【タイ】豊通、通勤バスのスマート化へ地場と提携[運輸](2021/03/01)
豊田通商は2月24日、タイにおける工業団地向け通勤用バスのスマートモビリティー化に向けて、地場企業との戦略提携を発表した。タイ法人の豊田通商タイ・ホールディングス(TTTH)を通じて、通勤用バスサービス事業を手掛けるATP30に出資。豊通グループが持つモビリティー関連のデジタル技術と、ATP30の通勤バスサービス事業のノウハウを組み合わせることで高いシナジー(相乗効果)を発揮できるとみている。
TTTHが、ATP30が実施する第三者割当増資を引き受け、発行済み株式の9.5%に相当する6,435万バーツ(約2億2,700万円)を出資する。3月初旬に出資手続きが完了する予定だ。
タイの工業団地に入居する企業の多くが、従業員向けに通勤バスを手配しているが、安全面や高額の運営コストのほか、工場の休閑期や残業対応時に空車率が高いまま配車せざるを得ないことなどが課題となっている。非効率な運行は、交通渋滞や二酸化炭素(CO2)排出量の増加につながるなど、社会的課題でもある。
豊通グループのタイ法人、TTテクノパーク(TTTP)は、これまでラヨーン県やチョンブリ県などの東部の工業団地向けに通勤用バスサービスを提供し、顧客ネットワークを構築してきた。また、豊通グループは、ITを活用した移動支援サービス「MaaS(マース)」やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)領域の事業化の流れを背景に、バス配車計画の自動最適化技術や、乗り合いや座席予約を可能にする、シェアリング・オンデマンド型の通勤バス技術など、モビリティー関連におけるデジタル技術への投資を積極的に進めている。
これまでに培ってきたモビリティー関連のデジタル技術を活用し、ATP30が持つ通勤バス運営のノウハウと組み合わせることで、日系企業を中心に安全で効率的な通勤用バスサービスを提供する。
■運行コストを1~3割削減
TTTPの龍田貴行社長によると、タイにおける通勤バスのスマートモビリティー化は、3段階に分けて進める。既に実用化済みの第1段階では、デジタル技術を使って、通勤バスの最適な運行ルートを作成し、運行車両の削減や時間短縮につなげる。これによって、企業の通勤バス運行に要するコストは10~20%削減できるという。従業員3,000人規模のある日系の工場では、1カ月当たりの通勤バス費用が550万バーツに上っており、コスト削減による経営への効果は大きいと話した。
第2段階では、残業時の工場従業員の帰宅に当たって、必要な時に必要なサイズのバスの手配に対応することで運営コストを最大30%削減する。第3段階では、広く普及している配車アプリサービスのように、工場従業員がスマートフォンを使って、工業団地内を巡回するバスの乗車予約を可能にすることで工業団地内の交通渋滞の緩和につなげる。
第2段階は今年4月末から準備を進め、今年末の実用化を予定。来年以降に第3段階の実用化を計画している。