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【ベトナム】世界のGDP、損失5.5兆ドル[経済](2020/04/14)

新型コロナウイルス感染症の流行で、世界の国内総生産(GDP)が最大で5兆5,000億米ドル(約596兆円)失われるとの試算を、日本国際問題研究所がリポートで明らかにした。中国はリーマンショックの際に大規模な財政出動を実施し、プラス成長を維持したものの、今回は同規模の対策は難しいのが現状。44年ぶりのマイナス成長も見えてきている。世界全体では、リーマンショック以上のマイナスの影響が出ることが確実な状況だ。

リーマンショックの際は大規模な財政支出で乗り切った中国だが、「コロナショック」では同様の措置に踏み切るのは難しそうだ=中国・北京(共同)

リーマンショックの際は大規模な財政支出で乗り切った中国だが、「コロナショック」では同様の措置に踏み切るのは難しそうだ=中国・北京(共同)

日本国際問題研究所は、新型コロナウイルス感染症の流行による世界経済への影響について、各地域の需要と供給の側面から試算。それぞれ高位と低位の予測値を発表している。海外需要(外需)が減少したことによる世界経済の影響として、世界全体のGDPは最低で1兆6,650億米ドルのマイナスとなり、最大で5兆4,900億米ドルのマイナスになるとしている。最大のマイナスが現実になれば、日本のGDP(2019年は4兆9,564億米ドル)以上が丸ごと消滅することになる。例えば自動車メーカー各社は、相次いで生産停止を発表しているが、これにより中小の部品メーカーに加え、鉄や樹脂、ゴムといった原材料メーカーにも影響が波及する。

実質GDP成長率の見通しを国や地域別で見ると、日本は1.9~5.4%のマイナス。同研究所の研究員、柳田健介氏は「09年の日本のGDP成長率はマイナス5.4%だったので、最悪のシナリオではリーマンショック時と同等の影響になる」とコメントしている。最大のマイナス成長になりそうなのが、中国だ。低位の推計では2.9%のマイナスにとどまるが、高位では11.2%の減少になると予想される。同氏は「中国はリーマンショックの際に、4兆元(約62兆円)の財政出動を実施し、プラス成長をつなぎ止めた。ただ、その後に不良債権などの後遺症に悩まされ、構造的な成長減速になっていることから、今回は同様の財政出動は難しい」と指摘する。44年ぶりのマイナス成長が、現実味を帯びてきている。

東南アジア諸国連合(ASEAN)はマイナス2.2~5.0%の見通し。リーマンショックでは金融危機の直接的な影響は小さかったものの、実体経済に波及し、製造業にマイナスの影響が出た。

国別では、輸出依存度が高い国でマイナス幅が大きい。シンガポールがマイナス4.5~14.2%、ベトナムはマイナス4~31.9%となる見通し。ベトナムは特に欧米向けの輸出が大きいことで、影響を受けやすい。柳田氏は「今回は実体経済発の危機で、サプライチェーン(供給網)への影響が大きい」とし、「製造国として力をつけてきているベトナムは、産業基盤が崩れないよう、抵抗力が試される局面だ」と指摘した。一方、南アジアが高位で1.8%とプラスを維持するのは、輸出依存度やサプライチェーンへの参加が限られているためという。

■サプライチェーンに打撃大きく

供給面として、「第1次産業」「製造業」「サービス業」の産業別生産量の変化をみると、発展途上国への影響が大きい。中国では春節(旧正月)後の工場の操業再開を遅らせるといった措置をとり、サプライチェーンは大きく混乱した。また、世界中で外出制限や14日以上の隔離措置が実施されていることで、工場やオフィス、店舗で働く労働力の供給が滞っている側面もある。

日本ではサービス業の生産量がマイナスになる一方、第1次産業と製造業はプラスを維持する。これは「比較優位で生産性がある産業は、国内生産に切り替えることができるため」(同)で、韓国や台湾、香港、欧州連合(EU)・英国でも同様の傾向が見られる。中国とASEANでは第1次産業がプラスになるものの、サービス業と製造業はマイナスになる見通し。製造業の輸出が大きなマイナス影響を受け、全体にインパクトが増幅されるという。南アジアは3分野の生産量がすべてマイナスとなる。同地域は内需型の経済であるため、生産停滞のマイナス影響は大きい。南アジアはサービス業のマイナス影響が特に大きくなる。

また、リポートでは主要国の貿易量の落ち込みについても試算している。世界のGDPの約60%を占める、日本と米国、中国、EU・英国の貿易量の落ち込みは、「高位で輸出が約135兆円、輸入が約262兆円の損失」「低位で輸出が約63兆円、輸入が約129兆円の損失」との見通しを示している。

柳田氏は「コロナショックを機に、サプライチェーンの見直しが始まるという予想は多い」と話す。中国では生産性が低い産業の移転が加速し、東南アジア内でもサプライチェーンの再編が起きる可能性がある。また、日本企業が「国内回帰」の流れを強めていくこともあり得るという。

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