スタートアップの資金調達・ビジネスマッチングサイト

【韓国】人口9割分のワクチン確保[医薬](2020/12/09)

韓国政府は8日、世界保健機関(WHO)が主導する世界的なワクチン配分計画「COVAX(コバックス)」や世界の製薬会社との契約を通じて、人口の9割に相当する計4,400万人分の新型コロナウイルスワクチンを確保したと発表した。早ければ来年2~3月にも輸入を開始する予定。ただ、ワクチンがまだ完成していないこともあり、接種の開始時期は未定としている。

韓国政府は、英アストラゼネカと米ファイザー、米モデルナ(それぞれ1,000万人分)、ベルギーのヤンセンファーマ(400万人分)から計3,400万人分のワクチンを購入することを決めた。

アストラゼネカとはすでに購入契約を済ませており、早ければ来年2~3月にも韓国に輸入される見通しだ。アストラゼネカ以外の3社とは法的拘束力のある購入約款を交わした状態で、近く本契約を結ぶ予定という。

韓国政府は9月にCOVAXへの参加を表明し、これまでに1,000万人分のワクチンを確保している。COVAXと世界の製薬4社を合わせた確保済みのワクチン数は4,400万人分となる。朴淩厚(パク・ヌンフ)保健福祉相は記者会見で、「ワクチンはまだ開発段階であり、副作用など安全面の懸念もある。国民の健康と安心のため、当初の計画(3,000万人分)よりも多いワクチンの確保を決めた」と説明した。

ただ、予防接種の開始時期について朴保健福祉相は「ワクチンの開発状況や新型コロナの感染状況などを考慮し、慎重に決定する」と述べるにとどめた。

韓国政府はワクチン確保に向けて、計1兆3,000億ウォン(約1,250億円)の予算を編成した。後発のワクチンについても開発状況を綿密に注視し、必要に応じて追加確保に向けた交渉に乗り出す方針だ。

■徹底した管理体制が課題

実際の接種開始時期は未定だが、条件が整えばすぐに始められるよう、徹底したワクチン管理体制も整える計画という。

まず、温度に敏感なワクチンは厳格な保管体制を整える必要がある。例えば、ファイザーのワクチンはマイナス70度前後での保管を維持しなければならない。また、有効期間が短いことや1人当たり2回接種しなければならないなど、さまざまな課題がある。韓国政府は疾病管理庁に「コロナ19予防接種対応推進団(仮称)」という専門組織を立ち上げ、これに対応していく。

予防接種は原則的に無料で行う。高齢者や慢性疾患患者など新型コロナにかかりやすい人や、医療機関や高齢者施設などの関係者に対して、優先的に行う方針という。

■ワクチン確保で主要国に遅れ

日本や米国、欧州連合(EU)などの主要国・地域が早い時期からワクチン確保に乗り出したのに対し、韓国は一歩遅れて動き出した。これに対し、韓国政府の対応の遅れを非難するメディアも少なくない。

8日の記者会見で、記者から同様の質問を受けた朴保健福祉相は「今年6月末から専門家などを交えたタスクフォースを設置したが、安全性の問題が解決されていないため、交渉は慎重に行ってきた。(確保の遅れは)綿密な検討と手続きのためと理解してもらいたい」と説明した。

また、確保したワクチン数が世界の主要国よりも少ないことへの批判もある。米デューク大学によると、11月30日時点で日本は人口比で1.1倍のワクチンを確保したほか、米国は1.7倍、EUは2倍といずれも人口数よりも多い。これに対し、韓国は全人口(約5,180万人=2020年10月基準)をカバーする量に至っていないのが実情だ。

これについて朴保健福祉相は「韓国の感染者数は外国に比べて著しく少ないため、条件が異なる」と指摘する。ただ、韓国国内では再び感染者が急増し、首都圏(ソウル市・京畿道・仁川市)の警戒レベルも上から2番目の「2.5段階」に引き上げられるなど深刻な状況が続いている。本格的な冬になればウイルスの感染力が高まり、感染者数はさらに増える恐れもある。

韓国政府としては最悪の状況を想定し、ワクチンの追加確保に向けた取り組みを続ける必要が求められそうだ。

関連記事

公式Facebookページ

公式Xアカウント