【マレーシア】車業界、操業再開に二の足も[車両](2020/04/20)

マレーシア政府は、今月28日までの活動制限令「フェーズ3」で自動車産業の操業再開を限定的に認めるが、再稼働に二の足を踏む企業が少なからずあるようだ。操業許可の要件に「従業員が新型コロナウイルスに感染した場合、企業が医療費を全額負担」と明記されているためだ。操業許可を申請しつつ、業界全体の足並みを見極めるとの声もあった。

政府は、活動制限令フェーズ3(今月15~28日)で、操業を認める特定業種に自動車産業を追加し、「輸出向けの完成車・部品の製造と、修理やメンテナンスなどのアフターサービス」のみに操業を許可する。また、活動制限令を発令した当初から、国家安全保障会議(NSC)を通じて、日常生活に不可欠な「必須サービス」以外の重要サービスとして、「車両修理、車両牽引」を条件付きで認めていた。

ある日系大手自動車メーカーは、国内市場向けに現地生産しているため、「輸出」ではなく「アフターサービス」について貿易産業省(MITI)に操業許可を申請した。

同社幹部はNNAに対し、アフターサービスについては、出社できる従業員数が最大で通常の50%になるが、審査に5営業日かかるため、「フェーズ3の期間中に操業できる日数は限られている」と述べ、申請手続きの労力に対し効果が小さいとの見解を示した。同社はMITIへの申請を、活動制限令の解除後を見据えた、本格的な事業再開への地ならしと受け止めている。

輸出に関しても、「仕向け先がマレーシア同様に新型コロナで操業を停止、または縮小している国もあるはずで、外需がどこまであるのかは不明だ」と指摘した。

一方で、ディーラー側は「半数近くが申請をちゅうちょしている」(同幹部)と明かした。MITIが操業を認める企業に対し、「従業員が感染した場合、医療費の全額負担」を求めていることが二の足を踏む要因だという。「従業員だけでなく、その家族まで感染すれば、ディーラーが賄える額の話ではなくなる」(同幹部)ためだ。

また、営業時間や操業の可否は州政府の判断によるところもあり、事業再開を希望するディーラーが全て申請できるわけでもないという。

■発注取り消しが急務

別の日系大手自動車メーカーの幹部も、「ディーラーを通じて、アフターサービスの需要があるため、フェーズ3でMITIに操業許可申請を行った」と明らかにした。個別に操業許可を申請しているディーラーに対して、「メーカーとしてサプライチェーンを安定化させる責任がある」と話す。

ただ、同幹部は、自動車業界が感染状況を考慮しながら、一斉に稼働を再開するのが理想的との見方だ。見切り発車で事業を再開し、職場に感染者が出た場合、「企業イメージを大きく損なう恐れがある」(同幹部)ためだ。

自動車業界は、生産月の2~3カ月前に車両を発注し、日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)などからの部品の出荷、現地での組み立てを経て、販売する。そのため、活動制限令の期間中(3月18日~4月28日)に販売を予定していた車両の発注を終えており、「少なくとも4月分のキャンセル作業が急務となっている」(同幹部)。

マレーシアに限らず、各国の拠点から出荷元にキャンセルが集中している状況で、マレーシア拠点だけでなく全社的に年内は発注、生産の調整に取り組むことになる見通しという。

■部品業界、迅速な融資審査要求

一方、自動車部品メーカーからは、銀行融資の承認プロセスが遅いとの批判が出ている。18日付ニュー・ストレーツ・タイムズによると、マレーシアの国民車メーカー、プロトンの下請け企業で構成されるプロトン・ベンダーズ協会(PVA)のワン・モハマド会長は、政府が自動車産業の操業再開を一部認めたことに歓迎の意を表明。一方で、景気刺激策に盛り込まれた中小企業支援策については、「融資の承認プロセスが遅すぎる」と批判した。

同会長は、融資の審査を待つ間に部品メーカーの資金が枯渇し、倒産するリスクがあると指摘。結果として、「サプライチェーンの崩壊を招く」と警鐘を鳴らす。

同氏によると、マレーシアの自動車産業は国内総生産(GDP)の4.5~5%に寄与し、雇用者数は直接・間接合わせて75万人に及ぶ。資金繰りに困窮する企業に、景気刺激策による支援が確実に届くよう政府に求めた。

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