話題のSDGsとは?私たちにどうかかわるの?〈第2回〉
「SDGs(エスディージーズ)とは何か?」の第1回ではSDGsの概要について説明しました。
SDGsとは世界全体で取り組むべき17のゴールと169のターゲットから構成される持続可能な開発目標で、2030年での達成を目指しています。
持続可能な開発とは、未来を犠牲にすることなく現在の要求を満たす開発のこと。目標といっても法律で定めるような厳格なものではなく、未来像とでもいうべき長期的な方向性が示されているのが特徴です。
今回は、政府や地方自治体がこの目標に沿って何をしようとしているのか、また企業や私たち個人は具体的に何ができるのかを見ていきましょう。
政府はどんな取組みを行っているか
各国の政府はSDGsに基づいてさまざまな計画を作成しています。先行する国々のなかにはSDGsを遂行するために国家予算を投入しているところもあり、SDGsを軸として国の開発計画や発展計画を作っている発展途上国さえあります。
わが国においては、2016年5月に内閣総理大臣を長とするSDGs推進本部を設置し、直後のG7伊勢志摩サミットでは、国連でのSDGs採択後初のサミットでの議長国として、リーダーシップを示しました。
その内容は……
【1】 難民・避難民への支援
【2】 保険分野の支援
【3】 女性の活躍推進、などです。
同年12月には「SDGs実施指針」を策定し、8つの優先課題と具体的施策を定めています。
さらに、2017年7月には「第1回自発的国家レビュー」を実施し、閣僚級が集まった国連ハイレベル政治フォーラム(サブ画像1)で発表しました。同年12月には「SDGsアクションプラン2018」を公表、第1回「ジャパンSDGsアワード」の開催により、官民によるSDGsの主要な取組みを発信しています。
そして、2019年の夏には「SDGs実施指針」の第1回フォローアップを行い、冬には「SDGs実施指針」の改定を予定。日本のSDGsモデルを世界に発信して、2030年までのSDGs達成を目指します。
持続可能な社会を地域から
SDGsは国連で決まったグローバルな目標であることから、自治体や企業の活動に正当性を与えることができるという側面があります。都道府県や市区町村は今、まさに地域の力を高めようと努めているさなかです。地方自治体はSDGsにどう戦略的に取組もうとしているのでしょうか。
2019年1月30日に横浜市で開かれた「SDGs全国フォーラム2019」では、93の自治体が集まって「SDGs日本モデル」を宣言しました。地域で住民の連携を進め、課題の解決を目指していこうという取り組みです。
このときに宣言された「日本モデル」は次の通りです。
SDGs日本モデル宣言(要旨)
1. 自治体間の連携を進めるとともに、地域における官民連携によるパートナーシップを主導し、地域に活力と豊かさを創出します。
2. 社会的投資の拡大など、ビジネスの力を積極的に活用し、地域が直面する課題解決に取組みます。
3. 次世代との対話やジェンダー平等の実現などによって、住民が主役となるSDGsの推進を目指します。
SDGsアワードに見る企業の取組み
2017年6月の第3回SDGs推進本部において、持続可能な開発目標の達成に向けた企業・団体等の取組みを促し、オールジャパンの取組みを推進するために、「ジャパンSDGsアワード」が創設されました。SDGs達成に資する優れた取組みを行っている企業・団体等を、SDGs推進本部として表彰するもので、NGO・NPO、有識者、民間セクター、国際機関等の広範な関係者が集まるSDGs推進円卓会議構成員からなる選考委員会の意見を踏まえて決定されます。
アワードの第1回目は2017年で、課題先進地域(高齢化率約39%の小規模過疎地域かつ少子高齢化が顕著な地域)である「北海道下川町」が本部長(内閣総理大臣)賞を受賞しました。
2018年12月21日には総理大臣官邸で第2回ジャパンSDGsアワード表彰式が開催されました。この回の特徴は民間企業の躍進です。
「株式会社日本フードエコロジーセンター」が廃棄物処理業と飼料製造業の2つの側面を持つ新たなビジネスモデルを実現し、食品ロスに新たな価値を生んだことが評価され、民間企業として初めて本部長賞を受賞しました。
また、障がい者や引きこもり、障がいを持つ子どもの親など、未経験者でも積極的に働けることを重視し、多様な人々が働けるチョコレートブランド「久遠(クオン)チョコレート」を全国展開する「一般社団法人ラ・バルカグループ」など6団体が副本部長(内閣総理大臣及び外務大臣)賞を受賞しました。
安倍晋三首相は授賞式のスピーチにおいて、「本アワードを契機として、受賞団体同士をはじめ、多様なアクターがパートナーシップを組んで、知恵と行動を寄せ合い、SDGsをより一層推進していただくことを期待します」という言葉で締めくくっています。
今後は、企業によるSDGsへの取組みがさらに注目されることでしょう。
SDGsにおいて、個人がやれることは何?
ここまで、政府、自治体、企業の取組みを紹介してきましたが、SDGsでは私たち一人ひとりが個人として目標に向かってさまざまなアクションを起こし、いろいろな取組みを行う人と人が結びつきあえる、ということが最大の特徴であり、重要なことです。
例えば、皆さんはすでに日常生活において、電気を使わないときには消したり、白熱電球をLEDに取り換えたりして、環境のためになる行動を始めているのではないでしょうか。
図表を見ていただくとわかる通り、以下の条件で白熱電球をLEDに換えた場合、1年間では3462円もの差が出ます。このような行動は直接的には経済的ベネフィット、つまりは電気代の節約から生じていますが、省電力であるLEDを使うことでCO2を削減することができるため、結果として地球温暖化防止に貢献していることになります。
さらに、地球環境保全のためだけではなく、この一つのアクションによって発展途上国が使うための資源が増えるなど、さまざまな意味で世界とつながることにもなります。身近な環境問題を考えて行動することで世界につながっているのがまさしくSDGsなのです。
この他にも高齢者や赤ちゃんを抱いた人に電車やバスで席を譲る、といった親切な行いが、老人や子どもを持つ人の元気や活力に繋がっていき、ひいては社会全体が活気づくことで、長期的に持続可能な世界にしていくことができるようになります。
SDGsの17のゴールの中にはこのようなヒントがたくさん書かれています。個人で考え、アクションをとることが実はグローバルに繋がっていると考えることは楽しく、とてもやりがいのあることではないでしょうか。
── 個人で実行することはとても重要であり、また、人と人をつないで大きなうねりを生み出し、やがて世界を変革していくことがSDGsの目指しているところでもあります。
いまや世界的な人気を集めるシンガーソングライターとなったピコ太郎氏も2017年にSDGs動画を作成し、国連を訪れています。SDGsを広めることに貢献したとも言える動画をぜひチェックしてみてください。
次回以降はSDGsの17のゴールを一つずつひも解き、さらに詳しく解説します。
〈参考URL〉
国際連合広報センター
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/
ピコ太郎氏YouTube「SDGs」 https://www.youtube.com/watch?v=H5l9RHeATl0
≪記事作成ライター:山本義彦≫
東京在住。航空会社を定年退職後、介護福祉士の資格を取得。現在は社会福祉法人にて障がい者支援に携わる傍ら、30年に及ぶクラシック音楽の評論に加え、社会問題に関する執筆を行う。