フリーランスの強い味方として注目。「バーチャルオフィス」ってなんだ?
フリーランスとして仕事を始めた際や、起業して組織を立ち上げようとするとき、真っ先に考えなくてはいけないことは事務所をどうするかです。女性の一人暮らしだったりすれば、自分の家の住所を公表するのは不安だし、かといって一等地に事務所用の部屋を借りるのは家賃が気になります。
そんなフリーランス・ワーカーの悩みに答える新しいビジネスとして注目を集めているのが「バーチャルオフィス」です。自分一人しかいないから事務所を借りるまでもありませんが、公に事務所としての住所は欲しいもの。また、仕事は自宅でもできますが、取引先と打ち合わせできる場所が欲しい……。そんなフリーランスの要望をかなえてくれるのがこのサービスというわけです。今回は、「バーチャルオフィス」とはいったいどんなものなのかを調べてみました。
事務所スペースのないバーチャルオフィスとは?
「バーチャルオフィス」とは、事業をするときに必要になる事務所の住所、専用の電話番号などの情報だけをレンタルできるサービスのこと。ただし、実際に業務できる実在の事務所スペースはありません。まさに“架空の事務所”というわけです。
似たようなサービスとして、シェアオフィスやレンタルオフィスなどもよく聞きます。しかし、こちらは作業できる実スペースが存在するサービス。これに対してバーチャルオフィスは、実スペースは存在しません。
つまり、高額な家賃を支払うことなく、自宅とは違う住所に郵便物が届き、電話番号が設定できるサービスなのです。もちろん、郵便物も電話も転送してくれるので問題はありません。
バーチャルオフィスは、作業自体は自分の家でできますが、名刺には自宅とは別の連絡先を載せたいというような人に向いているサービスと言えます。
しかも、事務所の住所を都心の一等地にすることもできるわけで、新規に立ち上げた事業であってもそれなりの信用を得ることもできます。
取引先との打ち合わせが必要な時は、貸会議室スペースを借りることもできるオプションのあるサービス会社もあります。
ちなみに、バーチャルオフィスにかかる費用は、毎月数千円〜1万円程度が相場となっています。
バーチャルオフィスのメリットは?
バーチャルオフィスのメリットはどんなところにあるのでしょうか。メリットをいくつかのポイントにわけてみましょう。
1.事務所を借りる費用を安く抑えることができる。
事務所家賃にかかる費用を節約できるため、事業設立にかかる初期投資を安く抑えることができます。加えて、毎月の事務所家賃、事務所にかかる水道光熱費、電話料金などをゼロに抑えることができるわけで、月々のランニングコストを大幅に下げることができます。
2.顧客や取引先に対しての信用を得られやすい。
バーチャルオフィスであれば、名刺に都心の一等地に事務所を記載することができ、新規取引を始める場合に信用・信頼性を演出することができます。最近はGoogleストリートビューなどで会社の所在地を検索する人も増えており、そのような場合でも、立派なビルが映し出されようになるわけです。
3.個人情報の保護やセキュリティ面で役立つ。
個人情報保護が盛んに叫ばれている現代、自宅と事務所が同一の住所・電話番号では、大いに不安が生じます。万が一、業務上のクレーム事案などが生じた場合、自宅に怒鳴り込まれるといった心配もありません。
特に女性の一人暮らしではなおさらのこと。ストーカー被害の予防にもなります。バーチャルオフィスを利用すれば自宅の住所が公表されることはないので、安心して事業に取り組むことができます。
バーチャルオフィスのデメリットは?
では、気になるバーチャルオフィスのデメリットについて考えてみましょう。
1.法人認可などの住所として利用できない場合がある。
バーチャルオフィスの住所だと、法人登記に活用できなかったり、銀行などの金融機関に法人名で口座が開設できなかったりする場合があります。これらは事前にしっかりとリサーチしてから利用するようにしなければなりません。
2.郵便物の転送に時間がかかる。
バーチャルオフィスの連絡先にかかる電話やFAXは、瞬時に自身の携帯電話や自宅のFAXなどに転送されますが、郵便物はいったんバーチャルオフィスの住所に届けられてから指定の住所に転送されるため、手元に届くまでに時間がかかります。急を要する郵便物を受け取りたい時には不便です。
3.顧客などを事務所に受け入れにくい。
バーチャルオフィスは、事務所としての実スペースが存在しないので、取引先や顧客を事務所に呼んで商談や打ち合わせを行うことができません。そのためには別途貸会議室などを借りる手間がかかります。そのようなオプションを持っているサービス会社も多くあります。
4.他の利用者と住所が重複する。
バーチャルオフィスは、一人(社)に一つの住所があてがわれるわけではないので、他の利用者と住所が重複するケースがあります。これにより、住所で検索すると自分とは別の会社がヒットする可能性も高くなるわけです。
また、バーチャルオフィスが特殊詐欺グループの拠点として使われ、同じ住所が犯罪に利用されることもあると言われます。このようなことになると、会社としての信用が失墜することにもつながりかねません。
きちんとしたサービス会社を選ぶことが大切
年々、利用者が増加しているというバーチャルオフィス。それを提供するサービス会社も右肩上がりで増加していますが、数が増えてくればそれに伴って増えるのは悪質なサービス会社です。
とにかく安さを売りものにし、利用者の審査もゆるいサービス会社は、デメリットの例にも挙げた犯罪の温床にもなりかねません。そのようなバーチャルオフィスを利用して信用を落としたとしても、その責任は自身に返ってくるのです。
──まずはしっかりとリサーチし、自分のニーズに合った確かなサービス会社を探し出すことが何より大切。そのうえで事業が軌道に乗ったら、きちんと実スペースの事務所を開業することをお勧めします。バーチャルオフィスは、あくまで起業初期に利用すべき一時的な事務所である……そうとらえておいて間違いはないでしょう。
≪記事作成ライター:三浦靖史≫
フリーライター・編集者。プロゴルフツアー、高校野球などのスポーツをはじめ、医療・健康、歴史、観光、時事問題など、幅広いジャンルで取材・執筆活動を展開。好物はジャズ、ウクレレ、落語、自転車。