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【ミャンマー】ヒト・モノ・カネ流れ止まる[経済](2021/03/10)

国軍に対する抗議運動が続くミャンマーで、経済のまひが進んでいる。クーデターへのデモが本格化した2月6日以降、出勤を拒否する市民が急増。全国規模のゼネストが展開された22日には、最大都市ヤンゴンで職場に向かう人の流れは平常時より8割少ない水準まで減少した。抗議運動には多数の物流関係者や公務員、銀行員も参加しており、貿易や金融も機能不全に陥っている。

米グーグルは、各国のスマートフォン利用者の位置情報を匿名化し、6種類の場所を訪れた人の数を集計して公開している。クーデター前日の1月31日のヤンゴン圏での「職場」「小売り・娯楽施設」「食料品店・薬局」への人出は、ミャンマーで新型コロナウイルスの感染者が初めて確認される以前と比べて、それぞれ19%減、33%減、2%減。クーデターが起きた2月1日には、49%減、54%減、23%減に落ち込んだ。クーデター当日は、インターネットの接続遮断など混乱もあり、操業を停止した工場や外出を控えた人が増えた。

職場などへの人の動きは2日以降、徐々に回復したが、街頭での大規模な抗議デモが始まった6日に再び急減。平常時の水準と比べて職場は65%、小売り・娯楽施設は84%、食料品店・薬局は75%も人出が減った。

ゼネストが発生した22日には、平常時に比べ職場は82%、小売り・娯楽施設は54%、食料品店・薬局は53%減少した。ゼネストには、幅広い業種の労働者らが加わり、デモ活動が行われた屋外こそ人であふれたが、経済活動に関わる動きは激減した。スーパーを展開する地場流通大手シティマート・ホールディング(CMHL)は同日、営業を休止した。クーデター後に操業を続けていた縫製工場も、生産を停止した。

出勤拒否の影響は、モノの流れにも及んでいる。商業省の統計によれば、2月6~12日の輸入額は1億3,000万米ドル(約141億円)と、1月29日までの1週間と比べて約4分の1に落ち込んだ。

港湾の船舶代理業務を行う船舶代理局(SAD)や税関職員らの市民不服従運動(CDM)への参加で、貿易手続きのペースが落ちている。トラック運転手もストに参加しており、各地で物流が停滞している。商業省のホームページはエラーと表示され、閲覧できない状態が続いており、2月13日以降の統計データを確認できないが、輸出入額は減少しているとみられる。

■株式売買も減少

カネの流れも滞っている。ヤンゴンでは、ほとんどの民間銀行が職員によるCDM参加で人手が不足し、店舗を開けない状況にある。ミャンマー中央銀行のホームページによれば、2月中旬には、銀行間の為替取引が成立しない営業日が続いた。中銀のホームページは9日午後現在、閲覧できず、為替市況をリアルタイムで確認できない。中銀の一部行員も、CDMに身を投じている。

ヤンゴン証券取引所(YSX)は取引を続けているが、クーデター後に売買代金が1億チャット(約764万円)を超えたのは2月4日だけ。3月9日は約206万チャットにとどまった。

海外からの資金流入も細っている。国際送金サービス最大手の米ウェスタンユニオンは、インターネット接続が安定しないことなどを理由に、ミャンマーでのサービスを停止した。ロイター通信によれば、タイの商業銀行大手カシコン銀行もミャンマーへの送金サービスを停止している。

近年の経済成長を支えてきた海外直接投資(FDI)や政府開発援助(ODA)も、今後は期待できない。世界銀行はクーデター後、ミャンマーで進行中の支援事業への資金拠出を中断した。日本政府もミャンマーへのODAの新規案件の停止を検討していると報じられている。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは3月1日、「海外からの投資や援助の減少により、経済成長率はさらに鈍化する恐れがある」との予測を発表している。

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