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【インド】トヨタ中古店で「新車」販売[車両](2019/02/22)

豊田通商100%出資のスリランカ現地法人、トヨタ・ランカが認定中古車販売店「トヨタ・シュア」で昨年11月から、事実上の新車である登録済み未使用車(新古車)を販売している。乗用車生産がない同国では、日本製新古車の人気が高い。専門家によると、日本の新車販売店(ディーラー)の間でも販路としてスリランカへの関心が高まっているようだ。

中古車のトヨタ・シュア店舗。日本国内限定仕様である「ヴィッツ」の旗もあった=1月下旬、コロンボ近郊(NNA撮影)

中古車のトヨタ・シュア店舗。日本国内限定仕様である「ヴィッツ」の旗もあった=1月下旬、コロンボ近郊(NNA撮影)

「これは実際には新車です」。コロンボ近郊にあるトヨタ・シュアの店員が、トヨタ自動車のセダン「プレミオ」の新古車を前に話す。「日本では書類上、中古車として登録されただけで、走行距離は0マイルに近い」と説明する。トヨタ・ランカのディーラーと同様にアフターサービス保証も付く。プレミオは日本では約230万円だが、トヨタ・シュアでは895万スリランカルピー(約550万円)で販売。ただ、20万ルピーは値引きできるという。並行輸入業者よりも1割高い価格設定だ。日本国内限定仕様のハッチバック「ヴィッツ」の新古車も販売している。プレミオもヴィッツも、スリランカでは人気の車種だ。トヨタ・ランカは新古車販売の理由や入手元は明らかにしていない。

トヨタ・シュアから約100メートル離れた場所には、トヨタ・ランカのディーラーがあり、ヴィッツの海外仕様版である「ヤリス」のセダンバージョンが展示されていた。ヤリスのハッチバックは扱っておらず、販売はトヨタ・シュアとすみ分けられていた。

人口2,100万人のスリランカは2009年に26年間続いていた内戦が終結。1人当たり国内総生産(GDP)は3,835米ドル(約42万円)とモータリゼーションが進む経済水準にある。セイロン・モーター・トレーダーズ協会(CMTA)のデータをまとめた自動車調査会社フォーイン(FOURIN)の調べによると、18年のスリランカ新車市場は前年比0.8%減の2万7,541台なのに対し、日本製を中心とした輸入中古車市場は101.5%増の7万5,558台と急伸。総市場は10万台を超え、新古車を含む中古車の比率が高い。スリランカはシンガポールと並んで「新古車の楽園」として日本の業界からも注目されている。

■日本の稼働を下支え

地場の自動車輸入業者のヤードに行くと、日本のトヨタ・ディーラーのステッカーが付けられたプレミオの新古車があった。走行距離を確認するとわずか18キロ。この業者は「販売の4割を新古車が占める」と語った。新古車に限らず、日本ブランド車では日本製が人気で、「スリランカ人はタイ製など海外生産車は買わない」と話す。

新古車は、ディーラーの展示車両や試乗車のほか、販売目標を達成させたいディーラーが、自社で新車登録をして、販売実績にカウントすることで発生する。日本国内のあるトヨタ・ディーラーは、「海外への転売はメーカーの指導で禁じられている。ペナルティーまであるぐらいなので、売り先は厳しくチェックし転売を防いでいる」とコメントした。

一方、ある中古車輸出業者はNNAに対し、「決算期末になると、とんでもないロットで(ディーラーから転売された)新古車を購入しないか、とのオファーが業者からくる」と話し、ディーラーもメーカーも新古車輸出を事実上黙認している、との見方だ。在庫が多い車種が輸出に回ることで、日本国内の下取り相場も上昇し、新車も売れる好循環が生まれると指摘。結果的に日本の工場やディーラーの稼働を下支えすることになる。

■日本の市場縮小・統合も背景に

日本国内ディーラーへのアドバイザリー業務を手掛ける専門家は、ディーラーは生き残りをかけ、海外への新古車販売に関心を示していると明かす。日本の新車市場が人口減や自動車を他人と共同利用するカーシェアで縮小が見込まれる中、トヨタは東京都内でトヨペットなど4つある販売チャンネルを統合し、将来は全国にも広げる計画だ。同専門家は「(地元企業が経営する各地の)ディーラーはこの動きに危機感を募らせている」と指摘。エリアを超えた販売をしないという紳士協定がある以上、新古車輸出や下取りした中古車の輸出に関心が向かうのは必然だと示唆する。(遠藤堂太)

<メモ>

■スリランカ自動車市場

スリランカは日本と同じ左側走行、右ハンドル車なので日本製車両が流通しやすい。車齢3年を超える中古乗用車の輸入は禁止。登録車両の8割は日本ブランドと言われる。

スリランカの車両輸入税では新車と中古車の税率は同一。17年に従価税を廃止し、排気量別に統一し、小型車を実質減税にした。その結果、18年は日本からの中古車輸入が急増。ただし、政府の購入規制が始まり、第4四半期(10~12月)は急減している。

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