際、目標数値の調整が必要な場合があるからです。

さて大きな数値目標とは、売上、利益等、会社経営において経営者と従業員が一丸となって達成をめざすべき項目です。

もちろん目標なので、「業界のトップをめざす」等のあいまいな定性的表現でなく、具体的数字を盛り込んだ定量的記載にしておきましょう。

そうすると関係者が目標を共有しやすくなります。

一方で到底達成できないような数値目標では、働く社員に取って意欲を削ぐ逆効果にもなりかねないので、経営者として中期的な視点で達成可能な目標にする配慮も必要です。

STEP3・・・製商品・サービスの特徴整理

大きな視点での目標数字が決まると、次は事業で取扱いしている製商品や提供しているサービスの特徴の整理です。

まず会社の過去の事業の変遷を踏まえて現在のビジネスモデルの特徴を整理します。

その上で取り扱っている製商品・サービスを写真や図を使って詳しく説明できるようにします。

上場後、自社株式に投資してくれる法人個人、機関投資家等、ステークホルダーに対して、自社の製商品・サービスを理解してもらうためにも、その特徴をきちんと整理して分かりやすく中期経営計画に盛り込んでおきましょう。

STEP4・・・会社を取り巻く外部環境の分析

自社の製商品・サービスの整理に続き、次は自社を取り巻く外部環境の分析を行って中期経営計画に織り込みます。

マーケット分析、市場動向調査等の外部環境分析を実施して自社の計画の確かさを証明するのが目的です。

ただし外部環境に関しては、自社の独自分析だけでは対外的によく見せようと変なバイアスが掛かって、その信用性に疑義がかけられるリスクがあります。

そうした事態を避けるためにも、マーケットの分析、競合状態、顧客ニーズ等の分析に関しては、調査分析を得意とする外部専門家に依頼して、その結果を中期経営計画に盛り込めば、対外的な信用が得られるようになるでしょう。

STEP5・・・自社の強み弱み含む内部環境分析

外部環境分析と合わせて重要なのが自社の強み弱み含む内部環境の詳細分析です。

IPO審査でもよく聞かれる質問なので、事前にしっかり対策しておきましょう。

もちろん会社のことを最もよく分かっているのは会社自身なので、内部環境分析の主役は経営者と内部スタッフです。

しかしこの際注意したい点は、自社だけで分析すると、IPO審査で会社をよく見せようと、自社の強みや売上予測を過大評価する一方で、自社の弱みや競合他社の強みを過小評価してしまうことです。

このような行為は、多業種から様々な情報が集まる証券取引所にとって矛盾点として見破ることは容易であり、むしろIPO審査で逆効果になります。

内部環境分析が企業本位とならないためにも、監査法人・IPOコンサルティング会社等、社外から客観的に判断してくれる専門家の助けを借りて、納得性のある中期経営計画を策定する必要があります。

STEP6・・・成長のための基本戦略の策定

成長のための基本戦略の策定は、手順でいうと「今後の計画」に当る段階です。

内部環境分析、外部環境分析を踏まえ、自社が今後、どのように成長するのか、戦略を考え中期経営計画に織り込みます。

また基本戦略の策定に当っては、これまでの手順で解説してきた「数値の根拠を明確にする」「外部専門家等のサポートも受けて客観的な視点を確保する」といったポイントを忘れず、今後想定される問題点等も分析し、成長をベースに実現可能な中期経営計画とする必要があります。

STEP7・・・基本項目の数値目標を基に事業別で目標設定

中期経営計画の策定で、成長のための基本戦略の策定とともに最後に行うのがこの事業別の目標設定作業です。

すでにSTEP2で計画全体の土台となる売上、利益等、達成数値目標の作成は終わっているので、基本戦略のもと、その数字を事業別に責任数字として割り当てていきます。

また責任数字を割り当てる時点でも、会社の各事業部門に対して売上実績だけで機械的に割り当てるのでなく、事業部門ごとの会社業績に対する貢献度や成長性を加味して、弾力的に割り当てる配慮が必要です。

その取組みが整合性のとれた中期経営計画の策定につながってきます。

中期経営計画の上場後の見直し及び継続について

中期経営計画はIPO審査前の準備段階で策定しただけで終わりではありません。

上場実現後もさらに継続して定期的な見直しが必要です。

中期経営計画の重要点は、自社が計画策定後、そのプランに沿って実際きちんと活動できたかがポイントで、もし計画と実績に相当の乖離が発生していれば、その原因を分析して計画にフィードバックする作業も必要です。

またそのチェック作業は、少なくても中期経営計画策定後、1年ごとに行う必要があり、さらに経営環境が大きく変化する業種ほど、見直し頻度は多くする必要があります。

このように常に中期経営計画の策定に慣れておくことは、上場後のIR活動につながるばかりでなく、投資家等ステークホルダーからの信頼を得る会社作りの基礎にもなっていくと考えています。

終わりに

IPOにおける中期経営計画について、その策定の必要性、手順と合わせて策定上のポイントを詳しく解説しました。

証券取引所のIPO審査でも、提出された中期経営計画について「数字の算定根拠が不明確」「努力目標的予算になっている」などの不備事例が指摘されています。

合理的根拠に基づく事業計画は一朝一夕で策定できるものではありません。

きちんとした算出根拠のある定量的情報と説得力ある定性的情報がバランス良く盛り込まれた中期経営計画の策定にはやはり時間が必要です。

IPO支援の実績を持つ専門家等のサポートも受けて、審査をスムーズに通過できる中期経営計画を策定しましょう。

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