【台湾】鴻海と和碩、インド事業に変更なし[IT](2020/12/17)
EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手の鴻海精密工業は、インドでの工場拡張計画を継続する見通しだ。同業大手の和碩聯合科技(ペガトロン)もインド工場の建設計画を変更しない方針。同業の緯創資通(ウィストロン)のインド工場で暴動があったばかりだが、米アップルサプライヤーの2社はインド事業を強化する姿勢だ。
16日付経済日報などが伝えた。市場関係者によると、鴻海グループは緯創の工場で起こった事件の動向を注視している。ただ緯創の事件が鴻海のインド工場の拡張計画に影響することはないという。
鴻海はインド南部チェンナイに工場区を展開。数万人規模の従業員を抱える。現地政府との関係も良好という。鴻海のインド工場はここ2年拡張工事を続けており、顧客も増加している。
鴻海本体のほかに、鴻海グループでスマートフォン製造大手の富智康集団(FIHモバイル)も単体でインド政府が今年導入した奨励金制度「生産連動型奨励制度(PLI)」を申請したとされる。
鴻海はインド工場でアップルのスマホ「iPhone(アイフォーン)11」と「iPhoneXR(テンアール)」などを生産。富智康は中国ブランドのスマホなどを生産し、インドでの売り上げが今年上半期(1~6月)の全体に占める割合は21%だった。
和碩の童子賢董事長は15日、「インドでの工場建設計画に変更はない」と明言した。インド工場は早ければ来年下半期(7~12月)から量産を始めるとの見通しを示した。
和碩は7月、チェンナイに子会社を設立したと明らかにしていた。チェンナイ近郊の工業団地で土地を借り受けており、年内に工場が完成する予定。初期投資額は1億5,000万米ドル(約158億円)。
鴻海と和碩は、iPhoneの9割以上を組み立てている。2社の動きを受け、市場では「アップルがインド市場を深掘りする決意の表れで、サプライチェーン(調達・供給網)が中国から海外に移る流れは変わらない」とみている。
■損害2億元か
緯創がインド南部ベンガルール(バンガロール)に持つ工場で12日、2,000人規模の暴動があり、工場建屋などに被害が出た。給与の低さと給与遅配に不満を持った従業員の犯行とされ、iPhone数千台が盗難に遭ったという。100人以上の逮捕者が出たもよう。
工場の操業は2週間停止する。工場の被害総額は台湾元ベースで17億台湾元(約62億6,000万円)に迫ったとの現地報道もあるが、緯創は15日、「工場の主要設備に大きな被害はなく、損害額は1億~2億元になる」との声明を発表した。