【ミャンマー】正月に水掛けの音なし、追悼・悲しみ漂う[社会](2021/04/14)
13日に新年を祝うティンジャンが始まったミャンマーでは、水を掛け合う伝統行事がボイコットされ、市街地が静まりかえった。クーデターに反発する市民が、国軍への抵抗と弾圧で亡くなった700人以上に追悼を表すため、全国に賛同を呼び掛けていた。国内では正月前の12日から、デモ弾圧や少数民族武装勢力の支配地域での衝突が依然として続いている。
ティンジャンは、ミャンマーで最も暑い時期に重なる。人々が水を掛け合い暑気を払うとともに新年を祝うが、国内では国軍の関係者を除き、行事を行う人はほぼいない。最大都市ヤンゴンでは、恒例で舞台が設けられてきた市役所前も、バリケードが張られ、銃を持った警官やトラックが配備されたままだ。
アルコール飲料を取り扱う飲食店が多く、水掛けが最も盛り上がる地域である中心部の繁華街・19番通りは、大半がシャッターを閉めている。例年、ティンジャンに売り上げが伸びるビールの消費も見込めないが、雑貨・飲料店を13日も開いていた現地人男性は「この状態で祝うというのはあり得ない」と首を振った。
各地では、1990年代中盤以降に生まれた「Z世代」の若者らが、ティンジャンに飾る花「ダジャンフラワー」を手にしたデモ活動を実施。ヤンゴンでは市バスの停留所などに、クーデターへの抗議メッセージを書いた花瓶が置かれた。
ミャンマーでは昨年のティンジャンも新型コロナウイルス感染症の予防対策で、水掛け行事が禁止された。国軍当局は9日付の声明で、新型コロナ下での水掛け留意事項やヤンゴンでの外出自粛措置解除を発表。祝賀時期への配慮を見せて国内の正常化を演出しようとしたが、市民の心には響かなかった。休暇は19日まで。
市民団体の政治犯支援協会(AAPP)によると、2月1日のクーデター発生後、国軍の弾圧で死亡した民間人の数は12日までに710人となった。8~9日に80人以上が亡くなった中部バゴー管区のほか、南部タニンダーリ管区、北西部ザガイン管区などで死者が出ている。
3月末から続く、少数民族武装勢力の支配地域での国軍と武装勢力の衝突は激化の兆しを見せている。地元メディアによると、12日には、北部カチン州のカチン独立軍(KIA)の基地で国軍が空爆を行い、死傷者が出ているもようだ。AAPPは、同州で国軍が仕掛けた地雷により、民間人2人が死亡したとの情報を公表している。