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【シンガポール】【加速するスマートシティー(1)】外資系大手が積極投資[経済](2020/11/30)

東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要都市で、街全体をITでつなぐ「スマートシティー」関連のプロジェクトが活発だ。急激な人口増加でさまざまな都市課題が浮上する中、各都市が解決策として同分野に注目していることが背景にある。今回から数回に分けて、各国の情勢や市場の見通しを紹介する。第1回では、外資系企業の投資が盛んで、首都と南部の二大都市のほか、複数の省・市で開発が進むベトナムを取り上げる。【上村真由】

ベトナムのグエン・スアン・フック首相は2018年、25年までのスマートシティーの開発に関する指針を公表。ベトナム・ニュース(VNS)は、情報通信省がスマートシティーの開発や運営について、優先事項に言及したガイドラインを19年に発表したと報じている。

首都ハノイでは、まず住友商事の事業が顕著だ。ダウトゥ電子版によると、住友商事と現地不動産大手BRGグループは18年、ハノイ市人民委員会からのスマートシティー開発の投資案件に対する認可証を受領した。

翌年には合弁会社を設立し、42億米ドル(約4,370億円)を投じて同市北部ドンアインの272ヘクタールの土地を開発する計画を示した。20年中に着工し、22年に第1期の住宅事業の引き渡し開始を目指す。

今年11月11日には、住友商事のほか、NTTコミュニケーションズなど日本企業6社がコンソーシアム(企業連合)を組成したと発表。各社の強みを持ち寄り、ドンアインで環境に配慮した近代都市を建設する計画を明らかにした。

現地大手の動きでは、コングロマリット(複合企業)ベトナム投資グループ(ビングループ)傘下の住宅開発会社ビンホームズが、19年に「ビンホームズ・スマートシティー」の開発に着手した。VNS電子版によると、南トゥーリエム区タンロン大通りの280ヘクタールの用地に、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)を活用した都市を開発する構想という。

ベトナムの住宅開発会社ビンホームズは、首都ハノイで「ビンホームズ・スマートシティー」を開発している。人工知能(AI)など最新のテクノロジーを活用した都市となる構想だ(NNA撮影)

ベトナムの住宅開発会社ビンホームズは、首都ハノイで「ビンホームズ・スマートシティー」を開発している。人工知能(AI)など最新のテクノロジーを活用した都市となる構想だ(NNA撮影)

ハノイではこのほか、韓国国土交通省が今年9月、韓国企業によるスマートシティー関連技術や製品の海外輸出の支援を目的に「スマートシティー協力センター」を開設したと発表。現地スマートシティー造成プロジェクトの情報収集や企業同士の提携支援などを行う。

韓国紙は19年に、韓国国際協力団(KOICA)が中部のフエ市、ダナン市、クアンナム省と、スマートシティー造成に向けた覚書を締結したと伝えており、韓国勢の参画も進んでいるようだ。

ダウトゥ電子版によると、ダナン市は19年にスマートシティー建設計画を公表。北部クアンニン省もスマートシティーのモデル案に16年に着手するなど、首都周辺の各省でも構想の立案が相次いでいる。

■南部はシンガポール大手も参入

南部ホーチミン市では、2区と9区、トゥードゥック区の東部3区を合併する「東部都市構想」の検討が進む。2万1,000ヘクタールの土地に100万人以上が住み、市の域内総生産(GRDP)の3割創出を目指す都市構想で、フック首相も支持を表明している。実現すれば、ベトナム全体の国内総生産(GDP)の4~5%を占めることになるという。

2区では、特に外資系大手2社の開発計画が目立つ。1件目は、シンガポール政府系コングロマリット(複合企業)のケッペル・コーポレーション傘下の不動産開発会社ケッペル・ランドが開発する「サイゴン・スポーツシティー(SSC)」だ。

64ヘクタールの土地に、約4,300軒の高級住宅に加え、スポーツやエンターテインメントの施設を建設する。ケッペルの広報担当者は27日、NNAの取材に対し「当社は同事業を19年11月に着工した。総事業費は5億米ドル以上となる見込みだ」と明かした。完工の予定年月については、明確な回答を控えた。

シンガポールのケッペル・コーポレーション傘下の不動産開発会社ケッペル・ランドが開発する「サイゴン・スポーツシティー(SSC)」のイメージ図。約4,300軒の高級住宅に加え、スポーツやエンターテインメントの施設を建設するという(ケッペル提供)

シンガポールのケッペル・コーポレーション傘下の不動産開発会社ケッペル・ランドが開発する「サイゴン・スポーツシティー(SSC)」のイメージ図。約4,300軒の高級住宅に加え、スポーツやエンターテインメントの施設を建設するという(ケッペル提供)

2件目は、韓国ロッテグループ率いる合弁会社が進めるトゥーティエム新都市区内の複合地区「エコ・スマートシティー」だ。ダウトゥ電子版によると、総事業費22億米ドル近くを投じて、5ヘクタールの土地を開発しているという。

一方、9区ではビンホームズがスマートシティー「グランドパーク」の開発を手掛ける。東南アジア最大規模とされる36ヘクタールの公園に隣接し、70棟以上の高層マンションのほか、ショッピングモール、学校、病院などを併設する。

敷地内にはAIを搭載したカメラを設置。不審者の侵入や事故を探知して通報したり、顔認証で居住者を認識してエレベーターを自動的に稼働したりする機能など、さまざまなIT技術を活用する。

■NTT東が国営企業と協力

南東部に位置するビンズオン省は、省をあげて開発計画を推進している。18年には国際的な専門組織から国内で唯一、世界のスマートシティー開発戦略地域21都市のひとつに選ばれた。同省の海外直接投資(FDI)は今年9月時点で、累計3,900件・351億米ドルに上り、ハノイ・ホーチミンの二大都市に次ぐ全国第3位となっている。

日系企業では、NTT東日本が18年、国営の工業投資開発公社(ベカメックスIDC)と同省のスマートシティー化の早期実現に向けた協力覚書を締結。光回線の構築やクラウドWi―Fi(ワイファイ)の導入などを進めている。

韓国紙によると、ベカメックスIDCは19年、韓国の世界科学都市連合(WTA)とも同省のスマートシティー開発計画の中核を担う事業のコンサルティング契約を締結するなど、外資系事業者と積極的に連携している。

(第2回に続く)

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