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【ミャンマー】【韓流新時代】ソフトも余念ない新南方政策[経済](2020/12/23)

「韓流」人気は、韓国企業が投資攻勢を強める東南アジア諸国連合(ASEAN)の後発新興国でも高まっている。ミャンマーでは10月、新型コロナウイルスの影響で国をまたぐ往来が厳しく制限される中、ミャンマー人のボーイズグループが同国でガス田開発などを進めるポスコグループの資金援助で訪韓した。韓国の新南方政策は、ソフト面でも余念がない。【ヤンゴン=齋藤眞美、ヤダナ・トゥン】

ヤンゴンで行われたイベントの舞台に立つALFAのメンバーたち=2月(JBJエンターテインメント提供)

ヤンゴンで行われたイベントの舞台に立つALFAのメンバーたち=2月(JBJエンターテインメント提供)

新型コロナ下で韓国訪問を実現したのは、5年前に結成されたミャンマー男性の韓流ポップグループ「プロジェクトK」。ミャンマー政府が国際線旅客機の着陸を禁止する水際対策を敷く中、10月にソウルで開催された「アジア・ソング・フェスティバル2020」に出場を果たした。

7人の男性メンバーはミャンマー代表として舞台に出演したほか、韓流スターを養成する芸能大手「SLスタジオ」でダンスや歌のスキルを学び、韓国料理教室にも参加。「夢」の実現を資金援助したのは、西部ラカイン州沖のガス田開発や最大都市ヤンゴンでのホテル開発など、大型投資を続けるポスコグループだ。地元メディアもこれを大きく報じた。

まだテレビなど媒体のスポンサー企業が多くないミャンマーでは、芸能人を育成するプロダクションも発展途上だが、数年前から韓国企業が新人を発掘する事業を活発化。プロジェクトKに続くグループが次々と登場している。

最大都市ヤンゴンにある韓国系企業JBJエンターテインメントは2017年、テレビのオーディション番組「ギャラクシー・スター」を開始。昨年、プロジェクトKと年齢層が近い10~20代7人のボーイズグループ「アルファ(ALFA)」を、オーディションの合格者で発足させた。「キラ」の愛称を持つメンバー、アウン・ウー・テッ・アウンさん(22)は「ミャンマーで芸能人になるのは不可能だと思っていたが、幸運をつかむことができた。ビッグバンのテヤン(日本での通称は「ソル」)のように成功したい」と意気込む。

ミャンマーでは、テレビコンテンツが限られた軍政時代にも韓流ドラマが多数放映され、韓流ポップスは最も多くの庶民が知る海外の音楽コンテンツだ。国内でオーディションが始まると、エントリー希望者の情報交換サイトが立ち上がり、大学生のアマチュアグループがミャンマーの象徴であるパゴダ(仏塔)をバックに、「BTS(防弾少年団)」のヒット曲を踊りながら披露した動画なども拡散されている。

■憧れから「参加型」に

憧れから「参加型」に変化した韓流の勢いは、市場の成長にも表れる。地場シンクタンクのミャンマー・サーベイ・リサーチ(MSR)によると、ミャンマーの化粧品の輸入額は過去5年間、年平均で13%程度拡大してきた。韓流好きの女性がショッピングセンターなどで購入する「ネイチャーリパブリック」や「ザ・フェイスショップ」など、韓国ブランド商品の売れ行きが下支えしているという。

ミャンマーのショッピングセンターで営業する韓国ブランドの化粧品店=21日、ヤンゴン(NNA)

ミャンマーのショッピングセンターで営業する韓国ブランドの化粧品店=21日、ヤンゴン(NNA)

メール取材に応じたJBJエンターテインメントのジュン・ブン・ジャ会長は、「ドラマや映画、食べ物、ファッションに至るまで、ミャンマーでの韓流の影響は増している。文化交流ほど国同士の美しい協力はなく、ビジネスや投資の持続性にも大きな利点をもたらす」と指摘する。

ミャンマーでは13年、ベトナムで発展の起爆剤となった韓国のサムスン電子の投資が、電力インフラ不足を理由に見送られた。インフラ開発で競り合う日本や中国に比べ消極的だとも見られていた韓国だが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が公式訪問した19年ごろから、積極的な投資が目立っている。

18年末には、人口増加で都市拡大が必要なヤンゴンで、中心部と南部の未開発地を結ぶ「ダラ大橋(韓国ミャンマー友好橋)」を韓国の対外経済協力基金(EDCF)の支援で着工。22年の完成を予定する。19年には現代自動車が現地生産を始め、イメージキャラクターにプロジェクトKを起用した。銀行や保険会社の事務所開設も、相次いでいる。ミャンマー投資企業管理局(DICA)のデータによると、ミャンマーへの韓国からの外国直接投資(FDI)認可額は1988年からの累計で47億7,023万米ドル(約4,935億円)となり、国・地域別で6位だ。

■工業団地計画、コロナ下で推進

韓国は今、文大統領の来訪時にアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相と正式合意した、ヤンゴン北郊の韓国工業団地(KMIC)計画に力を入れる。両国が出資する合弁会社が、新型コロナで遅延していた国際入札を10月に始め、今月24日の着工式にこぎ着けた。1億1,000万米ドルを投じ、縫製業や食品・飲料、物流など200工場を誘致する計画という。

韓流ブームは21年も続きそうだ。12月21日にはミャンマーのトップスターであるサイサイ・カムフラインさんが、世界的に有名な韓流ポップ歌手のパク・ボムさんとコラボレーションしたバラードを発表し、韓流ファンの話題となった。

プロジェクトKやALFAなど、走り出したばかりのミャンマー人韓流アイドルの知名度はまだ低い。国際的に有名な多国籍の韓流グループに参加するスターも出ていないが、JBJエンターテインメントのジュンCEOは「ミャンマー・韓国の双方を融合させた新しい芸能文化を発信したい。世界に通用するミャンマー人スターは必ず出現する」と期待を込める。

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