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【インド】日本人の出国、事実上不可に[経済](2020/03/05)

インド政府が3日、日本人に対して発給済みのビザを無効にする措置をとったことで、現地の日本企業に不安が広がっている。日本からインドに出張者が来られなくなるほか、インドで勤務する日本人社員がインドを出国した場合も出国した時点でビザが無効になるため、各社は事実上、日本人社員の出国を禁止せざるを得ない状況だ。ある日系家電メーカーの幹部は「開発や販売に影響が出る可能性がある」と語るなど、長期化すれば、日系企業が打撃を受けることは必至だ。

国内にある新型肺炎の隔離病棟。インド政府は新型肺炎への警戒感を日に日に強めている=3日、インド(PTI)

国内にある新型肺炎の隔離病棟。インド政府は新型肺炎への警戒感を日に日に強めている=3日、インド(PTI)

ビザ無効の措置は、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の感染拡大の防止が目的だ。3日までに日本人に対して発給され、インドに未入国の状態の全てのビザを即日無効化した。措置がいつ解除されるかは不明。インドに入国する必要がある日本人は、やむを得ない理由があることを要件として、最寄りのインド大使館、総領事館に足を運び、新たにビザを申請しなくてはならない。

■日本人の出国「即日禁止」対応も

現地の日本企業は、駐在する日本人の一時帰国や海外出張の取りやめに動いている。

日系家電メーカーのインド法人幹部はNNAに対して「3日の時点で約20人いる日本人出向者に対して、業務、プライベートともに海外渡航を禁止した。日本からの(インドを含む)海外出張に関しては、2月末の時点で控える措置をとった」と明らかにした。

日系自動車メーカーの関係者は「突然のことで、今はインドから日本に帰国・出張中の社員が何人いるかなど、事実関係を確認している段階」と戸惑いをあらわにしつつ、「インドにいる日本人社員は特別な事情がない限り、出国を見合わせざるを得ない状況だ」と語った。

三井物産の広報部は「2月から不要不急の出張を自粛している」とコメント。日本国内、日本からインドを含む海外、海外拠点同士の全ての出張が対象で、新型肺炎の感染状況が改善するまで自粛を続ける方針という。

日本貿易振興機構(ジェトロ)ニューデリー事務所の真田勇二次長は「ビザを取り直すには、相当の手間がかかると予測される。再申請でスムーズに取れるのかどうかが懸念事項になるため、各社は日本人の出国を控えざるを得ない」と語る。長期化した場合は、「日本企業のビジネスに間違いなく影響が出る」との見方だ。

ちょうど年度末に当たり、人員入れ替えの時期に重なっていることも大きい。「4月着任の人員を予定通り配置することは難しいだろう。各社で欠員が出てしまう可能性がある」と指摘する。

日本人へのビザ無効措置が出た後、(日本ではない)他国のインド大使館では、日本人によるビザ申請が拒否されたケースがあるとの情報も出ている。真田氏は「突然の措置で、海外のインド大使館も混乱しているのではないか」と推測。対応が安定するまでに、多少の時間を要する可能性があるとの見方を示した。

■製品開発や販売に影響か

前述の家電メーカー幹部は、ビザ無効の措置が長期化した場合、「開発や販売に影響が出る」と危惧する。

「日本からの支援者がインドに来られなくなるため、長期化すれば(生産・技術面では)開発に支障が出る。(販売面では)マーケティングにも影響を及ぼす」とコメント。また、インド法人が販売を管轄する周辺国への出張もできなくなるため、「販売にも影響が出るだろう」と語った。

日本企業や日本人にとって一番の懸念は、措置がいつまで続くのか、先が見えないことだ。在インド日本大使館の担当者はNNAに対して、「(日本が)感染拡大防止のためにとっている措置など、日本の情報をインド政府側に説明し、理解を求めている」とコメント。インド政府が早期に日本人に対するビザ無効の措置を解除するよう、尽力する方針を示した。

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