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【台湾】WBF、敦謙と提携で来夏にAIホテル[観光](2019/12/24)

ホテル運営などのWBFホールディングス(大阪市北区)は23日、ホテル運営管理システムなどを手掛ける台湾のベンチャー、敦謙国際智能酒店と提携すると発表した。WBFが大阪で運営する「ホテルWBF淀屋橋南」に、敦謙の自動チェックインシステムや人工知能(AI)ロボットなどを導入する。WBFはホテルオペレーションの簡素化で、小規模ホテルの運営採算の改善が見込めるとみており、他社への販売も視野に入れる。

調印式に臨むWBFの近藤雅之・経営企画室室長(左から2人目)と敦謙の呉秉庭CEO(左から3人目)=23日、台北(NNA撮影)

調印式に臨むWBFの近藤雅之・経営企画室室長(左から2人目)と敦謙の呉秉庭CEO(左から3人目)=23日、台北(NNA撮影)

WBFは、淀屋橋南店に敦謙の無人チェックインシステムと、それに連動した各部屋のシステム、エレベーターシステム、ルームサービスを行うAIロボットなどを導入する考え。敦謙の持つシステムを日本向けにアレンジする計画で、早ければ来年夏に導入が完成する予定。

WBFは現在、日本全国に計39軒のホテルを運営。WBFホールディングスの取締役で、経営企画室の近藤雅之室長は、淀屋橋南店に導入する背景について、「WBFは

1軒1軒差別化したホテル運営を志しているが、淀屋橋南はなかなか特徴あるコンテンツが作れなかった」と説明した。客室数は96室で、ロビーも狭く作り込みが難しかった。

そこで、敦謙との協業でスマートシステムの導入を図ると同時に、レストランスペースにAI体験コーナーを設けることで、AIに特化したホテルとして差別化できると考えた。

加えて、同社のホテルの中でも人件費率が高く、無人化を図ることでコストを抑えたい思惑もあるという。

近藤室長は、「客層のターゲットを変えるまでは考えていないが、ITが好きな人、AIに興味がある層、新しいものに興味がある人に選ばれるようなホテルにしたい」と力を込めた。

システム導入後の1泊当たり料金は平均8,000円になる予定。淀屋橋南店の売上高は、導入後1年で現在比15%増、稼働率は現在比5ポイント増の平均85%をそれぞれ目標とする。

■低コストが強み

敦謙が開発したルームサービスを行うAIロボット=23日、台北(NNA撮影)

敦謙が開発したルームサービスを行うAIロボット=23日、台北(NNA撮影)

日本では大手旅行会社エイチ・アイ・エス(HIS)が2015年に、ロボット接客で省人化を徹底した「変なホテル」の1号店を長崎県佐世保市のハウステンボスにオープンし、脚光を浴びた。

少子高齢化で労働力不足が深刻する中、海外からの観光客増加に伴いホテルの数も増え、ホテル各社が従業員の確保に苦労している。省人化が見込める変なホテルと同様のオペレーションシステムの導入は各社が望んでいることだが、あまり進んでいないのが現状との声も出されている。

近藤室長は、「変なホテルのような『ロボットホテル』に人気がないわけではないが、導入が進まない一番のネックはコストの高さ」と指摘する。チェックインシステムの導入1台に約500万円かかるといい、大規模なホテルでしか資金を投入できない。ただ、一般に大規模ホテルはきめ細やかサービスを売りにするところが多いため、ロボットのようなAIシステムの導入を必要としないという。

一方で、システムの導入で人件費を削減したい小規模ホテルには、導入資金が大きなネックだった。

WBFが今回、敦謙と組む理由の一つが開発コストの安さだ。敦謙のシステムを導入した台北市のホテルは客室数20室の小規模ホテルで、導入コストは約34万台湾元(約123万円)。近藤室長は、中小規模のホテルでも導入できる低コストが敦謙の強みだとみている。

近藤室長は、「淀屋橋南店で導入した結果を見て、WBFの他のホテルに展開するほか、日本のホテルにも同社のシステムの販売を検討していく」と述べた。敦謙と協力し、日本での事業展開を加速する考えだ。

■アジア展開も視野

敦謙は09年設立で、当初はホテル運営管理システムを手掛けていたが、15年に台中市にスマートシステムを導入した無人化ホテル「チェイスウオーカーホテル」を開設。現在独自のブランドホテルを計4軒展開している。19年の4軒の平均稼働率は88.6%。

高い稼働率を売りに、自社開発のホテルオペレーションシステムの販売を手掛けており、今年2月にはマレーシアの不動産開発大手エコ・ワールド・デベロップメント・グループが手掛けるホテル向けにシステムを納入した。

敦謙の呉秉庭・最高経営責任者(CEO)は今回のWBFとの提携について、「日本のオペレーションサービスと台湾のAI技術が組むことで、アジアへの展開も目指したい」と意気込んだ。

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