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【タイ】第3波衰えず、累計25万人超[社会](2021/07/01)

タイでは、今年3月下旬に発生した新型コロナウイルス感染症の第3波が猛威を振るっている。現在も1日当たり2,000~5,000人規模の新規感染者が確認されており、累計の感染者は25万人を突破した。特に首都バンコクでは、インドで初めて特定された、感染力が強い変異株「デルタ株」の感染が拡大しており、若年層の感染や重症化するケースが増えていることから、医療機関は引き続き感染予防策を徹底するよう呼び掛けている。

タイでは新型コロナウイルス用のワクチン接種が進む一方で、バンコクを中心に第3波による感染拡大が続いている=6月、タイ・バンコク(NNA撮影)

タイでは新型コロナウイルス用のワクチン接種が進む一方で、バンコクを中心に第3波による感染拡大が続いている=6月、タイ・バンコク(NNA撮影)

タイでは新型コロナの感染が収束傾向にあったが、今年3月下旬にバンコクで複数のクラスター(感染者集団)が発生。政府の新型コロナウイルス感染症対策センター(CCSA)によると、タイ正月(ソンクラーン)の連休中だった4月12日に市中感染者が1,000人を超え、それ以降2,000~5,000人規模で推移している。5月17日には刑務所・拘置所内でのクラスターが発覚し、1日当たりの過去最多となる9,626人の感染が確認された。

特に感染拡大が深刻なバンコクでは、市中感染者が1,000人を超える日が続いている。6月30日には、1日当たりの過去最多となる1,826人の感染が確認された。

政府は6月7日、新型コロナワクチンの大規模接種を全国で開始した。それにもかかわらず、第3波が一向に収まらない原因として、「デルタ株」の感染拡大が指摘されている。英国の医学雑誌ランセットによると、米ファイザー製と英アストラゼネカ製のワクチンは、デルタ株に対する感染予防効果がその他の型に比べて低く、それぞれ79%、60%にとどまるという。

日本人専用の医療センターを構える私立サミティヴェート病院は、「デルタ株は従来型に比べて感染力が非常に強く、若年層や家族全体の感染が増えており、重症化する傾向が見られる」と指摘。治療費が高額になるケースも増えているとし、引き続き感染予防策を徹底するよう呼び掛けている。

第3波では、死者が増えていることも特徴の一つとなっている。1日当たりの死者数は4月下旬以降、1桁から2桁に増加し、6月30日には過去最多となる53人の死亡が確認された。大半が高血圧や糖尿病などの基礎疾患があると報告されているが、30代以下の若年層も含まれている。

バンコク首都庁(BMA)によると、バンコクの公立病院の病床使用率は96%に達し、集中治療室(ICU)の空きベッド数は6月25日時点で27床となった。私立病院も病床が逼迫(ひっぱく)しており、サミティヴェート病院スクムビットの新型コロナ専用入院施設(一般病棟72室、ICU18室)は同月28日時点で満室となっている。

■家庭内感染に注意喚起

バンコクの公立病院に勤めるタイ人医師はNNAに対して、「第3波が長引いている一因として、ワクチン接種の開始が遅かったことと、進捗(しんちょく)が遅いことが考えられる」とコメント。「政府はロックダウン(都市封鎖)を含め、もっと厳格な行動制限を実施するべきだった」との見解を示した。ワクチンは感染リスクの低下と重症化を防ぐ効果はあるものの、感染を完全に予防できるわけではないため、当面は感染拡大が続くと予測している。

同医師は「最近では家庭内で感染するケースが多く、子どもや高齢者も感染するリスクがある」と指摘。家族や親戚であっても不要不急の集まりを自粛し、食事を別々にとるなどの感染予防策を実施することを推奨している。家庭外でも引き続き安全な距離の確保やマスクの着用、手洗い、手指の消毒などの感染予防策を徹底することに加え、感染リスクの高い場所に近づかないよう呼び掛けている。

医師らで構成するタイロイヤル・カレッジ・オブ・フィジシャンズ(RCPT)は6月29日、ワクチンの確保と国内生産、接種を加速させることを求める嘆願書を政府に提出した。感染拡大を抑制するためには、多くの人が接種を受け、一刻も早く集団免疫を獲得する必要があると指摘。変異株に対応するため、できる限り多くのメーカーのワクチンを確保するべきと訴えている。

CCSAによると、国内でのワクチンの累計接種回数は6日29日時点で967万2,706回。少なくとも1回接種した人の割合は、全人口の約10%となっている。政府は、バンコクで7月末までに人口の7割に当たる540万人に、全国でも全人口の7割に当たる約5,000万人への接種を年内に完了する目標を掲げている。

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