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【フィリピン】19年の経済は上向き、JCCセミナーで解説[経済](2018/12/18)

フィリピン日本人商工会議所(JCCIPI)は17日、マニラ首都圏マカティ市で「フィリピン政治・経済動向セミナー」を開催した。5月に実施される中間選挙や米中関係も含めた来年の注目点について、日系企業の関係者約200人が耳を傾けた。

デロイトの梅林氏は、フィリピンの2019年の展望を示した=17日、首都圏マカティ市(NNA撮影)

デロイトの梅林氏は、フィリピンの2019年の展望を示した=17日、首都圏マカティ市(NNA撮影)

最初に登壇したデロイト・トーマツ・コンサルティングの祖父江謙介シニアマネジャーは、ドゥテルテ大統領の政権運営について「国益の向上をシンプルかつ実直に実施している」と解説した。暴言で知られるドゥテルテ大統領だが、「手腕は確かだ」と見ている。

今年は政権3年目を迎えた。年初に実現させた税制改革法(TRAIN)など一部では痛みを伴う政策も断行、物価上昇などで経済が「踊り場」となる場面もあった。しかし、祖父江氏は「中長期的にみるとフィリピン経済は良い方向に向かっている」と評価した。

同社の梅林光紘シニアマネジャーも、フィリピン経済について「18年はTRAINと物価上昇で民間消費の伸びが鈍化した」と語った。政府がインフラ投資を拡大させる中、必要な歳入を確保できず経常収支は悪化。それがペソ安を招き、輸入への依存度が高いフィリピンのインフレにつながったと説明した。自動車物品税などの上昇で、今年は新車販売に急ブレーキがかかる異常事態にもなった。

しかし、梅林氏は「19年は経済が上向く」と楽観論を展開。物価上昇率が抑制され、個人消費が回復するため、国内総生産(GDP)成長率は、18年を上回る伸びを記録すると予想した。

一部企業への優遇税制の縮小が盛り込まれた包括的税制改革(CTRP)第2弾については、「(政府案に対して)上院がかなりの反発を見せている」と指摘。電子産業などで優遇を受けている日系企業も多いが、「良い方向に進む可能性も大いにある」と語った。フィリピン経済区庁(PEZA)登録企業など、優遇縮小となる企業の雇用への影響が大きな論点となっている状況だという。

フィリピンの大統領の任期は6年間で、来年半ばにドゥテルテ政権が折り返し地点を迎え、5月には中間選挙が行われる。ドゥテルテ大統領は国民の支持率が高く、政権に好意的な議員も増えているといい、梅林氏は「政権運営に大きな不安要素はない」と話した。

法人税に関するCTRP第2弾の行方には、日系企業も注目している。JCCIPIの藤井信夫副会頭はNNAに対し、「CTRP第2弾が動くのは、来年8月以降だ」と指摘した。議員の顔ぶれが変わり、大統領による7月末の施政方針演説(SONA)後の議会で議論が進められていくとの見通しを示した。

セミナーには、日系企業の関係者約200人が参加した=17日、首都圏マカティ市(NNA撮影)

セミナーには、日系企業の関係者約200人が参加した=17日、首都圏マカティ市(NNA撮影)

■中国の太平洋進出の要衝に

梅林氏は、中国の太平洋進出においてフィリピンが重要な位置にあるとも指摘した。南シナ海問題を棚上げして中国と接近したとも見られるドゥテルテ政権だが、今後の米中関係に注目すべきと主張した。

同氏は、中国が20年までに、小笠原諸島やグアムを内側に含む領海線「第2列島線」を構築しようとしていると説明。フィリピンは、台湾などを内側に含む「第1列島線」と第2列島線に挟まれる位置にあり、フィリピンが親中国に傾斜するかどうかが、領有権問題を左右するという。

梅林氏は「フィリピンは来年、米国に接近して『バランス外交』に移行するだろう」との見通しを示した。中国からのインフラ投資などは「約束」段階であり、完全に親中国なのではなく、国益を考えた結果との見方を示した。

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