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【タイ】新型コロナで日系ホテル苦境[観光](2020/04/22)

新型コロナウイルスの感染拡大が、タイに進出する日系ホテルの事業運営に影を落としている。ホテルオークラグループはタイ国内で運営する2軒のうち1軒を休業しているほか、5月に予定していた新たなホテルの開業を延期することを決めた。ホテルチェーンの「Kokotel(ココテル)」はほぼ全店を休業している中、空き部屋のデイユースサービスを始めるなどして顧客の確保を図るが、依然として先行きは見通せない状況だ。

「ホテル・ニッコー・バンコク」は規模を縮小して営業を続けている=4月、タイ・バンコク(NNA撮影)

「ホテル・ニッコー・バンコク」は規模を縮小して営業を続けている=4月、タイ・バンコク(NNA撮影)

ホテルオークラグループが運営しているホテル「オークラ・プレステージ・バンコク」は、タイ国内での新型コロナの感染状況を考慮し、3月26日から休業している。営業再開は当初4月16日と発表していたが、その後同30日まで休業を延長した。運営会社のオークラニッコーホテルマネジメントの担当者は、「感染状況に応じた判断が求められるため、再開が確定しない可能性もある」と話す。

また同グループは、5月8日にバンコク・トンロー地区で開業予定だった「ホテルJALシティバンコク」の開業を延期することを決めた。新たな開業日は検討中だ。同ホテルに併設している「ホテル・ニッコー・バンコク」は営業の規模を縮小しているが、宿泊客の受け入れは続けている。ただ同担当者は、「こうした状況下で、ホテルから利用を喚起することは難しい」とし、事業運営の判断が困難であることをうかがわせた。

タイの10カ所でホテルを運営するココテル(タイランド)の松田励最高経営責任者(CEO)によると、新型コロナによる事業への影響は今年1月下旬から出始め、感染者が急激に増えた3月半ばからは需要が急減した。売上高はこの頃、全店舗でゼロに近い状況になったという。現在はバンコクの1カ所を除く全店で営業を停止している状態だ。

同チェーンは、タイのホテル市場で比較的競合が少ない中価格帯(1泊1,500~2,000バーツ=約5,000~6,600円)のホテルとして、中国などアジア圏の旅行者を中心に人気を集めてきた。ただ、世界的な感染者数の増加や入国規制の強化で、観光業の状況改善への見通しは立たない。松田氏も「いつ営業再開できるか分からない」と不安を口にする。

タイ政府はホテルなどの観光業を対象に、低利融資(ソフトローン)や債務の返済条件緩和といった対策を打ち出してはいるが、まだ制度がうまく運用されていない現状もある。松田氏は、「制度の発表はあったものの、事務方の担当者は何も聞いていないという事態が続いている。具体的な連絡先(ホットライン)と共に発表があるとありがたい」と訴える。

ココテルでは、在宅勤務中の人などをターゲットにデイユースサービスを展開している=4月、タイ・バンコク(NNA撮影)

ココテルでは、在宅勤務中の人などをターゲットにデイユースサービスを展開している=4月、タイ・バンコク(NNA撮影)

こうした中で、ココテルは空き部屋をデイユースで貸し出すサービスを新たに開始した。在宅勤務中の人や、家族連れが気分転換する場として、1日6~8部屋の利用があるという。営業時間は午前6時半~午後8時で、料金は利用時間にかかわらず一室480バーツだ。これに加え、2021年10月まで全店舗で使える3泊分のバウチャー(1,999バーツ)をこれまで250セット以上販売。当面の運営資金を確保し、事態が収束するまで持ちこたえたい考えだ。

一方で、西日本鉄道は、東南アジアで運営する初のホテル「ソラリア西鉄ホテルバンコク」を、予定通り5月30日に開業する計画。同社の担当者は「当面はタイ国外からの利用客ではなく、国内の利用を想定して運営を行っていく予定だ」と述べた。

■ホテル上場3社、純利益4割減も

地元紙によると、タイ・ホテル協会(THA)は、新型コロナ対策の部分的なロックダウン(都市封鎖)によって、全国のホテル3万軒以上が4月中に収入がなくなる見通しを示している。ホテルの一時閉鎖による失業者も増えており、市場の先行きは不透明な状況だ。

台湾系のKGI証券(タイランド)のアナリストは、タイ証券取引所(SET)に上場するホテル運営大手3社(セントラル・プラザ・ホテル、エラワン・グループ、マイナー・インターナショナル)について、今年の合算した純利益は前年比38.2%、ホテルの客室1室当たりの売上高(RevPAR)は24%、それぞれ減少すると分析している。

一方で「長期的に見れば、タイの観光産業の構造が変化することはない」とも指摘。来年はタイ国内でホテルの新規供給が少なく、新型コロナの感染状況も改善すると予想されることから、市場は回復傾向をたどると予測した。21年の3社の合算した純利益は14.2%減とマイナス幅が縮小し、RevPARは22%増と急回復するとの見通しを示した。

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