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【中国】越境ECの試験地域を拡大[商業](2021/06/25)

中国政府がクロスボーダー電子商取引(越境EC)の規模拡大に乗り出す。李克強首相が主宰する国務院(中央政府)常務会議は22日、越境EC総合試験区の対象地域を広げることを決めた。越境ECの大規模化を通じて、就業や貿易の拡大につなげる考えだ。

越境EC総合試験区は、越境ECの管理モデルや情報システムの整備などの先行試験エリアで、輸出貨物への増値税と消費税を免除するなどの優遇政策も適用される。

常務会議では、第14次5カ年計画(2021~25年)期間の貿易の新たな発展モデルの構築に向けて、越境ECを強化することを決定。越境ECの規模は直近5年で11倍近くに成長しており、貿易の高度化と新型コロナウイルス感染症の影響下での貿易安定に重要な作用を果たしていると評価した。

今後は越境ECに対する政策支援を強める。越境EC総合試験区の対象地域を広げるほか、越境ECの商品に関する返品の利便化、越境ECの小売り輸入商品のリスト改良、模造品防止を目的とした越境EC商品の知的財産権に関する指南制定を進める。

越境EC向け海外倉庫の発展にも乗り出し、従来型の貿易企業やEC企業、物流企業が海外倉庫を設置することを奨励。倉庫のデジタル化、スマート化も推進する。倉庫の発展を通じて、中小・零細企業の海外進出を助け、国内ブランドの海外市場開拓を支援する考え。

越境ECに関する国際交流・提携も推進。貿易の新発展モデルの構築や国際ルールの制定を進め、知財保護や国際物流の面で海外との協力を深める。

常務会議の決定を受け、今後は中央部門から越境EC総合試験区の地域拡大に関する詳細が発表されるとみられる。

■現在までに100カ所超え

越境EC総合試験区は15年3月に浙江省杭州市で最初に設置され、現在は全国105カ所にある。20年は46カ所を追加。新型コロナウイルス感染症の影響緩和を目的に設置を加速した。総合試験区には計330カ所以上の産業園が設置され、就業者数は300万人を超える。

中国の越境EC向け海外倉庫の数は現在1,800カ所を超え、前年から8割増加した。面積は計1,200万平方メートル以上。

近年は越境ECの強化に向けた政府の動きが目立ち、中国商務省は今年3月、越境ECでの輸入に対して優遇措置が適用される対象地域について、自由貿易試験区(自貿区)所在都市や越境EC総合試験区、総合保税区、輸入貿易促進創新示範区、保税物流中心(B型)が設置されている全ての都市または区域を対象に加えると発表していた。

実際、越境ECは伸び続けている。第一財経商業データセンター(CBNデータ)などによると、越境ECの20年の貿易額は前年比31.1%増の1兆6,900億元(約28兆9,000億円)。このうち主力の輸出は40.1%増の1兆1,200億元、輸入は16.5%増の5,700億元だった。越境ECの小売り輸入は1,000億元を突破した。

越境ECの今年1~3月の貿易額は前年同期比46.5%増の4,195億元で、内訳は輸出が69%増の2,808億元、輸入が15%増の1,387億元。

第一財経日報(電子版)によると、商務省傘下の中国国際電子商務中心(CIECC)は「小売り、BtoB(企業間取引)向けともに中国の越境ECは急速に成長する流れにある。物流や支払いなどの利便化が進む中、EC業者にはさらに大きい商機が訪れる」と指摘。所得の向上に伴い、良質な輸入品に対する中国人の需要が高まっていることも越境ECの小売り輸入を押し上げる原動力になるとの指摘がある。

市場調査会社の艾媒諮詢(IIメディアリサーチ)によると、越境ECなどを利用する人を指す「海淘(ハイタオ)」の総数は20年時点で1億5,800万人となり、前年から400万人増えた。

中国では政策支援を追い風に、越境EC市場が拡大に向かう流れにある。品質に定評のある日本商品の引き合いは今後も高まりそうだ。写真は山東省青島市で開かれた越境ECの見本市の様子(新華社)

中国では政策支援を追い風に、越境EC市場が拡大に向かう流れにある。品質に定評のある日本商品の引き合いは今後も高まりそうだ。写真は山東省青島市で開かれた越境ECの見本市の様子(新華社)

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