【日本】社会に傷跡、復興遠く[経済](2020/05/12)

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東南アジアの一部の国で、移動などの制限の緩和が始まった。新型コロナウイルスの新規感染者の減少に伴い、封じ込めから経済の再起動へと重心を移す。道しるべのない「ポストコロナ」に動き出したその足取りに、パンデミック(世界的大流行)で社会が負った後遺症がのしかかる。

月5,000バーツの給付金の再申請に訪れた市民ら=7日、バンコク(NNA)

月5,000バーツの給付金の再申請に訪れた市民ら=7日、バンコク(NNA)

タイ・バンコクで3日、飲食店の店内飲食や理髪店などの営業が条件付きで解禁された。市中心部アソークの理髪店で、約1カ月ぶりにハサミを握った女性に今後の見通しを聞くと、首を振った。「うちは外国人客が中心。売り上げが戻るのに時間がかかる」。

タイでの1日当たりの新規感染者数はここ数日、1桁に収まっている。バンコクなどで取られた大半の小売店の閉鎖措置や、夜間外出禁止令などが効果を発揮した。その副作用の発症に、庶民が苦しめられている。

■自殺が感染による死を上回る恐れ

4月下旬、タイ中部アユタヤ県を流れる川で、女の子と中年男性の遺体が相次ぎ見つかった。沿岸の住民は2日前の夜、何かが川に飛び込む音を聞いていた。直後に女の子の叫びが聞こえた。「お父さん、置いていかないで」――。水音が続いた。

地元紙によれば、男性は40代の建設労働者。新型コロナの余波により仕事が見つからず、妻と別れたストレスを親戚に打ち明けていた。亡くなった娘は5歳だった。

タイ政府は、社会保険に未加入の非正規労働者などに月5,000バーツ(約1万6,500円)の給付金制度「誰も取り残さない」を立ち上げた。だが、条件を満たしているはずの申請が通らないという不満が広がり、財務省は再申請の受け付けを始めた。

バンコク市内の政府庁舎前には7日朝、1,000人以上が再申請に押し寄せ、行列は敷地の外にまで続いていた。列に並ぶ市民らの目には、生活の糧を失い、政府の救済策からも取り残されかねない不安が宿っていた。

タイでの新型コロナによる死者数は、同国保健省によれば11日時点で56人。タイの研究者グループは先に、コロナ禍による生活苦を原因とした自殺者数が、感染による死者数を上回る恐れがあると指摘している。

ベトナムは4月23日、大都市での「社会隔離」と呼ばれる外出規制を緩和した。ホーチミン市では、停止されていたタクシーや自動車の配車サービスが再開した。だが配車大手グラブと契約する30代の自動車運転手は言う。「以前は1日200万ドン(約9,000円)を稼いだ日もあった。でも今は90万ドンぐらいにしかならない」。

ベトナム政府は、「国民一人一人が兵士」と訴え、ウイルスとの闘いへの協力を鼓舞した。社会隔離の緩和から半月、運転手の言葉に勝利の高揚感はない。

■出稼ぎ労働者の感染続く

5日に営業・行動規制「サーキットブレーカー」の段階的な解除を始めたシンガポール。市中での新規感染は1日当たり10人前後に落ち着いてきたが、外国人ドミトリー(居住施設)で集団生活を送る、単純労働者向けの就労ビザ(ワークパーミット=WP)保有者の感染は、現在も1日数百人単位で確認されている。

政府は一般市民の行動規制を緩和する一方、建設業界で働く外国人労働者の完全外出禁止は、4日までだった期限を18日に延期した。単純労働の担い手を出稼ぎ外国人に頼ってきた国の成長モデルが岐路に立たされている。

■「ロヒンギャ追放」マレーシアでも

マレーシアの軍は4月中旬、同国沖合で発見したミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャ約200人が乗った船を、「不法移民がもたらす恐れのあるクラスター(感染者の集団)を防ぐため」追い返した。

イスラム教徒が多いマレーシアは、ミャンマーの迫害を逃れたロヒンギャを受け入れてきた。その数は20万人ともされるが、感染拡大の恐怖は国民の反ロヒンギャ感情をあおった。「活動制限を守っていない」などの噂が飛び交い、署名サイト「Change.org」では、ロヒンギャの追放を呼び掛ける活動が立ち上がっては、ヘイトスピーチとして削除されている。

マレーシアは5月4日、活動制限令の大幅な緩和に踏み出した。だが、建設現場や卸売市場で外国人労働者のクラスターが確認されたことを受け、政府が打ち出した外国人労働者へのウイルス検査の範囲や費用負担をめぐり、混乱が続いている。

マレーシアは全労働力の15%を、230万人の外国人労働者に頼る。建設業界では、外国人労働者の85%は不法就労といわれる。経済活動を正常化させつつ、感染防止策をどこまで徹底するか。均衡点はまだ見つかってない。

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