【韓国】「文政権に見切り」の見方も=識者に聞く[政治](2020/06/17)
今回爆破された南北共同連絡事務所は、2018年4月の南北首脳会談で文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が設置に合意した南北協力の象徴的な存在だった。その行動を指示した金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長の行動の代償は大きい。一方で、北朝鮮は文大統領に対して見切りを付けたとの見方もある。北朝鮮事情に詳しい2人の識者に、その要因と南北関係の見通しについて聞いた。
■「北に選択肢なし」の事実明らかに
延世大学統一研究院・専門研究委員の奉英植(ボン・ヨンシク)博士のコメント。
南北共同連絡事務所の爆破は、米韓に対する正恩氏の不満を表出する方法としてはインパクトのある演出ではあったが、皮肉にも、正恩氏の手元には交渉のレバレッジ(てこ)となる選択肢が残されていないという事実も明らかになった。文大統領は文大統領なりに米朝間での仲介役を果たそうと努力したが、正恩氏の期待には及ばなかったようだ。
ただし北朝鮮としては、南北共同連絡事務所の爆破後の明確な戦略はないだろう。正恩氏の妹でソフトなイメージを演出してきた与正氏を全面に出して韓国側の譲歩を引き出そうとしたものの、感情的な言動だけが目立ち、外交の表舞台に立つにはあまりにも未熟だった。
新型コロナウイルスの感染防止で中朝の国境を長期間封鎖するなど、北朝鮮は経済的にかなり追い詰められているようだ。
文政権は北朝鮮と対話を続けたいだろうが、北朝鮮がさらなる挑発行為に出れば、18年9月の南北首脳会談に合わせて双方の国防相が署名した「軍事分野合意書」が事実上無効になる。そうなれば、文大統領は国内外に対する説得力を失うだろう。
■北朝鮮へのブーメラン不可避
世宗研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)北朝鮮研究センター長のコメント。
今回の爆破は、金大中(キム・デジュン)元大統領と故金正日(キム・ジョンイル)北朝鮮国防委員会委員長が00年6月15日に署名した「南北共同宣言」と18年4月27日の板門店宣言の全面否定だ。
金与正第1副部長は4日、開城工業団地の完全撤去と南北軍事合意破棄の可能性も示唆したが、北朝鮮は「対北ビラ散布の韓国政府責任論」を提起し続けながら、南北連絡事務所の爆破を正当化しており、すぐに開城工業団地の完全撤去へ進むものと予想される。北朝鮮は文政権に対してこれ以上期待がないと判断したようだ。
しかし、それによって北朝鮮に対する韓国社会の内部の世論が悪化し、北朝鮮の国際的孤立も増幅されるだろう。この事態は北朝鮮にブーメランになって返ってくるはずだ。
文政権としては、これまでの対北朝鮮政策に問題はなかったのか徹底的に検討し、画期的な政策転換と北朝鮮対策の刷新を早急に模索しなければならない。