IPOに係わる関係者と、その選定方法とは?(後編その2)
はじめに
前回の記事では、(後編その1)として③証券印刷会社④証券代行機関を取り上げました。
本記事では、(後編その2)として、⑤その他関係者(IPOコンサルタント、顧問弁護士、税理士、社会保険労務士)を取り上げ、各々の役割、及び選定方法を詳しく解説します。
その他外部関係者(IPOコンサルタント、顧問弁護士、税理士、社会保険労務士)
IPOに係るその他の外部専門家を、各々の果たす役割、選考方法の順で解説します。
IPOコンサルタントの役割
IPO支援とは、株式上場に関して包括的なアドバイザリーサービスをすることをいいます。
IPO達成まで、資本政策の策定、管理体制の整備、スケジュール管理、審査や監査の関連業務など、全般的な業務支援を行ないます。
そしてその役割を担うのがIPOコンサルタントという支援業者になります。
このような業務支援を行なう際、通常、管理部門の責任者を立てるのが一般的ですが、IPOのような期間限定でかつその特殊性を考慮すると、上場予定の会社内でその管理責任者を一から育てるのは、時間も掛かり効率もよくありません。
それよりIPO支援の分野で専門性があり、取扱い実績を多く持つ外部関係者(IPOコンサルタント)の力を借りて支援を受けた方が合理的です。
またIPOコンサルタントにはIPO全般の支援をしてもらう必要があるので、上場申請期の3期前には選んで契約・連携しておくことが望ましいです。
IPOコンサルタントの選定方法
IPOコンサルタントは大きく分けて2つのタイプがあります。
証券会社系コンサルタントと会計士系コンサルタントです。
証券会社系コンサルタントは、証券会社や取引所の審査実務のノウハウが豊富で、審査書類の作成等を得意とするコンサルタントです。
一方会計士系コンサルタントは、内部統制や決算開示体制の整備が得意で、財務諸表書類の作成で監査法人及び申請会社の間をつなぐ役割を期待されています。
いずれも得意不得意分野があるので、選考においては自社のニーズに近いコンサルタントを選ぶ必要があります。
その他、コンサルタントを選ぶ基準としては以下のような視点があります。
・コンサルタントとしてIPO企業や上場企業の支援実績は豊富か
・関係機関との円滑な連携やパートナーシップの発揮が期待できるか
・IPOで支援業者として活躍できる得意分野は何か
・パフォーマンスに見合ったコンサルタント料か
顧問弁護士の役割
会社がIPOするとき、不特定多数の投資家が安心して株式売買できるようにするため、法律面や証券取引所の定める様々な厳しい基準をクリアする必要があります。
そのためには法律面で弁護士からのサポートが欠かせません。
さらに弁護士には内部統制システムの整備面でも様々なアドバイスをもらえます。
このようにIPOに際して法律の専門家である弁護士の果たす役割は多々あります。
IPOの準備は通常、上場申請期の3期前にはスタートします。
そのため弁護士に関しても、比較的早い段階から顧問契約を結び、都度法律面でのアドバイスをもらいながら、準備作業に盛り込んでいくのがベストといえるでしょう。
顧問弁護士の選定方法
コンサルタントと同様、顧問弁護士を選ぶ際、以下のような基準で選ぶとよいでしょう。
・弁護士としての取扱い業務に企業法務を揚げているか
・弁護士として過去にIPOの支援実績を豊富に持っているか
・弁護士としてのパフォーマンスに見合った適切な顧問料か/相場より割高でないか
税理士の役割
IPO支援では、弁護士の法律面での支援とともに、財務面や税務面での専門家の支援も欠かせません。
そしてその役割を果たすのが税理士という外部専門家です。
IPOの審査においては監査法人や証券取引所等による厳しいチェックが入ります。
とりわけ財務面や収益性での審査はその重要性からより厳格に行なわれるでしょう。
その点、税理士は、税務の専門家であるとともに、帳簿管理や財務諸表関係のプロなので、IPOの準備段階から支援に入ってもらっておけば、審査前に会社の抱える問題点も把握でき、課題の解消や改善のための時間も確保できます。
その結果、IPO審査で指摘事項を減らせられるので、IPO成功の確率が上がってきます。
税理士の選定方法
税理士を選ぶ際の選考基準は以下の通りです。
・税理士として過去にIPOの支援実績を持っているか
・IPOの目的に沿って、税理士として財務面及び税務面からしっかりサポートできるか
・税理士としてのパフォーマンスに見合った適切な顧問料か/サービス内容や利用頻度に応じた料金体系を掲げているか
社会保険労務士の役割
IPO審査で近年注目を浴びているのが労務問題です。
そして労務問題解決での主要な役割を果たす外部専門家が社会保険労務士という職種になります。
IPO企業など、成長している会社の場合、よく起こるのがスタッフの不足です。
さらにマンパワーが不足したまま、成長する会社経営を続けていくと、いわゆる労務問題が発生してきます。
労務問題とは、たとえば労働基準法を無視した労働実態や時間外労働の不払いなどです。
昨今、この労務部門に起因するトラブルが増加しており、いざ会社がIPOで上場を図ろうとしても、本業が好調にも関わらず、この労務管理問題が仇となって審査に支障を来してしまいます。
その点、外部関係者に社会保険労務士を加えることで、事前に労務DD(デューデリジェンス)を行なってもらい、労務に係る問題点を見つけてもらうことで、問題点に対して改善が図れます。
するとIPO審査で労務問題に対する指摘事項を減らせられるので、IPO成功の確率も上がってくるのです。
社会保険労務士の選定方法
社会保険労務士を選ぶ際の選考基準は以下の通りです。
・社会保険労務士として過去にIPOの支援実績があるか
・上場後も引き続き社会保険労務士としてサポートは可能か。具体的には助成金の情報提供や申請支援、各種法改正への情報提供など
・社会保険労務士としてのパフォーマンスに見合った適切な顧問料か/サービスや利用頻度に応じた様々な料金体系となっているか
おわりに
「IPOに係わる関係者と、その選定方法とは?(後編)」として、証券印刷会社、証券代行機関、その他関係者の役割と選考方法を2回に分けて解説しました。
IPOは申請会社にとって、準備開始から上場申請・審査そして上場までと長い道のりがあります。
その間、会社単独では対応できない様々な対応や手続きがあり、外部専門家の支援が不可欠です。
また上場後も引き続き外部関係者の適切なサポートを受けることで、会社の成長に拍車を掛けることができます。
IPO関係者の役割や選考方法、選考のタイミングなど、きちんと理解しながら、適切な専門家と関わりを持つようにしましょう。
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