IPOに係わる関係者と、その選定方法とは?(後編その1)
はじめに
前記事「IPOに係わる関係者と、その選定方法とは?(前編)及び(中編)」では、関係者のうち、①監査法人、②証券会社について詳しく解説しました。
本記事では(後編その1・その2)として、③証券印刷会社。④証券代行機関、⑤その他(IPOコンサルタント、顧問弁護士、税理士、社会保険労務士)を取り上げ、IPOにおける各々の役割やその選定方法について詳しく解説します。
証券印刷会社
証券印刷会社とは
証券印刷会社とは、有価証券届出書や有価証券報告書、事業報告、株主総会の招集通知など、上場会社等の開示(ディスクロージャー)関連資料の制作支援及び印刷等を行う会社のことをいいます。
証券印刷会社の役割
IPOでは、不特定多数の投資家に対して、法律(会社法、金融商品取引法等)で決められたものから、任意のもの、あるいは証券取引所の規則等に基づき、様々な企業情報の開示が求められます。
またその際、作成する書類のことを開示書類(ディスクロージャー書類)といいます。
企業情報の開示に関しては、各種法律や取引所の規則に熟知していなければならず、対応に高い専門性が要求されることから、その開示資料の制作や印刷等の役割を引き受ける会社が証券印刷会社になります。
このように証券印刷会社は、IPOにおいて重要な役割を果たしているため、コンサルタントや証券会社が申請会社にIPO支援するとき、必ず証券印刷会社と契約するようアドバイスしています。
なぜならIPOに係る開示関連資料の制作や印刷は、高い専門性と豊富な取扱い実績を持つ証券印刷会社に依頼すれば、結局、申請会社の事務作業負担が大きく軽減され、手続きが早く進むことをコンサルタント会社等は知っているからです。
証券印刷会社の選定方法
ではIPOに係り、証券印刷会社はどのように選んだらよいでしょうか?
じつは証券印刷会社の選定に関しては、申請会社はあまり悩む必要はありません。
なぜなら証券印刷会社は、現状、株式会社プロネクサス及び宝印刷株式会社の2社で市場のほぼ100%を独占しているからです。
この分野における高い専門性と豊富な取扱い実績をもつ両社が拮抗する形で市場シェアを独占しています。
IPOで申請会社が証券印刷会社を選ぶとしたら、コンサルタント等の意見も踏まえて、上記2社の中から選ぶということになります。
両社とも、高い専門性と豊富な取扱い実績から、上場申請書類を含めた法定書類の制作に精通しており、さらに証券印刷会社の取り組む方向として開示書類作成の自動化・高度化に注力しているため、契約すれば、成長途上で人材不足に悩むIPO企業の省力化にもきっと貢献してくれることでしょう。
なお、上記2社の公式サイトはこちらです。
▪株式会社プロネクサス https://www.pronexus.co.jp
▪宝印刷株式会社 https://www.takara-print.co.jp
証券代行機関
証券代行機関とは
会社法123条では、株式会社は株主名簿管理人を置く旨を定款で定めており、さらに当該事務を行なうことを委託できるとされています。
そのため株式会社が行なう株式事務を外部に委託でき、その委託先を株主名簿管理人と呼びます。
ここで株式事務とは株式に関する事務のことで、具体的には名義書換、株券・優先出資証券の発行、増資・株式分割、株主総会招集通知等の株式全般の事務を指します。
そして株主名簿管理人が行なう株式事務代行の業務を証券代行業務と呼び、その取り扱う機関を証券代行機関と呼んでいるのです。(つまり株主名簿管理人=証券代行機関であり、かつては名義書換代理人とも呼ばれていました。)
現状、証券代行機関としては主に信託銀行やその分野の専門会社が対応しています。
証券代行機関の役割
上記で株式事務代行の業務を具体的に紹介したように、証券代行機関は株式会社にとって事務面でとても比重が重い業務の株式事務を代行しており、その業務は株主と会社を直接つないでいることからも、委託会社にとって極めて重要な役割を果たしているといえるでしょう。
証券代行機関の選定方法
ではIPO申請会社は証券代行機関をどのような基準で選んだらよいでしょうか。
現状、上場企業においては、株式事務の円滑化を図るため、株式事務代行機関の設置が義務付けられています。
東京証券取引所が承認している株式事務代行機関は以下の各機関と指定されています。(有価証券上場規定施行規則212条第8項)
- 信託銀行
- 東京証券代行株式会社
- 日本証券代行株式会社
- 株式会社アイ・アールジャパン
(2017年4月1日現在)
参照先:JPX日本取引所グループ/株式事務代行機関 https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/new/...
証券代行機関の選考に当っては、自社の現状を踏まえ、また主幹事証券会社・コンサルタント等の意見も聞いて、適切な証券代行機関を選ぶようにしましょう。
おわりに
「IPOに係わる関係者と、その選定方法とは?(後編その1)」として、証券印刷会社、証券代行機関の役割と選考方法を解説しました。
次の記事では、(後編その2)として、その他関係者から、IPOコンサルタント、顧問弁護士、税理士、社会保険労務士を取り上げ、詳しく紹介します。
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