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【タイ】新型肺炎で買いだめの動き[経済](2020/03/06)

タイの首都バンコクでは新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の感染拡大を懸念する消費者の間で、保存食品などを買いだめする動きが高まっている。背景には新型肺炎の感染が深刻な韓国から、多くのタイ人不法就労者が帰国することで、タイ国内の感染が一気に広まるとの警戒が高まっていることがある。買いだめの動きに対して、小売事業者などが十分な供給能力があることを強調し、消費者に冷静を保つよう呼びかけている。

即席めんなど一部の商品では新型肺炎の感染拡大を恐れる消費者による買いだめの動きがある=5日、タイ・バンコク(NNA撮影)

即席めんなど一部の商品では新型肺炎の感染拡大を恐れる消費者による買いだめの動きがある=5日、タイ・バンコク(NNA撮影)

スーパーマーケット「マックスバリュ」を展開するイオンのタイ法人イオンタイランドのマーケティング部門の担当者は5日、NNAに対し、マスクや消毒剤に加えて飲料水、即席めん、缶詰、ティッシュペーパーなどを買いだめする消費者が増えていると説明した。マスクや消毒剤については以前から品薄状態が続いていたが、食品やティッシュなどの需要が急速に高まったのは先週からだという。

バンコクポストによると、「トップスマーケット」「テスコ・ロータス」「ビッグC」「グルメ・マーケット」などバンコクの主要なスーパーでも、先週末から即席めんやパックライス、缶詰などの保存食のほか、ティッシュや飲料水の品薄状態が続いている。

「今までに見たことがない光景」と語るのは、グルメ・マーケットなどを運営するザ・モール・グループのチャイラット副社長(スーパーマーケット・マーチャンダイジング担当)だ。同氏は当初、2月末の給与日で一時的に販売が増えたと考えたが、売れ筋の商品が即席めんなどの保存食や飲料水に偏っていることに気づいたという。チャイラット氏は、新型肺炎が市民の消費行動に影響を及ぼしていると考えているが、当面、消費者の動きに注意を払う必要があるとした。

イオンタイランドの担当者およびチャイラット氏は、ともに保存食品の在庫は十分にあると強調。ザ・モール・グループが運営する小売店の場合、通常の商品在庫は15日分だが、現在は2倍の30日に増やして商品不足が生じないように準備している。

一方、生産サイドでは、消費財大手サハ・グループ傘下で「ママー」ブランドの即席めんを製造・販売するタイ・プレジデント・フーズの幹部が、同社の現在の工場稼働率は70~80%であり、供給能力には十分な余裕があると説明した。

商務省貿易政策・戦略事務局(TPSO)のピムチャノック事務局長も、5日に開いた会見で、買いだめの動きに言及。食品に関しては十分な供給能力があると強調し、国民に落ち着いた行動を呼びかけた。

■「すでに買いだめ」「デマにだまされるな」

消費者の間で新型肺炎問題の事態悪化の懸念が高まっている理由のひとつが、5日時点で感染者が6,000人に達するなど事態が深刻な韓国から、多くのタイ人不法就労者が帰国することだ。バンコクポストによると、韓国政府は、不法滞在する外国人に対して、2020年7月末までに自発的に帰国することを条件に、罰則を一切科さないと発表。これを受けて、昨年12月から今月1日までの間に、5,000人余りのタイ人不法就労者が帰国を申し出たという。現在、タイの市民の間では、韓国からの帰国者がタイ国内で新型肺炎の感染を一気に広めるのではという不安が高まっている。

客室乗務員のタイ人女性(27)は、NNAに対し、「はじめは新型肺炎について、それほど心配していなかったが、韓国から5,000人もの不法就労者が帰国すれば、事態は一気に悪化するかもしれない。今後のニュースに注目して、政府の取り組みが十分でないと判断したら、日用品を備蓄する必要があると思う」と話した。備蓄が必要な品目として、トイレットペーパーや衛生ナプキンを挙げた。

また、すでに即席めんや冷凍食品、缶詰、ティッシュ、飲料水などの備蓄を始めたというタイ人男性教師(25)は、「今の政府が事態を十分に収拾できるとは思えない。モノがなくなる前に確保しなければならないと考えた」と話した。

一方、タイ人大学生の女性(24)は、「国内の感染者が100人にも満たない現在はそれほど深刻な状況とは思っていない。消費者はデマにだまされてパニックになるべきではない」と強調した。

■韓国からの帰国者、17人が高熱

バンコクポストによると、政府は韓国から帰国するタイ人不法就労者について、帰国後14日間の隔離措置を取ることを決定した。特に感染者の多い大邱市および慶尚北道からの帰国者への監視を強化する方針だ。プラユット首相は、韓国での出国前検査で陰性だったタイ人のみを帰国させ、タイ到着後に直ちに指定施設に隔離する方針を表明した。

4日に韓国から帰国した不法就労者158人のうち、17人に高熱の症状がみられた。いずれも韓国出国前の検査では感染は確認されていなかったという。

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