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【韓国】文政権残り1年は問題山積[経済](2021/05/11)

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日、残り任期1年の国政運営方針について青瓦台(大統領府)で演説し、「新型コロナウイルス感染症の集団免疫を11月以前に獲得し、経済回復につなげる」との決意を表明した。一方で、ワクチンの調達遅れへの懸念や不動産価格の高騰、雇用市場の悪化など解決すべき課題は山積している。支持率は30%台前半に低迷しており、任期最終年は政権の求心力が急速に低下する恐れもある。歴史問題を含む対日外交についての言及はなかった。

テレビ局YTNが動画配信した文大統領の演説をキャプチャー=10日

テレビ局YTNが動画配信した文大統領の演説をキャプチャー=10日

文氏は任期満了までの国政運営について、「残り1年はこれまでの4年間よりも重要だ。国民が日常の生活を取り戻せない中、危機を克服して新しい未来を創り出していく」と強調した。

具体的な政策としては、コロナ収束の鍵を握るワクチン接種計画を前倒しする。「6月末までに1,300万人以上、9月末までには接種対象となる国民全員の1回目接種を終えて、『11月までに集団免疫を獲得』という当初の目標を短縮する」と述べた。

ワクチン不足は今月にもひとまず解消する見込みで、まずは今週に追加導入される英アストラゼネカ(AZ)製を一時中断されていた65~69歳向けに接種する計画だ。

1日の新規感染状況は500~700人程度で推移しており、流行の「第4波」への警戒感が強まっている。防疫措置を維持しながらワクチン接種を順調に進めることで、感染リスクを緩和していく考えだ。

■「今年の成長率4%目標」

マクロ経済については、国内総生産(GDP)の4割を占める輸出が今年1~4月の累計で過去最高額を更新したことを例に挙げ、「韓国経済は他国に比べていち早くコロナ以前の水準に戻った」と話した。

今後の経済政策に関しては、「政府の力を総動員して民間の活力を高めていく」とした。景気刺激を積極的に推し進めるとともに企業の設備投資を支援し、今年の経済成長率4%を達成する目標も明らかにした。

■雇用対策に財政投入も

雇用市場の改善にも力を入れる。コロナ禍の影響でマイナスが続いていた就業者数は、3月には1年1カ月ぶりとなるプラスに転換した。ただその要因につついては、政府が高齢者を対象とした公共機関の単純作業を割り当てる雇用支援策が大きく影響しており、若年層を中心とする就職難は依然として深刻な状況が続く。

文氏は「コロナ禍で雇用格差はさらに加速している。若年層や女性などを対象とする雇用対策も検討する」と、財政投入の可能性に言及。デジタル化やグリーン経済など将来有望な分野で大規模な雇用創出が実現できるよう、投資拡大をはじめ、人材育成に向けた職業訓練などの支援も推進する方針を打ち出した。

■不動産規制緩和で批判回避へ

不動産価格の高騰にも対応する。貧富の格差拡大が進んでいることについて、文氏は「不動産投機を徹底的に遮断する」と発言。一方、持ち家のない「無住宅世帯」に対しては、マンション供給の拡大や住宅ローン融資規制の緩和などで若年層のマイホームの夢を実現させる考えを示した。

国民銀行によると、ソウルのマンション平均価格は4月時点で11億1,123万ウォン(約1億900万円)と、文政権発足時からの4年間で8割も上昇した。そこに韓国土地住宅公社(LH)の職員による土地投機疑惑も浮上し、政権に対する批判の声が噴出している。文氏は「透明で公正な不動産取引の確立に向けて、根本的な制度改革を行う」との意志を示した。

■「南北融和は最後の機会」

膠着(こうちゃく)状態の南北関係については、「未完の平和から不可逆的な平和に進む最後のチャンスだ」とし、任期中の北朝鮮との関係改善に改めて意欲を示した。

米バイデン大統領に対しては「韓国政府が望む方向と一致しており、歓迎する」とコメント。21日に予定される米韓首脳会談を通じて「南北と米朝間の対話を復元し、平和協力の歩みを再び踏み出すための道を探す」と語った。

日韓関係の悪化はなおも続いているが、歴史問題を含む今後の対日関係に対する言及はなかった。

■文氏の支持率40%下回る

世論調査会社リアルメーターが10日発表した文氏の支持率は36%となった。過去最低だった前週に比べ3ポイント上がったものの、低水準が続いている。特に20代の支持離れが進んでおり、岩盤支持層と言われる30~40代の不支持率も高くなっている。

4月に行われたソウル・釜山両市長選では、いずれも保守系最大野党「国民の力」の候補が革新系与党「共に民主党」の候補を大差で破っており、文政権・与党からの「民心」離れが加速している。

演説で語った公約が実現されないまま来年3月の次期大統領選に突入するようだと、韓国での政権交代の現実味が帯びてくる。

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