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【インドネシア】年末年始、行動規制厳格化へ[経済](2020/12/17)

インドネシア政府は年末年始に向けて、新型コロナウイルス感染防止策の厳格化を進めている。18日~来年1月8日までの期間、一部地域の商業施設の営業時間を短縮するほか、ジャカルタ特別州には従業員の出社率を25%まで引き下げるよう要請した。過去の連休後に感染のいきおいが拡大したことから警戒を強めている。ただ小売業界にとっては年末のかき入れ時だけに懸念も大きい。

年末年始に首都などの商業施設の営業時間が制限される見通しだ(NNA撮影)

年末年始に首都などの商業施設の営業時間が制限される見通しだ(NNA撮影)

ルフット調整相(海事・投資担当)は15日、「政府は厳格な方針を実施する」と述べ、ジャカルタ首都圏などで実施されている行動規制「大規模な社会的制限(PSBB)」とは異なる制限を設けると説明した。商業施設や飲食店の営業時間は、首都圏が午後7時まで、西ジャワ、中ジャワ、東ジャワ州内の感染リスクが高い地域が午後8時までに制限するよう求める。また高速道路の休憩所や観光施設でも衛生規律を強化する。

ルフット調整相は14日、ジャカルタ特別州と西・中・東ジャワ州、バリ州の各知事らとの会合でこれらの措置を実施するよう要請しており、近く関連規則が公布されるもようだ。ジャカルタ特別州と西ジャワ州それぞれの広報担当官は取材に対し、いずれも16日夕方時点で公表できる内容は確定していないと説明した。ただ、ジャカルタは既に公務員の出勤率を25%に制限する方針を固めている。

規制強化の理由についてルフット調整相は、10月末からの5連休後に感染が拡大したことを挙げ、「直前まで感染の緩和傾向が見られていたが、連休後は8州で感染者が、20州で死者数の増加が確認された」と述べた。国内では5月や8月の連休後も新規感染者数が増加傾向にあった。政府は対策として、年末年始の休暇日程を当初の11連休から3日間短縮し、24~27日と31日~1月3日までのそれぞれ4連休に分散。越年イベントの開催を禁じるなどの措置を講じているが、一段と厳格な制限に踏み切る形だ。

国内の新規感染者は現在も増加傾向にあり、12月は1日当たり平均6,000人超を記録。11日には累計で60万人を超えた。新型コロナ緊急対策本部(タスクフォース)によると、感染リスクの危険度が最も高い「レッドゾーン」の自治体数は64県・市と、2週間前より14地域増えた。危険度が2番目の「オレンジゾーン」を含めると、全514県・市の86%に当たる。

■産業界から例外措置を求める声

年末はイスラム教の断食明け大祭(レバラン)と並び、商業施設が1年で最もにぎわう時期だけに営業時間の短縮に対する懸念が広がっている。イオンモール・インドネシアの礒部大将社長は、例年は通常の週末に比べて年末の来客数が約5割増えると説明した。「午後5時以降の来客数は全体の3分の1を占めており、食品関係の需要も多い。時間短縮による影響は大きい」と話した。ジャカルタのイオンモールは、制限が強化されれば営業時間が2時間短くなる。

インベストール・デーリーによると、インドネシア小売業者協会(Aprindo)は、ジャカルタ特別州政府に対し、商業施設や飲食店を制限強化の対象外にするよう求めている。

PSBB下では5割以下とされている出社率がさらに引き下げられれば製造業への影響も出かねない。西ジャワ州などに拠点を持つ日系メーカーの関係者は「出社率25%では工場を動かせず、生産を一時停止する企業もあるだろう」と指摘。西ジャワ州がジャカルタと足並みをそろえて規制を強化する懸念がある一方、PSBBと同じく製造業にはなんらかの例外措置が設けられることに期待を示した。

■PCR義務化でバリ観光に影響も

政府は都市間の移動増加による感染拡大の抑制にも乗り出す。現在は航空機や長距離列車の利用者には出発前14日以内のPCR検査や迅速検査の陰性結果を提示するよう求めているが、これを2日以内に短縮する方針。ルフット調整相は「抗体検査よりも精度が高い」ことから、迅速検査には抗原検査を義務付ける考えを示した。

国内最大の観光地であるバリ州は15日、これに呼応する形で州知事回状『2020年第2021号』を公布した。18日~来年1月4日までの間、空路でバリに入る国内旅行者には出発前48時間前までのPCR検査結果の提示を求める。海路で入る場合も48時間前までの迅速抗原検査が必要となる。いずれも滞在期間中は検査結果の保持が求められるが、有効期限は発行から14日間としている。このほか「飲酒による深酔い」を禁じるなどの衛生規律も設けた。

日本旅行のグループ会社である日本旅行インドネシア(ジャバト・インターナショナル)の関係者は「検査費用が高いPCR検査が義務化されたことでバリ島への旅行を中止するインドネシア人は増える可能性が高い。観光客は増えつつあったが、再び冷え込むことになるだろう」と話した。

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