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【韓国】「日本との関係悪化望まず」文氏が表明[政治](2021/01/19)

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は18日午前に恒例の年頭記者会見を行い、日本政府とのこれ以上の関係悪化を望まない考えを明らかにした。ソウル中央地裁が今月、日本政府に旧日本軍の元慰安婦の女性らへの賠償を命じた判決を下したことで、日韓関係は、さらなる冷え込みが懸念されている。新型コロナウイルス感染症の対策については「感染拡大の第3波を早期に抑え込んだ後、ワクチン接種で日常を取り戻して悪化した経済を回復させていく」との考えを示した。

文大統領は元徴用工訴訟に関して、原告側が求める強制執行により日本企業の資産売却という事態は「韓日両国の関係において望ましくない」との立場を示した。8日の元慰安婦問題を巡るソウル中央地裁判決についても「困惑した」と述べた。

文大統領はこれまで、元徴用工問題では「司法判断を尊重する」との原則を掲げてきた。日韓関係悪化の火種となる元慰安婦訴訟判決が出る中、対立激化を避けるため資産売却の回避策を模索している可能性もある。元慰安婦問題を巡る2015年の日韓合意については、「両政府間の公式合意と認め、その土台の上で解決策を探す」とした。

ただ、いずれの訴訟も原告側の利害関係は一様ではなく、さまざまな被害者支援団体の思惑も複雑に絡む。

東アジアの政治・経済リスクに関するコンサルティング会社「アジアリスクモニター」を運営するロー・ダニエル最高経営責任者(CEO)は、「文大統領が公式の立場で、日韓合意について『両政府間の公式合意』を強調した意味は大きい。韓国国民向けへのメッセージだろう。日本政府に対しては、原告側の利害関係の調整が簡単ではない事情を理解してもらえるよう期待しているニュアンスがうかがえる」と分析する。

■格差の緩和目指す

新型コロナ対策では、文政権は「遅くとも11月までには集団免疫の獲得を終える」とのスタンスだ。外国で開発されたワクチンの安全性に関しては、韓国食品医薬品安全処(食薬処)が韓国の基準に基づいて安全性を再審査する。文大統領は「不安だからといってワクチンの接種を避けるのは杞憂(きゆう)だ」とし、万が一、副作用が発生した場合は「政府が全面的に補償する」と述べた。

韓国経済については、実質国内総生産(GDP)などのマクロ面ではほかの先進国と比べて良好ではあるが、体感景気は大きく冷え込んだままとの認識だ。文大統領は会見で、富裕層と自営業者や零細企業との格差を緩和する「包容的回復」の重要性を強調した。

ソウル市に拠点を置くリスク分析専門のコンサルタント会社、Erudite Riskでスペシャルアドバイザーを務めるハンク・モリス氏は「内需を喚起するには、より積極的な財政主導が必要」と話す。

■財閥改革は完了

財閥改革については、財閥の経営監視強化を狙った商法など「企業規制3法」の改正・制定案を可決で終了したとの認識を示した。例えば、監査役を選任する際の筆頭株主と特殊関係人(子会社、配偶者、直系尊属・直系卑属など)の議決権をそれぞれ3%に制限するルールなどが導入された。

しかし、民間シンクタンク「CEOスコア」の朴珠根(パク・ジュグン)代表は「支配構造にメスが入っておらず、資本の財閥への過度な集中は解消されていないまま」と厳しい見方を示す。韓国株式市場は今年に入り、総合株価指数(KOSPI)が過去最高となる3000を突破した。しかし、株価が上昇したのは大手財閥系企業がほとんど。新型コロナの影響もあり、財閥への富の偏重がむしろ進んだ状況だ。

記者会見では、不動産対策にも質問が集中した。文大統領は価格の高騰について「住宅の供給量は過去のどの政権よりも大きかったものの、世帯数の増加幅が予想を上回ったため」と説明した。

韓国は昨年、初めて人口減に転じたにもかかわらず、一人暮らしを中心に世帯数が61万世帯増加した。増加幅としては19年より18万世帯多い。文政権は今後の需要を予測し直した上で、新たな住宅供給計画を発表する計画だ。

■対北政策は米新政権次第

北朝鮮の核・ミサイル問題については、文大統領は「平和体制の構築に向けた対話が成功裏に妥結すれば、全て一緒に解決され得る問題だ」とし、金正恩(キム・ジョンウン)総書記には「平和と対話、非核化に向けた意思がはっきりとある」と述べた。

また、米バイデン新政権については、「18年にシンガポールで開かれた米朝首脳会談での宣言に立ち返り、より具体的な方策を生む対話と交渉を続けていけば、一段とスピード感を持って米朝対話と南北対話を行っていける」とした。

延世大学統一研究院・専門研究委員の奉英植(ポン・ヨンシク)博士は「バイデン新政権は、北朝鮮の挑発を防止するためだけの目的で、北朝鮮に条件なしの対話を求める可能性がある。しかし、いかなる形であれ、米朝対話が実現すれば、文政権はそのチャンスを生かし、南北対話につなげようとするだろう」と分析した。

文大統領はまた、在任中の高額収賄事件で懲役20年の実刑が確定した朴槿恵(パク・クネ)前大統領と同17年の実刑が確定している李明博(イ・ミョンバク)元大統領の恩赦については、現時点では実施する考えがないことを明らかにした。韓国では、与党「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン)代表が赦免を文氏に進言すると表明したことを受けて、文大統領の発言に注目が集まっていた。

記者会見する文在寅大統領(共同)

記者会見する文在寅大統領(共同)

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