【ベトナム】中国への貿易依存がリスクに[経済](2020/02/06)

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新型コロナウイルスの流行によるアジア経済へのマイナス影響は、2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を大幅に上回る見通しだ。ベトナムと中国の貿易総額は1,169億米ドル(約12兆8,000億円)を超え、輸出・輸入ともにベトナムにとって最大級の相手国。主要な輸出品の原材料の大部分を中国に依存しており、供給が滞る懸念もある。

ベトナムの製造業は中国から原材料を輸入する割合が大きく、今後の生産活動への影響が懸念される。写真はLG電子のベトナム工場=ハイフォン市(NNA=VNA)

ベトナムの製造業は中国から原材料を輸入する割合が大きく、今後の生産活動への影響が懸念される。写真はLG電子のベトナム工場=ハイフォン市(NNA=VNA)

日本総合研究所は4日、新型コロナウイルスがアジア景気に及ぼす影響について報告書を発表。SARSがアジアで流行した03年よりも、今回の方がアジア経済に対するマイナスのインパクトは大きいと予想している。ある統計によると、中国の国内総生産(GDP)が世界全体に占める割合は03年時点では4%だったが、現在では20%まで拡大した。中国から周辺国への旅行者が減少することに加え、中国国内の景気減速や、製造業の活動が停滞することで同国向け輸出が減少することは避けられない情勢だ。マイナス影響は、03年よりも大きく出るとみられる。

SARSは02年11月から03年8月にかけて感染者が8,422人、死者数は916人だった。新型コロナウイルスは1月下旬に流行が本格化してから、中国本土だけで感染者は2万人を超え、死者は425人となっている。

日本総研の副主任研究員、野木森稔氏によると、中国からの旅行サービス受け取りを対GDP比でみると、香港は18年が8.0%と03年の2.4%から大幅に拡大している。タイは03年が0.3%で18年は3.3%に、ベトナムは03年の1.3%が18年には2.0%にそれぞれ拡大した。中国・香港向けの輸出では、台湾が18年に23.4%と、03年の9.7%から大きく増えた。ベトナムは03年が5.7%だったのに対し、18年は17.8%に増えている。このほか、マレーシアも18年の中国・香港向け輸出は対GDP比14.8%と大きく、03年の11.3%から割合は増えている。

中国からの旅行者減が特に大きく影響しそうなのは香港とタイで、1~3月期の成長率を大きく引き下げる見通しという。野木森氏は「中国からの旅行者が半減すると仮定すると、香港の1~3月期のGDPを2.0%、タイは1.6%押し下げる」と予想(香港はデモによる下落分を除く)。前年同期比ではマイナス成長になる可能性もあるとしている。特に、香港は2年連続で年間のマイナス成長もありうる状況だ。

■青果・野菜輸出の65%は中国向け

ベトナムの19年の輸出額2,641億8,900万米ドルのうち、中国向けは15.7%にあたる414億1,400万米ドル。輸出の先行きに懸念が広がっているのは、農業の分野だ。「青果・野菜」の輸出額37億5,000万米ドルのうち、中国向けは24億3,000万米ドルと、64.8%を占める。地元紙によると、中国と国境を接するベトナム北部ランソン省では2日、農産物を載せた20トンのコンテナ333個が滞留。このうち190個は、ドラゴンフルーツを積んだコンテナだった。ドラゴンフルーツは南部を中心に、今月から収穫期を迎える。今月内にロンアン省で7万5,600トン、3月にはビントゥアン省で10万トン、ティエンザン省で1万トンの収穫が予定されている。中国向けには、水産物の輸出も大きく年間12億3,000万米ドルと全体の14.4%。このほかゴムは全体の67%を占めるなど、中国依存度が高い。

ベトナムはスマートフォン生産や繊維・アパレルといった主力産業の原材料の多くを、中国から輸入してきた。これらの供給が滞るようになると生産活動に響くことは確実で、規模が大きいことから原料調達の代替地を見つけるのは簡単ではない。主要産業に関わる輸入品のうち、中国からの輸入が大きい品目は「生地」(77億4,000万米ドル、同品目の輸入全体に占める割合58%)や「繊維・皮革・履物の原料」(24億6,000万米ドル、同42%)、「電子・電子部品」(121億1,400万米ドル、23.6%)、「電話・電話部品」(75億8,000万米ドル、52%)、「機械」(149億米ドル、40.5%)などだった。

■混乱終息後に生産移管の流れも

ベトナム縫製協会(VITAS)によると、中国の一部の地方では感染拡大を防ぐため、春節明け後もしばらくの期間、工場を閉鎖するよう指示しており、ベトナム企業にも影響が出始めている。VITASは、各企業に新型肺炎による生産への影響について報告を求めるとともに、中国に代わる原材料調達地の開拓に集中するよう要請した。また、感染の状況や中国との国境ゲートの閉鎖期間に関する情報の把握に努めるよう求めた。

今回のウイルス流行をきっかけに、世界の企業が中国にサプライチェーン(供給網)を集中させることにリスクの意識を強める可能性は高い。野木森氏は「工場での生産停止が一時的なものなのか、武漢市だけにとどまるものなのかなど、中国全土への影響は、現状では不透明」としたものの、「企業のリスク意識は強まっていくと思う」との見方を示す。ベトナムは中国に対する内需の依存度が高いので短期的にはマイナスの影響があるが、中長期的には状況が落ち着いた後で生産移管が進むプラスの影響が出る可能性もあるという。

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