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【ベトナム】有望国、越が7年連続首位[経済](2020/12/02)

日本政策金融公庫(日本公庫)が日系中小企業の海外現地法人を対象に実施した調査の最新版で、今後の事業展開で有望な国・地域としてベトナムが7年連続で首位となった。新型コロナウイルスの影響からの回復で先行する中国は2位を維持。ただ、東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でウイルス抑え込みに苦戦する国などは昨年から順位を低下させ、明暗が分かれた。

日本公庫の調査で、今後の事業展開の有望国・地域としてベトナムが7年連続で首位となった。写真は南部バリアブンタウ省の港湾に停泊する日系コンテナ船会社の船(VNA=NNA)

日本公庫の調査で、今後の事業展開の有望国・地域としてベトナムが7年連続で首位となった。写真は南部バリアブンタウ省の港湾に停泊する日系コンテナ船会社の船(VNA=NNA)

回答は1,529社(ASEAN=44.0%、中国=37.3%、その他=18.6%)から得た。調査は8月下旬~9月に実施し、以降のコロナ禍の影響は反映されていない。

「今後3年程度の事業展開での有望国・地域」を聞いたところ、回答企業の3割近くがベトナムを選び、2位以下に大差をつけた。トップ10は以下、中国(7.4%)、ミャンマー(7.3%)、インド(6.2%)、インドネシア(6.1%)、米国(6.0%)、タイ(5.9%)、フィリピン(3.9%)、台湾(1.8%)、メキシコ(1.6%)となった。

日本公庫の中小企業事業本部・国際金融業務第一グループの山本直毅グループ長代理は1日、NNAに対し、「(ベトナムは)新型コロナの影響が少ないこともあり、大差で首位を維持した」と説明した。回答割合は、他国と同様に前年から低下したが、市場の発展性に期待する向きが強まっているとの見方を示した。

ベトナム以外の回答割合に大きな差はないが、上位10カ国・地域のうち、前年から順位を下げたのはインド(1ランク低下の4位)、インドネシア(1ランク低下の5位)、タイ(2ランク低下の7位)、フィリピン(1ランク低下の8位)。ミャンマーは2ランク浮上の3位、米国は2ランク浮上の6位となった。

選んだ理由(複数回答)は、ミャンマーを除く上位5カ国で「現地市場の将来性が高い」との回答が最も多かった。ベトナムは市場の将来性(回答の比率50.0%)と2番目の「労働力が豊富」(同46.6%)がほとんど変わらず、生産地としても消費地としても注目されていることが特徴だ。ミャンマーは労働力(61.8%)が最も多く、市場の将来性(31.6%、2番目)よりも生産拠点としての事業展開を有望視している企業が多いとみられる。

■「新型コロナの影響色濃く」

調査は、今年が10回目。2010年代初めは有望国として中国が最も注目されていた。10年代半ばにはASEANやインドを有望とする機運が高まったが、近年は再び中国が根強い人気を見せる。

有望投資先の「常連国」では、中国が4年連続で2位を堅持した。過去10年で中国を上回ったことがあるASEAN3カ国(ベトナム、インドネシア、タイ)では、インドネシアとタイが低下基調となっている。

山本氏は「特にASEANで新型コロナのマイナス影響が色濃く出た」と指摘する。中国に集中するサプライチェーン(調達・供給網)の分散の機運もあるが、中国は自動車市場などの回復が早く、プラス要因となった。インドも近年は順位が上昇基調で昨年は3位となっていたが、厳格なロックダウン(都市封鎖)にもかかわらず感染者が増加し、日本人の本国退避も多く出たことが影響したとみている。

タイはベトナムと同様に新型コロナの抑え込みに成功しているが、「経済成長が停滞しており、ベトナムと対照的に国内総生産(GDP)成長率が賃金上昇率を下回る傾向にある」(山本氏)ことが魅力低下の一因となる。

■ASEAN事業の拡大意欲に影

既に事業を展開している国の展望はどうか。各社は、ASEAN、中国ともに事業拡大の方針を示すが、コロナ禍による打撃で追加投資への意欲は減退している。

「進出している国・地域における今後3年程度の経営方針」を聞いたところ、「拡大」との回答は33.4%(前年から9.7ポイント低下)だった。このうちASEANが18.2ポイント低下の37.8%と落ち込み幅が大きく、中国は2.7ポイント低下の27.7%となった。それぞれ、過半が「現状維持」と答え、コロナ禍の動向を様子見する傾向がうかがえる。

ASEAN主要5カ国で「拡大」と答えた企業の割合は、ベトナムが48.1%、フィリピンが36.6%、タイが33.9%、インドネシアが31.6%、マレーシアが17.9%。それぞれ12~25ポイント低下した。逆に、「縮小」の割合は高まり、マレーシアでは2桁に上った。

新型コロナについては、マイナスの影響を受けるとの回答がASEAN、中国とも8割以上を占めた。影響の解消には1~2年かかるとの見方が主流だ。今期は減収、減益との見込みが回答企業の5割を超えており、特にASEANでマイナスが目立つ。

コロナ禍は、直近の経営課題も変貌させた。「現在直面している問題点」(複数回答)として「販売数量の減少」(39.3%)との回答が「賃金の上昇」(33.6%)を上回り、調査開始以来初めて最多となった。成長して当たり前の新興国で、新型コロナがもたらした異例の受注減により、各社は厳しいかじ取りを迫られている。

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