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【日本】【アジアエクスプレス】首都圏深部の大工事 新型急行GTX走る[建設](2021/07/15)

地下70メートルを最高時速180キロメートルで走行。都心とベッドタウンを結び、長時間通勤に悩む京畿道や仁川の市民がソウルまで30分以内に到着できる時代が来る。そんな夢を乗せた首都圏広域急行鉄道「GTX(Great Train Express)」の建設が進んでいる。韓国国土交通省が海外メディアに公開した地下深部の現場を訪れた。(NNA韓国 坂部哲生)

外信記者に公開した建設現場=5月4日、韓国・京畿道坡州市(NNA撮影)

外信記者に公開した建設現場=5月4日、韓国・京畿道坡州市(NNA撮影)

韓国は首都圏に人口の半分以上が集中し、都心部では朝夕の交通渋滞が深刻だ。国交省の関係者によれば、首都圏に住む会社員の通勤時間は平均133分と実に2時間以上。経済協力開発機構(OECD)の加盟国平均(28分)を5倍近く上回るという。

そこで、都心とベッドタウンを直接結ぶことで通勤時間の短縮と交通渋滞の解消の一石二鳥を狙ったのがGTX。10年以上前に立ち上がった大型プロジェクトだ。

京畿道北部の坡州市と京畿道南部の華城市の東灘駅を結ぶ「A路線」は、2019年にようやく建設工事を開始。24年6月の開通を目指している。

■前例ないトンネル工事、地盤の固さがメリット

地下50~70メートルでの掘削という韓国では前例がないトンネル工事は、国内大手の大宇建設などが請け負う。

記者が訪れた深さ50メートルの地下から地上を見上げると、それがいかに深く、壮大なプロジェクトなのかが実感できた。

ソウル市内の地下鉄は地下20メートルを走る。日本の地下鉄で最も深いとされる都営地下鉄・大江戸線の六本木駅で地下42メートル。GTXの最深部はこれよりもさらに深い。

 工事は地下50メートルの深さで行われている=5月4日、韓国・京畿道坡州市(NNA撮影)

工事は地下50メートルの深さで行われている=5月4日、韓国・京畿道坡州市(NNA撮影)

掘削工事でまず問題となるのは地盤の固さだ。関係者によると、韓国は地盤が固いことから掘削工事では「NATM(ナトム)」と呼ばれる爆薬で発破する山岳工法が使えるという。東京や大阪の都心の場合は河川が運んできた土砂が厚く体積した平野に位置するため、リスクの高い工法となる。

ただ、ソウル市内を東西に流れる漢江付近は地盤が不安定だ。まずはシールド機という筒状の機械で地中を掘り、その直後にコンクリート製や鋼製のブロックを組み立ててトンネルを築く「シールド工法」で進んで行く。

地表面から直接掘り下げてトンネルを築く「開削工法」に慣れているという現場担当者の一人は、「この深さでのトンネル工事は経験がなく、全てがチャレンジ」と話す。

他人の土地を使って住宅や橋、トンネル、井戸などを建造したり所有したりするには「地上権」を取得する必要があるが、韓国は日本同様に地上権が及ぶのは地下40メートルまでとなっている。地下50~70メートルでの工事には取得の必要がないのも利点だ。

■工事の障害は「地上」、不動産価格に懸念の声

今回のトンネル工事は技術的な難易度が非常に高いが、GTXのプロジェクトの進捗(しんちょく)に影響を与える要素は、むしろ「地上」にあるようだ。

すでに一部の住民からは、GTXがマンションなど住宅の下を通過する際に発生する振動や騒音が不動産価格に与える影響を懸念する声が上がっている。

韓国人にとって不動産は、住居である以上に主要な財テクの対象。住民に理解を深めてもらうためにも、政府側のさらなる働きかけが求められるという。

もう一つは、工事の途中で文化財などが発掘されるケースだ。現場関係者によると、とりわけソウル駅周辺で発見される可能性が高い。文化財の価値が高ければ、保護や移動のため工事の進捗に遅れが生じる恐れもある。

首都圏市民の生活の利便性向上を目指す大型プロジェクトだが、工事の難しさや住民の理解といった課題も抱えており、完全開通までに越えるべき山はいくつもありそうだ。

■速さは地下鉄の3倍、秘密は駅間の長さに

GTXーAの車体のデザイン案(韓国国土交通省提供)

GTXーAの車体のデザイン案(韓国国土交通省提供)

GTXの平均時速は120キロ。ソウル市内を走る地下鉄の3倍の速さに相当する。速度の秘密は駅間の長さ。A路線を含む3つの路線を合わせた全長は238キロながら、駅数は30と少ない。道幅の広い道路の下を走る地下鉄と違って大きなカーブがないため、ブレーキを踏む回数も少なく済む。

車両の製造は、現代自動車グループの現代ロテムが手掛ける。トンネル内に高速鉄道を走らせる技術力は、韓国高速鉄道「KTX」の開発を通じて培った。KTXが走るソウル駅と釜山駅の区間は、実に6割がトンネルとなっている。

韓国建設技術研究院のキム・チャンヨン次世代インフラ研究センター長は、GTXプロジェクトについて「交通革命の第一歩。速さと規模において世界でも類を見ない試み」と意気込む。

新型コロナウイルス感染症対策として広がる在宅勤務も追い風になっている。国交省は「在宅勤務など柔軟な働き方が広がれば、ソウル市内から郊外に引っ越す人が増える。そうなれば、短時間で都心に移動できるGTXへの需要が一層高まるはずだ」と期待する。

【動画】GTXプロジェクトの広報動画(韓国国土交通省提供)

【動画】GTXプロジェクトの広報動画(韓国国土交通省提供)

https://bit.ly/2UElHM5

※特集「アジアエクスプレス」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2021年7月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。

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