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【インド】ワクチンの企業負担が広がり[医薬](2021/03/23)

インドでは企業が従業員と家族の新型コロナウイルスワクチンの接種費用を負担する動きが広がっている。3月に入り60歳以上への接種が始まったことで、正式に方針を表明する企業も出てきた。各社は「社員の安全を最優先」する姿勢を示す。一方、外国人のワクチン接種については政府の説明がなく、日系企業では方針が固まっていない企業が多いようだ。

インド中部マディヤプラデシュ州ボパールでワクチン接種を受ける医療従事者=22日(PTI)

インド中部マディヤプラデシュ州ボパールでワクチン接種を受ける医療従事者=22日(PTI)

二輪車大手TVSモーターは、今月上旬に正式にワクチン費用の負担を表明した。同社は声明で「全ての従業員と家族のワクチン費用を負担する」と明言。対象となる従業員は、全国で直接および間接的に雇用する3万5,000人におよぶ。アナンダクリシュナン副社長(人事担当)は声明で「全ての従業員とその家族の健康と安全を優先していく」姿勢を強調した。

再生可能エネルギー発電大手リニュー・パワーのスマント・シンハ会長兼社長は、7日のツイッターへの投稿で「すべての従業員とその家族のワクチン接種の費用を負担する」と表明。コンサルティング・ITサービス世界大手のアクセンチュアのインド部門のレカ・メノン会長も3月に入り同様のツイートをした。PTI通信などによると、リニューの従業員は1,500人、アクセンチュアはインドで20万人の従業員を抱える。

現地報道によると複合企業(コングロマリット)大手リライアンス・インダストリーズ(RIL)は13万9,000人の従業員とその家族、合計約90万人のワクチン費用を負担。その他、アダニ・グループ、鉄鋼大手JSWスチール、インターネット通販大手フリップカート、国営銀行最大手インド・ステイト銀行(SBI)、家電地場ハベルズ・インディアなどが同様の方針を固めている。

■商工会は企業負担を推奨

インドでは1月16日に医療従事者などへのワクチンの投与が始まった。3月からは、60歳以上の高齢者と45歳以上で政府の指定する疾患を持つ人への投与を開始。民間病院での接種も可能になった。政府系施設でのワクチン接種は完全に無料だが、民間病院では1回当たり最大250ルピー(約375円)の費用がかかる。

インドの産業界は、ワクチンの企業負担を推進していく方針だ。インド商工会議所連合会(FICCI)とインド工業連盟(CII)はともに、NNAの取材に対し「企業に従業員のワクチン費用負担を推奨した」とコメントした。FICCIは社会的責任(CSR)活動向けの資金の活用を推奨したという。

CIIのエグゼクティブ・ディレクターを務めるニールジャ・バティア氏は「企業は自発的にワクチン費用負担を表明しており、今後もほかの企業が追随する可能性がある」と話した。

■日本商工会、大使館に要望書提出

日本人を含む在留外国人のワクチン接種については、まだインド政府による方針が示されていない。日系企業では、従業員への接種費用負担を含めたインドでのワクチン接種に関する方針が固まっていないところが多いようだ。インド日本商工会(JCCII)は「(そもそも緊急事態下での制限付き使用となっているワクチンの安全性や有効性への確信が持てないことに加えて)副反応が出た際の補償がないことも不安材料の1つになっている」と日系企業の状況を説明した。

一方で、在留邦人で日本の住民基本台帳から転出している場合、日本でのワクチン接種の対象からも外れてしまう。そこでJCCIIはデリー日本人会と共同で全インドの日本人会および商工会を代表して、在留邦人が日本でワクチンを接種できるよう求める要望書を今月8日に在インド日本大使館に提出。現在の日本の水際対策では入国後2週間の待機が必要になることから、帰国時に到着した空港で1回目の接種を可能とすることも求めている。

141万人の在外邦人のワクチン接種について、宇都隆史外務副大臣は11日の国会審議で「一時帰国を含めた帰国時に接種を受けられる体制を整えていく」と答弁している。

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