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【韓国】釜山国際映画祭、日本の映画人も多数参加[社会](2019/10/28)

韓国の釜山市で10月3日から10日間、第24回釜山国際映画祭が開かれた。日韓関係が改善の兆しを見せない中でも、日本からは例年どおり多くの映画人が招かれた。「政治的対立と文化交流は別」という映画祭の姿勢を改めて鮮明にした格好だ。(芳賀恵)

是枝裕和監督が「今年のアジア映画人賞」を受賞(映画祭事務局提供)

是枝裕和監督が「今年のアジア映画人賞」を受賞(映画祭事務局提供)

韓国ではこの夏、日本製品ボイコットの影響で日本のアニメーション映画の封切りが中止になったり、一部の映画祭で日本映画の上映を取りやめたりする動きがあった。しかし釜山映画祭は違った。スローガンに掲げる「すぐれたアジア映画の紹介と新たな才能の発掘」を貫き、今年も15本の日本映画を招待した。

3日、オープニングセレモニー後に上映された開幕作は日本とカザフスタンの合作『オルジャスの白い馬』。竹葉リサ監督、主演の森山未來が登壇した。今年の上映作のうち実に三分の一が複数の国家・地域がクレジットされる国際合作。映画産業のグローバル化が進んでいることが感じられた。

5日には是枝裕和監督が「今年のアジア映画人賞」を受賞した。是枝監督は今回、日仏合作の新作『真実』が、メインプログラムのガラ・ブレゼンテーション部門でアジア初上映。同日の記者会見で日韓関係の悪化について問われると、監督は「政治が困難に直面してできない連帯を、映画と映画人がより豊かにより深く示すことで、逆にこういう形で連帯できるということを見せていくことが大事」と文化交流の重要性を訴えた。

是枝監督の言葉を体現する日本の映画人の行動も見られた。7日、メイン会場の「映画の殿堂」前で<WE LOVE KOREA>と書かれたメッセージカードを掲げたのは、日本から参加した有志たち。映画プロデューサーの植山英美さんの呼びかけで集まり、韓国愛・韓国映画愛をアピールした。

「WE LOVE KOREA」のカードを掲げる日本の映画人有志。中央前列が植山さん。(植山英美さん提供)

「WE LOVE KOREA」のカードを掲げる日本の映画人有志。中央前列が植山さん。(植山英美さん提供)

◆小樽ロケの韓国映画も

閉幕作は、北海道小樽市が舞台の韓国映画『満月』(日本題)。新鋭イム・デヒョン監督がベテラン女優キム・ヒエを主演に迎えた叙情的な作品だ。日本からは中村優子と木野花が出演。合作ではないものの小樽ロケのシーンが多く、スタッフにも多くの日本人が加わっている。

釜山で会見に臨んだ中村優子は「最初に脚本を読んだとき、人間に対する誠実な眼差しに心を打たれた。この優しい物語の一部になりたいと強く思い、恋をするように読んだ」と語った。スクリーンの中では日韓のキャストと風景が融け合い、さまざまな境界を超えた愛のかたちを描き出す。韓国では『ユニへ』のタイトルで11月14日に劇場公開予定。

閉幕作『満月』の監督とキャスト(左から2人目:イム・デヒョン監督、左から3人目:キム・ヒエ、左から4人目:中村優子)(撮影:芳賀)

閉幕作『満月』の監督とキャスト(左から2人目:イム・デヒョン監督、左から3人目:キム・ヒエ、左から4人目:中村優子)(撮影:芳賀)

◆労働時間短縮の余波も

今年は18万9,000人が会場を訪れ映画やイベントを楽しんだ。映画祭発祥の南浦洞地区にも会場が復活し、多くのファンで賑わった。

ただ、今後に向けた課題もある。イ・ヨングァン理事長は12日の記者会見で「予算が11年間凍結され、新たな挑戦に限界がある」と苦しい台所事情を明かした。実際、今年は写真・解説入りの大型カタログが発行されず、祭りに華を添えるスターの姿が例年より少ないなど、小さな変化が感じられた。

「韓国版働き方改革」(労働時間の上限が週52時間に短縮)の影響もあった。例年は1スクリーン当たり1日4プログラムを上映していたが、今年は午前中の上映がない会場が目立った。長時間労働の問題が解決に向かうことに異論はないが、映画祭のような短期間のイベントでは柔軟に対応してもいいのではないかという疑問も残った。

閉幕作『満月』作品スチール(映画祭事務局提供)

閉幕作『満月』作品スチール(映画祭事務局提供)

筆者プロフィル

芳賀恵:北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院学術研究員。90年代前半に韓国映画に魅了され02年にソウルに留学。その後、NNA韓国法人・編集長を経て07年に帰国。現在は、韓国映画のライター、翻訳・通訳を手掛け、北海道を拠点に活躍を続けている。

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