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【台湾】政府が新型肺炎に8大経済策[経済](2020/02/03)

中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、台湾の蔡英文総統は1月30日、経済への影響緩和を目的とした8大措置を講じる計画を発表した。金融市場の安定、観光や小売業への支援を盛り込む。詳細な内容は政府の関係各部が今後取りまとめる方針。一方、中国経済の停滞などから、証券筋では新型肺炎の流行が台湾の今年の経済成長率を0.5%下げるとの悲観的な見方も出ている。

蔡英文総統は新型肺炎の経済への影響緩和を目的とした8大措置を講じる計画を発表した=1月30日、台北(中央通信社)

蔡英文総統は新型肺炎の経済への影響緩和を目的とした8大措置を講じる計画を発表した=1月30日、台北(中央通信社)

31日付経済日報などが伝えた。蔡総統は第一に株式・為替市場の安定を図る方針を表明。投資家の心理的不安が拡大することを防ぐ。中でも株式市場に関しては、財政部(財務省)の蘇建栄部長(財務相)が31日、国家金融安定基金(国安基金)から2,000億台湾元(約7,200億円)を支出し、相場を下支えする準備があると明らかにした。

株式市場では春節(旧正月)連休明け最初の取引となった30日に、新型肺炎による不安感から、売り注文が殺到。加権指数は5.75%下落し、単日の下げ幅としては過去最大を記録した。

蔡総統は運輸、観光、レジャーといった訪台中国人の減少による影響が懸念される産業に支援策を講じる。観光業については、交通部(交通省)が同日、中国の団体旅行者の訪台が取り消しになったことによる事業者の損失を一部補填(ほてん)するなどの措置を打ち出した。

市民が外出を自粛することによる影響が懸念される百貨店などの小売業に対しても、蔡総統は支援策を策定する考え。

経済部(経済産業省)には企業の生産ラインの整備、サプライチェーンの調整などを支援するよう要求。加えて、中国政府が当面の企業活動を禁じていることを機に、台湾企業の台湾での振り替え受注獲得を促す方針も示した。

さらに公共投資を加速させるほか、民間投資も促進し、景気を刺激する。企業の感染予防策を支援することや、行政院(内閣)に非常事態に備えた特別予算の編成を命じる考えも表明した。

台湾政府の関連予算の規模は明らかになっていないが、重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染が拡大した2003年には、対応策に計500億元の予算を計上している。

■国発会、GDP下落の可能性低い

ただ新型肺炎による中国経済の停滞が、台湾経済の成長鈍化につながるとの懸念はぬぐえない。

行政院国家発展委員会(国発会)は従来、中国の経済成長率が1ポイント下がれば、台湾も0.29ポイント下がるとの分析を示している。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、中国の今年の経済成長率が新型肺炎の影響により、1.2ポイント下がるとみており、これを踏まえると、台湾は0.3~0.4ポイントの落ち込みが予想される。

証券筋からは、「新型肺炎が台湾の今年の経済成長率を0.5ポイント下げる」との見方も出ている。

一方、国発会の鄭貞茂副主任委員は30日、証券筋の見解について「可能性は低い」と発言。世界経済が予想を大きく上回る悪化を見せ、政府が対策を講じないなどの限られた状況下でのみ、0.5ポイントの下落があり得るとの見解を示した。中国の工場停止を受けた台湾での振り替え受注の増加などが、好材料になると指摘した。

■大手EMSが業績下方修正

中国で事業を展開する台湾の大手企業では、業績予測を下方修正する動きが出てきている。

ノートパソコンを中心に手掛ける台湾のEMS(電子機器の受託製造サービス)大手、英業達(インベンテック)は今年第1四半期(1~3月)の売上高見通しを下方修正した。前四半期比10~15%減としていた減収幅を15~20%に引き下げた。

同業の緯創資通(ウィストロン)も同四半期はノートパソコン、デスクトップパソコン、モニターの出荷量が従来予想をさらに下回るとみている。

いずれも、中国の一部地方政府が感染拡大を防ぐため、2月9日まで企業活動を禁じていることが主な要因。

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