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【日本】【年始特集】上期景気、6割が改善予想[経済](2021/01/04)

NNAがアジアの日系企業駐在員らを対象に実施したアンケート調査で、回答者の約6割が2021年上半期(1~6月)の駐在国・地域の景気が、20年下半期(7~12月)から改善すると答えた。新型コロナウイルスの感染状況が景況判断に大きく影響し、打撃を受けた経済が感染者数の減少やワクチンの普及、それに伴うコロナ禍の収束で回復することへの期待が強く出た。特にインドは、いまだ1日2万人前後の新規感染が続く中でも前向きに捉える見方が7割を超えた。

中国・陝西省の西安咸陽国際空港では、2020年末から検疫担当者らに対し、新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まった=20年12月、中国(新華社)

中国・陝西省の西安咸陽国際空港では、2020年末から検疫担当者らに対し、新型コロナウイルスのワクチンの接種が始まった=20年12月、中国(新華社)

アンケートは20年12月にアジア太平洋地域の駐在員らを対象に実施し、16カ国・地域の1,162人から回答を得た。

駐在国・地域の21年上半期の景気が20年下半期と比べてどうなるかの質問(海外在住者のみ)に対し、「上昇」との回答が7.6%、「緩やかに上昇」が53.9%で計61.5%となり、改善を見込む回答が過半を占めた。「横ばい」は28.4%で、「緩やかに下降」は5.9%、「下降」は2.4%だった。

「上昇」と「緩やかに上昇」の回答を合わせた割合は、香港を除いて軒並み5割以上に達し、インドとオーストラリアは7割を超えた。累計感染者数が1,500人以下にとどまり、20年の国内総生産(GDP)がプラス成長を維持したベトナムは、「上昇」と答えた割合が15.2%と国・地域別で最多だった。

■台湾は「下降」ゼロ

香港を除く東アジアは、いずれも「上昇」の割合が2桁台に乗った。新車販売台数がコロナ禍前に予測した水準に回復するなど経済の正常化が顕著な中国が13.1%と最も高かった。早期に新型コロナの封じ込めで成果を上げた台湾は「下降」との回答がゼロ。韓国は足元で感染拡大の懸念が再燃しているものの、「上昇」の割合がベトナム、中国、台湾に次いで高かった。

「上昇」「緩やかに上昇」と答えた回答者からは、ワクチンの普及でコロナ禍が一気に収束まで向かうことを期待する声が多数を占めた。

ほかに、「ロックダウン(都市封鎖)に再びならない限り、ある程度マーケットは動くと思う」(インド/サービス)、「コミュニティー規制が徐々に解除されてきており、経済活動の再開が期待できる」(フィリピン/貿易・商社)と、感染防止を目的とした経済・社会活動制限が緩和されることで景気が上向くとの意見や、「政府施策や民間購買意欲、新規ビジネスの進展などにより、一進一退を繰り返しながらも緩やかに回復」(インド/運搬・倉庫)、「輸出向けはコロナ前の水準近くまで回復」(インドネシア/四輪・二輪)、「既存品・新規品の受注増加」(ベトナム/その他の製造業)と、既に景気回復を実感している声もあった。

「コロナ(との向き合い方)が定着し生活習慣、ビジネススタイルが安定。新しい生活スタイルがなじむ」(中国/機械・機械部品)、「東南アジア諸国連合(ASEAN)各国は何とか感染拡大を食い止め、ウィズコロナでの景気回復を模索しているように感じる」(タイ/運搬・倉庫)と、「ウィズコロナ」や「アフターコロナ」が定着し、新型コロナの影響が徐々に薄れていくといった意見も一定数あった。

■「回復は踊り場」との声も

新型コロナの封じ込めでは一定の成果を上げているものの、反体制デモの活発化による政情不安を抱えるタイは、「横ばい」との回答が34.5%とASEANで最も多かった。「世界経済の回復遅れもあるが、タイは観光業を筆頭にASEANの中でも景気回復スピードが遅いと思う。政情不安、王室問題が加わり三重苦に陥る可能性がある」(運搬・倉庫)と、コロナ以外の要素を懸念する向きも見られた。

