スタートアップの資金調達・ビジネスマッチングサイト

IPOにおける内部監査とは(その2)

camera_alt 寄稿者 Shutterstock_Andrey_Popovさん

はじめに

前回の記事では、内部監査の定義やIPOにおける内部監査の役割、内部監査の流れ(準備編)を詳しく解説しました。

本記事では引き続き、「IPOにおける内部監査」の(その2)として、内部監査の流れ(実施編)及びIPOにおける内部監査の留意点等を詳しく解説します。

直前(N-1期)~申請期(N期)

内部監査の本格的な運用期間となる「直前期(N-1期)~申請期(N期)」では、以下の項目を実施して内部監査の実績を作り、内部管理体制の整備を進めIPO審査に備えます。

・内部監査の実施

・内部監査結果の評価報告及び改善命令

・内部監査のフォローアップ

内部監査の実施

IPO審査の運用期間である「直前期(N-1期)~申請期(N期)」が来ると、いよいよ内部監査を実施します。

内部監査部門は当初に策定した監査計画に従い、年間スケジュールに沿って、各被監査部門を実査します。

実査とは、内部監査人が実際に現場に訪問して監査を行うことをいいます。

監査では、被監査部門が用意した資料に基づき、業務マニュアルがきちんと整備されているか、部門内で正しく情報の伝達や理解が行われているか、業務が規程やマニュアルに基づき適切に運用されているかなど、詳しく精査します。

内部監査結果の評価・報告及び改善命令

内部監査が終わると、内部監査人は監査の結果を報告書(監査調書)にまとめ代表取締役や取締役会等に報告するとともに、指摘事項がある場合には改善命令書を作成して被監査部門の責任者に交付、改善を依頼したり中止を勧告したりします。

また改善命令書を受けた被監査部門は改善案を策定して実施、その改善内容を内部監査部門に遅滞なく提示報告する必要があります。

また内部監査で見つかった指摘内容によっては、その重要度によって内部監査室から代表取締役や取締役会に報告して指示を仰ぐこともあります。

内部監査のフォローアップ

フォローアップ監査とは、内部監査で指摘した事項が、一定期間経って、その後是正されたかどうかを確かめるために実施される監査のことです。

IPOにおける内部監査では、改善命令書の事項がその後、被監査部門で報告書通りに改善され継続して実施されているかが非常に大事で、IPO審査でもその項目が重要視されています。

それだけにフォローアップ監査は、内部監査部門にとっても欠かせない手続きとなっています。

IPOにおける内部監査の留意点

IPOにおける内部監査の流れを理解した上で、最後にIPOにおける内部監査の留意点を5つ解説します。

内部監査部門の独立性

IPO審査で内部監査部門に求められる条件として、内部監査部門は社内のあらゆる部門から独立して常に公正な立場でいることがあります。

また独立していることで、被監査部門に対して強く権限行使できるとともに、対外的にも監査結果を尊重してもらえます。

そのため、総務・経理部門等の責任者が内部監査部門の責任者を兼任しているようなケースは、監査者が自分の管理部門を監査しても自己監査になってしまうため、IPOを目指す会社ならそのような取扱いは極力避けることが望ましいでしょう。

そのような場合は、むしろ内部監査部門だけ外部業者にアウトソーシングして運用するほうが、IPOの審査者からも監査内容に客観性があると見られ、IPO審査の面からはむしろ信頼性が得られやすいと考えます。

内部監査部門に対する社内の理解

内部監査を有効に機能させるためには、内部監査の目的を全社的に理解させ、その業務が円滑に行われるよう、各部門に協力させる必要があります。

社内の理解が進んでいれば、被監査部門も監査に前向きに応じるので、その結果、監査が効率的に進み、また部門の抱える問題点の把握や早期発見、指摘事項に対する改善も容易になります。

IPOまでに全業務分野の内部監査を実施(運用実績)

内部監査に関しては、IPO実施までに最低1回以上、監査を実施して運用実績を作っておくことが必要です。

IPO審査上、内部監査は遅くても申請期の1年以上前から運用され、かつ全ての部門を対象に監査を完了しておかねばなりません。

また内部監査の実施は、主幹事証券会社からも会社の全拠点の実地調査を求められることが多く、拠点が複数ある場合は、本社の業務部門以外にも各拠点への対応が必要なので時間と手間がかかります。

IPOのタイムスケジュールに沿って、所定期間内に完全に内部監査が実施できるよう、粛々と監査を行う必要があります。

内部監査と法定監査との連携

IPOに係る監査には、内部監査と別に会社法や金融商品取引法に基づく法定監査があります。

内部監査は法律に基づかない業務である一方、法定監査は法律に基づく会計監査人または監査法人による会計監査です。

またその他の監査として、会社の取締役の業務執行に対する監査役の監査役監査があり、この3つを併せて三様監査と呼んでいます。

これらの監査はそれぞれ監査の趣旨は異なっていますが、IPOの観点からも、また健全な会社経営の点からも欠かせない監査であり、各機関から責任者を出して定期的ミーティングを行い、意思疎通を図って連携することで効率的な監査が可能です。

内部監査の実施を企業目的に合わせていく

内部監査を実施することで、会社で起こる全ての不祥事や事故が防げるわけではないものの、未然に発見して防止したり発生を抑えたりする効果は期待できます。

しかし内部監査の実施だけで会社としては満足してはいけません。

内部監査はあくまで内部管理体制の整備項目のひとつであり、内部監査の実施及び結果を最終的に企業目的に合わせていくことが必要です。

企業目的とは会社の成長や利益の拡大です。

会社は利益を上げ続けることで存続できます。

内部監査を有効に機能させ、業務が円滑に行われるよう組織的に内部監査が実施されれば、不祥事の発生や事故が未然防止でき、会社としての信用も保たれ、最終的に企業目的である売上の拡大や利益の伸長に結びついてくるのです。

おわりに

IPOにおける内部監査(その2)として、内部監査の流れ(実施編)及びIPOにおける内部監査の留意点について詳しく解説しました。

IPOを契機に内部監査部門を設置して、スケジュールに沿って内部監査を一巡、上場後も毎年監査を継続することで、様々な問題点の把握や経営上の気づきも出てくることと考えます。

監査結果を踏まえ、さらに監査項目を増やしたり、逆に効率化の面から該当項目を簡便化したりして臨機応変に対応することもあるでしょう。

内部監査も最終的には会社の経営目標、特に利益の達成に資するものであることを理解して毎年継続していくことが重要です。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スタートアップ企業が直面する資金調達、事業会社とのビジネスマッチング、プロフェッショナルの選定、IPOとM&A、企業PR などのハードシングスを解決できるプラットフォーム

LEADERS online(リーダーズオンライン)

企業価値、株価算定等についてのご相談は、以下からお気軽にお問い合わせください。

株価算定の無料相談はこちらへ(南青山株価算定サービス)

関連記事

公式Facebookページ

公式Xアカウント