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【韓国】北朝鮮もコロナで水際対策[観光](2020/04/27)

新型コロナウイルス感染症が世界中でまん延する中、北朝鮮は感染者数を明らかにしておらず、その実態はベールに包まれたままだ。ただ一方で、北朝鮮が外貨の稼ぎ頭である中国人観光客の受け入れを1月中に全面停止していた点でも、事態をいち早く深刻に捉えていたことが分かる。国際社会からの制裁が続く中、今回の事態は北朝鮮経済にも深刻な打撃を与えているようだ。

北朝鮮には欧米から年間5,000人の観光客が訪れるという(ヤングパイオニアツアーズ提供)

北朝鮮には欧米から年間5,000人の観光客が訪れるという(ヤングパイオニアツアーズ提供)

北朝鮮は新型コロナ対策として、中国からの観光客の受け入れを1月22日に全面停止した。感染源である中国・武漢市の封鎖が23日だったことを考えると、北朝鮮の対応の早さが分かる。

数少ない合法的な外貨獲得手段の一つである観光事業を事実上中断したことからも、事態がいかに深刻かを理解していた証しとも言えるだろう。また、2月初めには中国行きとロシア行きの航空便や列車を全て運休したため、中朝国境の人の往来自体もほとんど途絶えた。

米パシフィックフォーラム戦略国際問題研究所(CSIS)の研究員で、定期的に北朝鮮を訪問しているアンドレイ・アブラハミアン氏は、北朝鮮が観光事業を通じて獲得する外貨を1年間で約1億米ドル(約107億円)と推測する。これは、南北経済協力事業の開城工業団地を通じて北朝鮮に入った外貨の規模に匹敵する。

中国では、貧しかった時代の自国の姿を重ね合わせて北朝鮮を訪問する「回顧観光」が人気を集めている。北朝鮮専門のニュースサイト「NKニュース」によると、2019年には中国から過去最高の35万人が北朝鮮を訪問していた。

■物資移動が急減

中朝国境封鎖により、貿易額の9割以上を依存する中国との物資移動も極端に減少した。中国税関総署によると、3月の北朝鮮との貿易総額は1,864万米ドルで前年同期に比べ91.3%急減した。内訳を見ると、北朝鮮からの輸入額が61万米ドルで91.3%減、輸出額は1,803万米ドルで90.9%減となった。

北朝鮮問題に詳しい聖学院大学政治経済学部の宮本悟教授は「北朝鮮が外貨不足で苦しんでいるのは間違いないが、それでも人の命と安全に比べれば優先順位は低い。今回の有無を言わさない水際対策の徹底は、『国民を守るため』という名目で核開発を進める論理と一脈通じるところがある」と分析する。

北朝鮮メディアによると、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は今月11日に朝鮮労働党中央委員会政治局会議を開催し、「感染の危険は短時間で解消されない」との見通しを示した。

その上で、新型コロナによる打撃を見越して政策目標を下方修正。新型コロナ封じ込めの戦いは長期戦になり、その間の経済への打撃はやむを得ないと考えているようだ。

■感染防止策も継続か

北朝鮮内での感染防止策も行っているようだ。世界貿易機関(WTO)の平壌所長を務めるエドウィン・サルバドール氏によると、北朝鮮当局は4月2日時点で外国人を含む2万5,000人を隔離したという。

これは、同日までに実施したウイルス感染のPCR検査数(709人)を上回る規模で、「『せきや熱などの症状があれば、まずは隔離する』という当局の方針のため」(宮本教授)という。

■中朝国境封鎖は長期化へ

脱北者で、世界北朝鮮研究センターの所長を務める安燦一(アン・チャンイル)氏によると、5月か6月をめどに中朝の国境封鎖を解除するように求める中国政府に対し、北朝鮮当局は「新型コロナが終息するまで封鎖を継続する」との見方もある。

北朝鮮ツアーが売り上げの75%を占めるというヤングパイオニアツアーズ(北京市)でツアーマネジャーを務めるローワン・ビアードさんは「ワクチンが開発されて、北朝鮮でも接種できるようになるまでツアー再開は難しいだろう」と語る。

国際社会からの経済制裁が続く中での中朝国境封鎖は、あまりにも代償が大きい。新型コロナの感染状況も気になるところだが、事態の長期化が北朝鮮にどのような影響を与えるのかにも注目が集まる。

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