【シンガポール】サプライチェーン混乱を警戒[経済](2020/03/17)

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シンガポールに生産拠点を置く日系企業の間で、新型コロナウイルスの感染拡大の影響が出始めている。中国などアジア地域でのサプライチェーン(調達・供給網)の混乱を受けて警戒感も強まっているほか、中国人作業員の確保が困難になってきている。域内で入国制限を導入する国が増え、営業活動にも支障が出ている。事態が収束する兆しはみえないため、企業にとっては厳しい状況が続きそうだ。

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、シンガポールに生産拠点を置く企業への影響が出始めている=シンガポール東部(NNA撮影)

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、シンガポールに生産拠点を置く企業への影響が出始めている=シンガポール東部(NNA撮影)

シンガポールで製造業は、国内総生産(GDP)の約2割を占める主要産業の一つだ。整備されたインフラや物流網、アジア各国の市場と距離が近いことなどが魅力となっており、同国に生産拠点を構える日本企業も少なくない。

ただ、新型コロナウイルスによる生産活動への打撃が世界的に深刻化する中、シンガポールの工場も少なからず影響を受けている。

シンガポール日本商工会議所(JCCI)が現地の日系企業を対象に2月に実施した調査では、シンガポールに工場を持つ企業から「生産に関する部材調達などサプライチェーンに中国企業がかなり関わっており、今後の影響の度合いを見極めるのに苦慮している」「中国からの資材が滞っており、代替資材の調達に向けて日本側と取り組んでいる」といった回答があった。

三菱重工業は、シンガポールでフォークリフトの製造・販売やディーゼル発電セットのエンジニアリング事業などを手掛ける。同社の広報担当者は、NNAに対し、「シンガポールの工場はサプライチェーンの混乱の影響を少なからず受けている。操業は通常通り続けているが、サプライヤーと協力して対策を講じている」と明らかにした。

三井化学は、シンガポール西部ジュロン島で高機能エラストマー(商標名タフマー)などを生産している。同社の広報担当者によると、一部で定修中のプラントもあるが、新型コロナウイルスの影響を見ながら稼働について検討中という。

日本の機械メーカーのシンガポール現地法人によると、工場は依然として通常通り稼働しているが、昨年の米中貿易摩擦の激化に加えて新型コロナウイルスの影響が追い打ちをかけ、生産量が減少している。

同現地法人の担当者は「中国から原材料や部品を調達しているため、サプライチェーン混乱の影響を受けている。経済低迷で工作機械の需要も低迷しており、これが生産量減少につながっている」と説明した。具体的な減少量は明らかにしていない。

■国境封鎖に備え、社宅用意

同現地法人によると、さらに深刻なのが工場作業員の勤務状況という。工場には多くの中国人作業員がおり、旧正月(春節)などで大半が母国に一時帰国した。

シンガポール政府は直近で中国への渡航歴がある人に対し、職場復帰する前に14日間の自宅待機を義務付けている。政府がこの規定を導入した直後は、同現地法人でも多くの中国人作業員が自宅待機の対象となり、一時的に工場の人員が大幅に減少した。

現在はほぼ全員が職場復帰したが、中国人作業員の中には新型コロナウイルスの感染拡大を受けて母国に本帰国するため、会社を辞める人も増えているという。工場の業務はテレワークができず、スタッフの減少は痛手になるもようだ。

三井化学では、シンガポール中心部にあるオフィスで勤務者を2チームに分け、日替わりで在宅勤務を実施している。

キッコーマンの現地法人キッコーマン・シンガポールは、しょうゆなどを生産する製造会社だ。同社の担当者によると、工場の作業員の一部を在宅勤務としているほか、休憩や昼食をとる時間や場所を細分化して感染予防対策を強化している。

シンガポール工場にはマレーシア人作業員が半数近くいるため、万が一の国境封鎖や自宅待機に備え、シンガポール国内に社宅を用意し、本人の希望を確認しながら、選抜メンバーを泊める準備をしてきた。そのため、18日からのマレーシア側からの突然のロックダウンにも対応できると語る。

工場の稼働状況については、作業員の勤務体制を見直すといった事業継続計画(BCP)を策定しているため、現時点では問題ないという。

ただ域内での販売活動について同担当者は、「例年この時期は引き合いが多くなるが、アジア主要国の新型ウイルスによる入国制限などで営業活動への制限や、シンガポールでのレストランなど飲食店への客足の落ち込みなど、今後への影響が懸念される」と述べた。

日本貿易振興機構(ジェトロ)・シンガポール事務所の藤江秀樹氏は、「シンガポールで工場を運営していなくても、地域統括拠点として東南アジア諸国連合(ASEAN)の営業を担当している企業もあり、中国工場から供給された部品・素材などを東南アジア各国で販売する機能を持つ」と指摘する。

こうした企業から、「中国工場での操業を長期的に縮小せざるを得ない場合、顧客向けにスムーズに製品を提供できず、これが長期化すると事業への影響が出る」との声が聞かれているという。

CIMBプライベート・バンキングのエコノミスト、ソン・センウン氏は、新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーンの寸断がシンガポールの製造業全体に及ぼす影響に懸念を示す。

同氏は「貿易依存度が高く、小国開放経済のシンガポールではサプライチェーンの寸断の影響が大きい。中国や日本、韓国とつながるサプライチェーンの混乱は、特にシンガポールの製造業の約4割を占める高付加価値のハイテク産業を中心に影響が拡大する」と予測している。

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