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【インドネシア】第2期ジョコ政権、コロナ禍も安定=専門家[政治](2021/01/18)

インドネシア情勢や対日関係に詳しいインドネシア大学人文学部のバクティアル・アラム上級講師(アジアコンサルト・アソシエーツ代表)は14日、国際機関日本アセアンセンター主催のウェビナーで講演し、発足1年余りを過ぎた第2期ジョコ・ウィドド政権について「新型コロナウイルス感染症の抑え込みには成功していないが、社会の不満が爆発し混乱に陥る状況にはない」と分析した。背景に、政府が以前から実施している貧困層への支援策があるとの見方を示した。

ウェビナーで講演するバクティアル氏=14日(日本アセアンセンター提供)

ウェビナーで講演するバクティアル氏=14日(日本アセアンセンター提供)

バクティアル氏は、2019年10月に発足した第2期ジョコ政権の最優先課題は「新型コロナの抑制と経済の再活性化」だと指摘。現在のところ、感染拡大による失業者増や社会的制限の実施にもかかわらず、政権の支持率は高いと述べた。また、20年11月の雇用創出法の成立や、今月13日から始まった新型コロナワクチンの早期投入の実現で、大統領の政界における求心力も強いと分析した。

地場の調査会社サイフル・ムジャニ・リサーチ・アンド・コンサルティング(SMRC)が20年12月に実施した世論調査では、ジョコ大統領の実績に「非常に満足している」あるいは「満足している」と回答した人の割合は74%だった。

高支持率の理由としてバクティアル氏は、ジョコ政権が14年の発足以来、低所得層に学費や医療費、生活必需品を補助してきたことを挙げた。また、講演後のNNAの取材に、こうした補助がコロナ禍の被害に対する支援としても拡大されていると説明した。

一方、講演でバクティアル氏は、19年の汚職撲滅委員会(KPK)法の改正や20年末のイスラム保守派強硬団体「イスラム防衛戦線(FPI)」の強制解散について、汚職の撲滅や民主主義の熟成という観点から課題が残ると指摘した。報道の自由は基本的に維持されているので、今後は市民社会やメディアの監視によって民主化の後退を阻止することが重要だと述べた。

コロナ禍の経済への影響については、「スリ・ムルヤニ財務相は個人消費と投資の落ち込みが一段落したとしているが、経済回復は22年になるとの見方もある」と紹介した。20年4~5月に大規模な社会的制限を発動したが、経済が持たず6月に緩和、今月11日から再び制限を厳格化した政府のコロナ対策を「1歩進んで2歩下がる状態」と表現。今後も難局は続くとの見方を示した。

その上で、「唯一の希望」はワクチンの普及と指摘。19年8月に政権が提唱した東カリマンタン州への首都移転計画も、「コロナ禍が収束しない限り、棚上げが続く」と予測した。

■日本は最も好感持てる国、だが中国も大事

対日関係については、「若年層から年配者まで、インドネシア人にとって日本は最も好感を持てる国」と強調した。その上で、日米が主導する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想について、「インドネシアにとっては、中国も大事なパートナー。中国に悪いイメージを与えたくない」と説明。「東南アジア諸国連合(ASEAN)が提唱した『インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)』を主体に考えたい」との立場を示した。

日本アセアンセンターによると、ウェビナーは日系企業関係者や研究者など約330人が聴講した。

<プロフィル>

バクティアル・アラム:インドネシア大学人文学部上級講師、アジアコンサルト・アソシエーツ代表。インドネシア大卒。米ハーバード大で博士号取得。インドネシア大日本研究センター所長、インドネシア日本研究学会(ASJI)会長などを歴任。16年、日イ相互理解への貢献で旭日小綬章を受章。

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