【ベトナム】コンテナ不足、解消は下期か[運輸](2021/01/28)
新型コロナウイルス感染症による巣ごもり需要などの影響で「コンテナ不足」が世界で起きる中、在ベトナム企業の間では、正常化するのは3月末かそれ以降になるとの見方が強い。コンテナ運賃は通常時の4~5倍以上になっているとの声が出ており、各社は航空便の利用や出荷の一時停止、キャンセルなどに頭を悩ませる。商工省は高騰するコンテナ料金について、関係業者に透明性を高めるよう要請した。
「ベトナムから欧米向けの船便の料金は、コロナ前の1.5~3倍」。運送業界の関係者はこう話す。新型コロナの感染が世界で拡大し始めて以降、コンテナ不足や運送の遅延は分野を問わず起きており、ベトナムでも部品の調達や出荷に影響が出ている。欧米向けの船便の利用料は3~4倍、日本向けは4~5倍になったという意見もある。
ベトナムでは、製造業による原料や部品の現地調達率は4割に満たず、多くを輸入に頼らざるをえない。また、ベトナムで生産・加工して輸出する「輸出加工型」の企業が多いことが特徴で、コンテナや貨物船の確保は重要な要素だ。
商社の関係者は、コンテナ不足でコストの増加や原料調達の滞りが発生していると口を揃える。「船便を諦め、航空便に切り替えたことでコストは数倍になった」ケースや、「原材料が入ってこなくなり、生産開始のスケジュールが大幅に狂った」というケースもある。高くても船便を使うことや、出荷待ちを余儀なくされている企業も多いようだ。また、取り扱う品物によっては、バルク(ばら積み)船などを使うことでしのぐこともあるが、対応できる範囲は狭い。
原材料を先物取引のような形で確保できていれば価格の変動は避けられるものの、そうしたシステムがないものに関しては、運送費の上昇がそのままコストに跳ね返る。商船を扱う企業にとっては業績の一時的な追い風にもなり得るが、あるフォワーダー(貨物利用運送事業者)は「顧客企業と船会社の板挟みになるため、運賃が上がっても利幅は小さい」と話す。
■海上輸送への依存脱却なるか
ベトナムの商工省は2020年12月にグエン・スアン・フック首相に提出した報告書で、「貨物船やコンテナ不足は、21年3月までは続く」との見通しを示した。ベトナム国内では新型コロナの感染拡大を抑制しているものの、各国では依然として影響は大きい。商社の関係者はNNAに「テト(旧正月)が明けてもコンテナ不足や料金の高騰は続く見通しで、場合によっては上期いっぱいは続く」との見通しを示す。運送業界の関係者は、「4月までという楽観論もあれば、7月くらいまで続くという意見もある」とし、正常化のめどがついていない状況だと話す。便乗値上げの可能性もあり、状況の正確な把握が重要になるとした。
ベトナム国内の業界団体も、先行きに不安を抱く。ベトナム水産輸出加工協会(VASEP)は地元紙に対し、「出荷の遅れやキャンセルが相次ぎ、20年11月と12月の輸出は前年割れした」ことを明らかにし、「業者には、損失を最小限に抑えるよう呼びかけた」としている。コメの輸出業者は出荷が7~20日間遅延しているとし、カシューナッツや茶を輸出している業者は「コンテナの運賃が6~7倍に跳ね上がっており、4,000~5,000米ドル(約41万~52万円)の水準になった」と訴える。今年に入り、出荷のメドは立っていないという。
各業界の実情を踏まえ、商工省は27日に声明を発表。「以前は1,000米ドル以下だった40フィートコンテナの運賃が、8,000~1万米ドルになっている」と指摘。「合理的とは言えない運賃設定で、透明性を持たせるべき」とし、便乗値上げの可能性を示唆して批判した。特に輸出企業への影響が大きいとの認識を示し、「首相にも現状を報告し、問題の解決を目指す」との方針を示した。一方、各企業に対しては、「例えば欧州向けの出荷では鉄道を利用することなども検討し、海上輸送への依存を緩和」することを推奨した。