全体で3割弱を占めた「横ばい」との回答では、「正直先が読めない」(インド/機械・機械部品)と、依然として先行きを見通せないといった声が多かったほか、「20年下半期の反動により、横ばいが精いっぱい」(シンガポール/石油・化学・エネルギー)、「コロナの影響からの回復はほぼ踊り場に達したと判断」(中国/機械・機械部品)、「やや回復するも、20年下半期に先食いした需要の反動と相殺されると予想」(インドネシア/電機・電子・半導体)と、新型コロナの影響が大きかった20年上半期の反動による特需が下半期に発生し、さらなる急回復は見込めないとの見方もあった。

ASEAN主要国では、改善するとの見方がいずれも50~60%台で、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイの順に高かった。1日当たりの新規感染者数でASEAN上位を占めるインドネシアとマレーシアは、「横ばい」との回答も3割以上に上った。

■香港は慎重な見方

一方、香港は改善するとの見方が46.9%と半数を割り込んだ。「コロナ禍による経済への影響が本格化し、民間需要が冷え込む」(建設・不動産)、「中国、海外との往来再開のめどが立たず、失業率も上昇する。社会不安の増長、治安悪化が懸念される」(貿易・商社)などとネガティブな声もあった。

慎重な見方ではほかに、「コロナの影響で営業活動ができず、顧客の投資時期も大幅に延期となった」(マレーシア/建設・不動産)と業務が依然制限されている状況に加え、「政府補助も限定されてくるためコロナの影響が響いてくる」(シンガポール/金融・保険・証券)、「国内における具体的な経済政策がない。他国頼みの経済となっている」(ミャンマー/建設・不動産)など、政府の対応を不安視する意見があった。

21年上半期の景気見通しに関する回答を業種別に見ると、「上昇」「緩やかに上昇」と答えた割合の合計は、製造業が59.5%、非製造業が62.9%と、非製造業の方が改善するとの見方が多かった。分野別では、「食品・飲料」の69.2%を筆頭に、「小売・卸売」「サービス」「機械・機械部品」「貿易・商社」「運搬・倉庫」「電機・電子・半導体」「石油・化学・エネルギー」の順に高く、いずれも60%台。「四輪・二輪」は56.7%だった。

「サービス」は、「下降」と「緩やかに下降」と答えた割合の合計も20%近くに上った。ほかに「鉄鋼・金属」「金融・保険・証券」「建設・不動産」「運搬・倉庫」などもこの割合が10%を超え、悲観的な見方が比較的多かった。

■20年下期は中印で改善目立つ

足元の状況を表す20年下半期の景気は、全体の46.4%が20年上半期から「緩やかに上昇」と回答。「上昇」の22.7%と合わせ7割近くが改善したと答えた。「横ばい」は15.1%。「下降」と「緩やかに下降」は、それぞれ9.9%、4.9%だった。

「上昇」「緩やかに上昇」と回答した割合は、中国が87.0%と最も高く、インドも86.3%と高水準。台湾、ベトナム、タイはいずれも70%台だった。

その他は改善がおおむね5~6割台だったが、香港は37.5%にとどまった。

改善の理由としては、コロナ禍が既に収束、沈静化したとの意見が多かった。「自動車関連の回復」を指摘する声が、四輪・二輪業界にとどまらず複数の分野で一定数あったほか、「工場向けの消費財が増加傾向にある」(中国/貿易・商社)、「1~3月は好調、4月からコロナ禍の影響が始まり5月が底。6月以降に徐々に回復」(インドネシア/四輪・二輪)といった事例も示された。

一方、まだ改善したと言えない理由からは、購買力の低下や感染防止策としての営業制限、出入国規制などにより、依然として新型コロナの影響が続いていることがうかがえた。具体的には「顧客はタイ、インドネシアがメインだが、出国、入国とも禁止された」(マレーシア/貿易・商社)、「客先在庫が想定よりも消化されていない」(中国/機械・機械部品)などの声が寄せられた。

<アンケートの概要>

20年12月1~8日に、主にアジア各地の駐在員を対象にウェブサイトを通じて実施した。海外在住者の有効回答数は1,151件で、業種の内訳は製造業が43.4%、非製造業が53.5%、公的機関などその他が3.0%。国・地域別の内訳は中国246件、インドネシア155件、タイ145件、ベトナム106件、インド80件、台湾72件、フィリピン72件、マレーシア68件、香港64件、シンガポール62件、オーストラリア47件、韓国19件、ミャンマー11件などだった。

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