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【香港】選挙制度変更、全人代が決定[政治](2021/03/12)

北京で5日から開催されていた中国の第13期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第4回会議は最終日の11日、香港の行政長官選挙と立法会(議会)選挙の制度変更に関する決定案を採択した。行政長官の選出権を持つ選挙委員会の委員と行政長官、立法会議員の各選挙の候補者をそれぞれ事前審査する候補者資格審査委員会の新設や、選挙委に一定数の立法会議員の選出権も与えることなどが柱。香港政府は今後1年かけて関連法令を改正するとしており、今年9月に予定されている次回の立法会選は延期となる公算が大きくなった。

決定は選挙制度変更の骨格を規定し、前文と全9条から成る。変更の大きなポイントが、第5条で規定した候補者資格審査委の新設だ。

第5条では、選挙委員と行政長官、立法会議員の各候補者が、香港基本法(憲法に相当)と香港国家安全維持法(国安法)、2016年に全人代常務委が定めた立法会議員の宣誓義務の全ての規定に照らして適格であることを求めている。不適格と判断された場合、候補者は出馬できなくなるとみられる。

香港では16年以降、選挙管理委員会が立法会議員や区議会(地方議会)議員の候補者の立候補資格を事前審査し、不適格と判断した候補者の立候補を却下してきた。候補者資格審査委の発足後は事前審査は同委が担当する形となり、はるかに厳格になる。

選挙委の規模と役割を拡大するのも大きな変更点。委員の数を現行の1,200人から1,500人へと25%増やすほか、行政長官に加えて立法会議員を選出する権限を新たに加える。現在、立法会議員は直接選挙枠と職能別枠に選出方法が分かれているが、変更後は直接選挙枠、職能別枠と選挙委選出枠の三本立てに変わる。

現行の選挙委には区議枠があるが、決定の第2条がうたった選挙委の構成には区議枠は含まれておらず、同枠が廃止される可能性がある。

■ハードル上がる行政長官選

選挙委員に投票権がある行政長官選も立候補のハードルが高くなる。現行法令では、香港永住権の保持や外国居住権を持たないことなどの基本資格を満たす者は、150人以上の選挙委員から指名を獲得できれば立候補の届け出が可能だ。

しかし変更後は、188人以上の選挙委員から指名を獲得する必要がある上、商工・金融業界枠、専門職業界枠、立法会議員・地方組織代表枠など5つの枠選出の選挙委員からそれぞれ15人以上の指名を得なければならなくなった。資格審査の厳格化に加えて選挙委員の指名獲得の条件が厳しくなることで、行政長官選に出馬できる候補者ははるかに絞り込まれることになる。

立法会議員の定数は現行の70人から90人に増える。

新華社電によると、中国の李克強首相は11日、全人代閉幕後に北京で開いた内外記者会見の席上、今回の全人代決定について、香港の「一国二制度」を堅持しつつ、より完全なものにしていくこと、「愛国者による香港統治」を一貫して堅持していくことを明確にうたったものだと強調した。

■立法会選、再延期へ

官営メディアRTHKによると、香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は11日夕の臨時会見で、今後12カ月をかけて、全人代の選挙制度変更決定を受けた関連法令の改正作業を完了させ、新制度の下で次回の選挙委員と立法会議員、行政長官の選挙を行うと明らかにした。新型コロナウイルス感染症の流行で1年延期され今年9月に投開票が予定されている次回の立法会選は、再び延期となる見込み。

同決定は即日発効した。今後は全人代常務委が制度変更作業を担い、行政長官と立法会議員の選挙制度をそれぞれ規定している香港基本法の二つの付属文書を改正する。両付属文書の改正終了後、香港側で関連する選挙法令の改正作業を進める。

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