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【香港】飲食業規制、苦境一段と[経済](2020/07/29)

香港政府が新型コロナウイルスの感染流行「第3波」対策として、飲食店の店内飲食を29日から終日禁止することを受け、外食業界の苦境がさらに深まるのは必至の情勢だ。営業停止や閉店時間の前倒しに踏み切る店は7,000店に膨れ上がるとみられ、業界団体は営業規制が延長された場合、8月の業界全体の損失額が70億HKドル(約950億円)に上ると予測している。関係者からは政府に追加の支援を求める声が上がっている。

夜間の店内飲食禁止が始まり、持ち帰りへの割引適用をアピールする中華料理店=香港島・西湾河(NNA撮影)

夜間の店内飲食禁止が始まり、持ち帰りへの割引適用をアピールする中華料理店=香港島・西湾河(NNA撮影)

「今は一日でも早く域内の感染者数が減少に向かうことを願うしかない」。香港で5店舗を展開している日本食レストランの幹部はNNAの取材にこう話し、事態の改善に望みを託した。

このレストランでは、夜間の店内飲食が禁止された15日以降、3店舗を臨時休業とし、香港島・中環(セントラル)などの2店舗のみの営業体制に縮小した。昼は通常通り営業を続け、夜は持ち帰りメニューと宅配サービスを提供してきた。

店の周辺はオフィスや住宅が多いため、一定の需要は見込めるものの、売り上げの減少は避けられそうになく、利益の確保は難しい。感染者の急増に警戒を強めた市民が来店を控えるようになったことに加え、景気の悪化で消費マインドが落ちたことが背景にあると同幹部は説明する。

同レストランは昼より夜の売り上げが多いことから、店内飲食の終日禁止による影響は小さいとみているが、「ファストフード店やカフェなど昼の営業が中心の店は強い打撃を受けるだろう」と予測。今後については「感染状況がどう推移するのか現時点で見通せず、経営に関してさまざまな想定をしなければならない」と述べ、先が読めない状況にため息を漏らした。

■政府に支援を要望

香港の飲食業界は政府などへの抗議活動が本格化した昨年6月以降、厳しい経営環境が続いている。新型コロナ感染拡大で始まった営業規制は6月中旬に大幅に緩和され、業況に光が差すかと思われた矢先に第3波に見舞われた。

28日付星島日報によると、飲食業界団体、香港餐飲聯業協会(HKFORT)の黄家和(サイモン・ウォン)会長は、8月4日が期限とされている店内飲食の終日禁止措置が延長された場合、8月の業界の損失額が約70億HKドルに上るとの見方を示した。7月の予想損失額を20億HKドル上回る。

同協会のまとめによると、夜間の店内飲食が禁止となった7月15日以降、営業を停止したり、閉店時間を前倒ししたりした域内の飲食店は計約5,000店に上る。終日禁止へと規制が強化されることで、さらに2,000店上積みされるとみている。

香港でレストランチェーンなどを展開する叙福楼集団(LHグループ)の黄傑龍(サイモン・ウォン)会長兼最高経営責任者(CEO)は、夜間の店内飲食が禁止となったことで、7月全体の売上高が5~7割減少すると予想。店内飲食が終日禁止になれば、業界の売上高は9割減り「営業停止と同じ状況になる」と述べ、香港政府に対し業界への早急な支援を要請した。

■小売り6万店も廃業危機

政府は公共の場所で一定数以上の集まりを禁じる「集合制限令」も引き締め、29日から3人以上が制限対象となる。市民の外出自粛傾向は一層強まるとみられ、小売業界も先行きに強い懸念を示している。中でも大きな課題となっているのが店舗賃料の支払いだ。

小売業界団体、香港小売管理協会(HKRMA)によると、不動産オーナーによる業界への支援は新規感染者数が減った4月以降縮小し、現在は大部分の店舗が賃料の減額措置などを受けていない。小売店の中には売り上げ減で賃料を支払えない店もあるという。

同協会は28日発表した公開書簡で、不動産オーナーに支援を要求した。第3波に直面する今が「(業界にとって)生死を分ける重要な時期だ」として、一時的に賃料を支払えないテナントに対し法的手段で店舗物件を回収するのを見合わせるよう要請した。また、賃料をテナントの売上高に応じた額に変更するよう求めた。

今後オーナー側から支援を得られない場合、「香港の小売店6万店余りが廃業の危機に直面し、業界の従業員26万人とその家族の生活は困難に直面する」と強い危機感を表明した。

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