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IPOにおける予算管理制度の整備(その2)

camera_alt 寄稿者 Shutterstock_VideoFlowさん

はじめに

前回の記事では、IPOにおける予算管理制度の整備の前半部として、予算管理制度の概要や予算の体系、予算管理の導入目的などについて詳しく解説しました。

今回の記事では引き続き、後半部として、予算管理制度のサイクル、予算管理制度の整備の留意点など、詳しく解説します。

IPO申請会社が行う予算管理制度のサイクルについて

予算管理では、予算編成の段階から予算統制(計画と実績の差異分析から見直し等)までの全てのプロセスを包括して「予実管理」と呼びます。

また予実管理は単発で行うものでなく、常にPDCAサイクルを回して継続的に行うことが重要です。

この章では、予実管理におけるPDCAサイクルについて解説します。

PDCAサイクルでは以下の4つの段階を繰り返し回しながら実施します。

・PLAN(事業計画及び予算策定)

・DO(事業活動実施及び月次決算)

・CHECK(予算実績対比及び結果の差異分析)

・ACTION(改善策実施及び予算見直し)

PLAN

予実管理のPLAN段階では、会社の事業計画及び予算の策定を行います。

通常IPOを目指す会社は、予算を策定する際、中長期の事業計画に基づき、対象となる事業年度の予算を月次単位で策定します。

また予算における数字は単なる予測(期待値)なく、ビジネスモデル、会社を取り巻く経営環境、事業の強みや弱み、予想可能な事業リスク等を踏まえ、またこれまでの経営実績から達成可能で合理的な予算を策定する必要があります。

DO

予実管理のDO段階では、会社の事業活動を実際に展開、その活動実績を基に毎月の月次決算を行います。

またIPO以前に、あるいはIPOチャレンジ決定を契機に、会社として適切な会計システムを導入して自動化を進めておけば、わざわざ人海戦術的な業務を行わなくても、毎月の月次決算は効率的かつ迅速に進めることができます。

CHECK

予実管理のCHECK段階では、予算実績対比及び結果の差異分析を行います。

毎月、実績集計後、月次ベースで予算と実績との対比を行い、乖離が大きい場合はその発生要因を分析して改善策を検討します。

また差異を確認する頻度については、予算の精度を高めるため、月次、四半期など、可能な限り増やすようにしましょう。

一方、差異の発生状況を迅速に把握するためにも、月次決算の結果を次月以降の事業活動に活かすためにも、月次決算は翌月初日から10日程度以内に締めることが望ましいです。

ACTION

予実管理のACTION段階では、会社として決めた改善策を実施したり、事業計画や予算の見直しを行ったりします。

予実管理で差異分析すると、会社が抱えている問題点・リスクや解決すべき経営課題が浮き彫りになってきます。

IPO審査では、問題点の早期解決や経営課題をどれだけ達成できているかが重要なので、上場予定会社として早めに役員会を開催して問題点や課題を集約、そして改善策を立案・実施したり、事業計画や予算が実態に合っていなければ、見直しや修正を行ったりします。

予算管理制度の整備の留意点

IPO審査を通り株式上場を実現するためには予算管理はとても重要です。

この章では、予算管理を行う上での留意点を主に4点解説します。

留意点1・・・予算管理では各事業部門間の予算の調整と納得が重要

予算に関して、会社全体の予算は各事業部門の予算から構成されています。

その際、各事業部門の目標利益を合算して会社全体の目標利益とするためには事前の調整が必要です。

部門間で目標利益の調整が適切になされるとともに、同時に調整後の修正された各部門の目標利益に対しても会社は各部門の責任者から了承を得ておく必要があります。

会社が決めた目標利益だとして、ゴリ押しの強制は控えるべきです。

予算策定後のスムーズな予算管理を行う上では重要なポイントといえるでしょう。

留意点2・・・予算管理では社内手続や事務手続のルールの明確化が必要

予算管理に当っては、事前に予算管理規程が作成され、予算編成手続き、予算管理の方法なども社内で文書化、部門間で情報が共有化されている必要があります。

予算取扱いに係る各種手続きや事務手続がスムーズに行われるよう、社内ルールが徹底され明確化されていることが大切です。

留意点3・・・予実管理に基づく適宜適切な予算の見直しと補正・修正対応が重要

通常、予算管理制度が制定されている上場会社においては、四半期ごとや半期ごと、予実管理に基づく予算の見直しや補正・修正対応が継続的に行われています。

これからIPOを目指す会社においても同様な対応が必要で、見直しの結果、改善や手直しが必要なら、必要度に応じて迅速に予算の補正や修正を加えていく必要があります。

もちろんその際の手続きや段取り等も、社内文書やシステムで明確化されておくのはいうまでもありません。

留意点4・・・月次決算の迅速な実績集計と事業経営への適切な反映が大事

予算管理では、予実管理のベースとなる月次決算処理が適正かつ迅速に行われていることが重要です。

また予算と対比する実績数字も厳格なルールに基づいて集計されている必要があります。

月次予算は最後に実績数値と比較される前提で作られるので、いくら部門の業務が忙しいからといって、その理由だけで実績の集計手続が進まないということだけは避けねばなりません。

わずか一部門の集計が遅れても、それが全体の集計手続に大きく影響するということを各部門の責任者はしっかり認識しておく必要があります。

また翌月からの経営に対して、予実管理で明確になった問題点や経営課題を活かしていくためにも、実績集計は月末に集中するような状況は避け、システムも上手く活用し、できるだけ翌月初日から10日以内には月次決算が完了するよう効率化を図りましょう。

おわりに

IPOにおける予算管理制度の整備の後半部として、予算管理制度のサイクル、整備上の留意点など詳しく解説しました。

IPOの審査において予算管理はとても重要な項目です。

それだけに上場予定企業としても、申請前のできるだけ早い段階から徹底した予算管理を行い、外部から見ても信頼性の高い運用実績を作っておく必要があります。

もちろん無事に上場を果たしても、会社として予算管理に終わりはありません。

会社の株主や一般投資家・取引先等に信頼してもらうため、引き続き精度の高い予算管理を徹底継続して行く必要があります。

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