M&Aを学ぶなら知っておきたい「専門用語10選」
M&Aは、企業価値を高める重要な経営戦略のひとつであり、経済産業省、財務省を始めとする各省庁並びに民間の経済研究機関がM&Aについてレポートしている。以下、その現状と要因、重要性について概観すると共に、重要と思われる専門用語を解説する。
M&Aが近年活発化している状況とその理由
近年は、特に国内企業間によるM&A(In-In)や、日本企業による海外企業買収のM&A(In-Out)が活発だ。
その要因に関しては、1)経済の長期低迷等、厳しい経営環境にある日本企業が生き残りの為の合理化・グループ再編を行ったこと、2)資金調達面で余裕がある企業がM&Aを行ったこと、3)国内において商法、会社法、独占禁止法の法改正「合併手続き、持ち株会社、会社分割、組織再編、株式交換、対価の柔軟化」等が施行され、M&A を容易にする法制度の整備が 1997 年以降なされてきたこと、4)M&Aに対する認識の変化やファンドの投資活動の活発化によるM&A市場の変化、などが挙げられる。
知っておきたい専門用語10選
以下では、M&Aを学ぶ上で知っておきたい専門用語について、リスク、留意点も含め解説していく。なお、専門用語の解説順序は、M&Aの概念、候補者選び、査定、交渉、クロージング、PMIといったM&A固有の流れを意識しているものの、全てを網羅しているわけではないのでご留意頂きたい。
1. M&A
狭義のM&Aは、合併及び買収であるが、広義には、営業譲渡、資本参加、出資拡大も含まれている。合併の場合、2 社以上の企業が契約によって実質的に 1 社に統合される。買収の場合、 50%超の株式を取得することとなる。
2. M&Aの手法
M&A(広義)の手法には、大きく、支配権獲得を目的とするM&A(狭義)と支配権獲得を目的としない業務提携(アライアンス)の2つが含まれる。ここで支配権を獲得する狭義のM&Aの具体的な手法としては、株式取得(株式譲渡、新株引受、株式交換、株式移転)、合併、会社分割、事業譲渡がある。
3. ロングリスト、ショートリスト
例えば、M&Aの対象企業に求める条件を同業種、海外に拠点を持つ等設定し、外部情報に基づき、初期の候補企業リストとなるものが「ロングリスト」である。さらに条件を絞りこみ作成されたものが「ショートリスト」である。
4. 機密保持契約
CA(confidential agreement)、NDA(non-disclosure agreement)とも言われる。M&Aの動向は当事者間の業績だけでなく、株価への影響も大きく、インサイダー取引に抵触するケースもあり、対象リストの絞込みを行う過程で、一般に開示されていない情報も必要となるため、その情報を無断で第三者に開示したり、目的外の使用をしたりしない旨を約束する文書のことである。
5. ノンネームシート
譲り渡し企業が特定されないよう企業概要を簡単に要約した企業情報であり、買手方候補に対して関心の有無を打診するために使用される。
6. 意向表明書
売手側と買手側のトップ会談を経て、大筋で出来た場合に、買手側が「意向表明書」といわれる買収方法、買収価額などの提案条件が書かれた資料を売り手側に提示する。
7. 基本合意書
売手側がM&Aの内容に合意した場合、これまで売手側、買手側間で合意している条件などが明記された「基本合意契約書」を締結されることになる。法的な拘束力はない。しかし、以後の交渉において道義的な拘束力として働き、双方がコミットメントを付与することになる。また、適時開示を行うことにより、インサイダー取引規制から関係者を開放する効果がある。
8. デューデリジェンス
事業の資産価値や収益性、リスク等を「実際に精査・査定」する作業である。M&Aが成否に関わり、対象相手を見極める重要な作業である。調査項目は、M&Aの規模や対象により異なるが、一般的に資産、負債等に関する財務査定、定款や契約内容等に関する法務調査、企業組織や生産・販売活動等に関する事業調査、IT、人事、知的財産等の調査等から構成される。
9. 最終譲渡契約書・クロージング
M&Aにおける最終過程であり、株式譲渡、事業譲渡等に係る最終な内容を取決めた契約書のことである。その締結後、株式譲渡や現金決済を行う期間をクロージングと呼ぶ。
10. PMI(Post Merge Integration)
M&Aの契約・決済が終了した後の実際の統合プロセスである。社風、ガバナンス、会社文化が異なる会社の社員が実際に統合過程を歩む期間であり、様々な問題が発生することが多い。統合直後の初期段階でいかにベクトルを合わせられるかが、本当の意味でM&Aの成否のカギである。
以上、M&Aにおける専門用語10を紹介した。これを機に、M&Aの世界を学んでみてはいかがだろうか。