企業の人事をテクノロジーが担う──いま注目の「HRテック」とは?《後編》

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ここ近年、フィンテック(金融×テクノロジー)やエドテック(教育×テクノロジー)など、既存の産業領域と先端技術を融合させた「テック」サービスが次々と登場している。

そのひとつとして、いま国内外の企業から注目されているのが、人事・労務関連の業務を担う「HRテック(ヒューマンリソース×テクノロジー)」と呼ばれるサービス分野だ。
前回の《いま注目のHRテックとは?前編》では、アメリカと日本の企業におけるHRテック導入の動きや、開発企業が提供するさまざまなサービス事例を紹介した。続いて《後編》では、HRテックの導入メリットや日本における普及の背景、今後の動向について見ていくことにしよう。

HRテック導入の3大メリットとは?

アメリカを中心とする海外市場の拡大を受け、ここ1~2年の間に日本でも一気に普及したHRテックだが、具体的にどのような導入メリットがあるのだろうか。とくに注目されるポイントは以下の3点だ。

【1】人事・労務業務の効率化・コスト削減
書類が多く煩雑だった人事・労務業務のデータ化や、社員がクラウドを介してシステムを共通利用することで、業務にかかる手間・人件費の削減やペーパーレス化が可能になる。また、人材分析にAIなどのテクノロジーを活用し、従業員の離職予兆を見つけてフォローアップすることで、結果的に人材採用費などのコスト削減にもつながる。

【2】従業員の満足度・モチベーションの向上
同じく、AIなどを活用した人材分析によって、従業員のエンゲージメント(会社に対する愛着心や業務意欲など)を可視化。マイナスとなっている要素を改善することで、従業員の満足度・モチベーションを向上させ、離職防止やメンタルヘルス、社内の活性化やコミュニケーションの円滑化などにつなげることができる。

【3】人材マネジメント力の向上
従業員情報の一元管理・分析によって、企業で抱える人材がどのようなスキル・能力を持っているのかを正確に把握。従業員一人ひとりの適性に応じたマネジメントにより、アンマッチな配置・異動などを見直すとともに、各人のパフォーマンスを最大限に発揮させるための戦略的な人材配置・教育も可能になる。

日本国内におけるHRテック普及の背景

ただ、10年以上前からHRテックの導入・開発が進むアメリカと比べると、日本国内のHRテック事情はかなり後れを取っていたといえるだろう。新卒一括採用・終身雇用・年功序列という「雇用慣行」が根づいた日本では、昇進や異動、給与や待遇面などもほぼ定型化されていたため、従業員一人ひとりの正確な能力の把握や人材分析を行わなくても人事管理に対応できたからだ。

しかし、近年になって日本でも人材の流動性が高まる中、企業としてはいかに優秀な人材を確保し続け、活躍してもらうかが最重要課題となりつつある。今後、人口減・高齢化社会がさらに進行すれば、成長性のある若い戦力の獲得も難しくなるだろう。
また、日本企業の海外進出やM&Aの増加、働き方改革の浸透などにともない、労働力やワークスタイルの多様化・グローバル化も加速している。

こうして、日本企業を取り巻く雇用環境や社会背景が大きく変化し、企業の競争優位における人材への比重が高まる中で、グローバルな評価基準の策定など、公正かつ合理的な根拠に基づいた人事管理が求められる時代になった。
加えて、働き方改革による企業ブランドの向上や、ダイバーシティ推進への取り組みなども、現代の企業経営においてますます重要性を増している。

そこで、従来のブラックボックス化した慣行人事を、テクノロジーの活用で見える化。多様なバックグラウンドをもつ優秀な人材を見極め、適切な配置と雇用形態によって組織にイノベーションを起こすツールとして、HRテックへの期待が国内で一気に高まってきたのだ。

HRテックを導入する際のマストポイント

今後、HRテックは人材雇用や組織のあり方を大きく変えるツールとして、日本でもさらに浸透・拡大していくことは確実だろう。国内での需要の高まりとともに、HRテックシステムを開発するスタートアップやITベンチャーも年々増加しており、より進化した多種多様なテックサービスが登場することも予想される。

とはいえ、どれほど進化したHRテックシステムを導入しても、十分に活用しきれなければ意味がない。
自社にとって最適なサービスを選択するためには、人事戦略の中でHRテックをどう位置づけるのか、誰が責任を持って運用するのかを明確にすること。そして、自社の事業環境やビジネスモデル、組織づくりを大局的な視点でとらえ、競争優位を図るための長期的な人材戦略を考えていくことがマストとなる。

たとえば……
「事業成長のために、どのような企業風土を築いていくか?」
「どの部門に注力して人材を強化し(どの部門のムダを省き)、生産性を上げていくか?」
「定型業務においてアウトソーシングできる部分と、内製すべき部分はどこか?」
……など、各企業の経営者や人事担当は、自社の課題とロードマップをしっかりと検討したうえで、より有益なサービスを見極める必要があるのだ。

これからの人事担当に求められるスキル

HRテックは単なるテクノロジートレンドではなく、新たな雇用や働き方、組織づくりを通して、企業活動の原動力となる「ヒト」を支えることが本来の目的である。テクノロジーの力で人事データを一元管理・分析することは、業務効率化や人材評価などに役立つことは間違いないが、それをどう生かしていくかは最終的に人間の判断にゆだねられる。
ここで不適切な判断を下したり、分析データの運用に不備があったりすれば、従業員からの反感・不信感や、現場での混乱を招くことにもなりかねない。采配を振るう人事担当としては、今まで以上に重責を担うことになるのだ。

これからの時代、人事担当は「ヒトと組織のスペシャリスト」として、より効果的・効率的な組織づくりと、事業成長に寄与することが求められるようになるだろう。そのための戦略的な経営視点やスキルに加え、事業貢献に対する要求水準も高まりつつある。
そうした中で、人事担当はいかに単純業務のオペレーションを効率化し、より戦略的・創造的な業務へ注力する時間を創出して、結果につなげていくかが使命となるのだ。

──こうしてHRテックが国内に広まったことで、いま「日本の人事」は大きな変革を遂げようとしている。今後、各企業はHRテックをいかに活用し、経営に寄与できる人事部門を築いていくかが、事業成長の新たなカギとなることは間違いないだろう。

≪記事作成ライター:菱沼真理奈≫  
20年以上にわたり、企業・商品広告のコピーや、女性誌・ビジネス誌・各種サイトなどの記事を執筆。長年の取材・ライティング経験から、金融・教育・社会経済・医療介護・グルメ・カルチャー・ファッション関連まで、幅広くオールマイティに対応。 好きな言葉は「ありがとう」。

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