“平成ラストイヤー”に周年記念を迎える企業、全国でなんと14万社超!
2019年は“平成ラストイヤー”。
平成31年は4月30日で幕を閉じることとなり、5月1日より新たな元号が施行される。
何かと低成長だった平成時代だが、情報通信産業を中心とした三次産業は、大きな成長を遂げたと言っていいだろう。
その平成最後の年は、平成元年に創業した企業が30周年の節目を迎えることになる。改元の慶祝ムードに加え、キリのいい周年記念で祝賀気分もより一層高まることになる。そしてその祝賀気分は、業績の向上や株価の上昇につながっていくはずだ。
そこで今回は、2019年に10、30、50、100、150、200周年など、節目の年を迎える主な企業を紹介する。同時に創業した時代背景も振り返り、これから長寿企業として生き残っていくための要因を探ってみよう。
平成元年創業で30周年を迎えるのは2万9593社
2019年に創業から節目の年を迎える企業(個人経営、特殊法人含む)については、帝国データバンクが、企業概要データベース「COSMOS2」(2018年10月時点、約147万社収録)において、創業年以降10年刻み(200周年以上は50年刻み)で抽出し、集計したものだ。
それによると、2019年に節目の年を迎える企業は全国に14万1550社。このうち、1989年(昭和64年/平成元年)に創業し、創業30周年を迎える企業は2万9593社で、周年記念企業の中で最多となっている。
100周年企業は1919年(大正8年)創業の企業で、全国に1686社あった。また、節目の年を迎える上場企業は全部で421社と判明している。
では早速、周年ごとに主な企業を紹介し、創業の年の主な出来事も紹介しよう。
2019年に創業10〜100周年を迎える主な企業
●10周年 2009年(平成21年)創業
ラクスル……インターネットによる印刷・広告のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」や物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」を運営。
⇨ その他の主な10周年企業……SMBC日興証券、産業革新投資機構など。
⇨ 2009年の主な出来事……マイケル・ジャクソン死去、ファストファッション流行、トヨタ・プリウスがヒットなど。
●20周年 1999年(平成11年)創業
ディー・エヌ・エー……ゲームコンテンツの開発・配信からスタートし、SNS運営や電子商取引サービスなども行う。プロ野球球団も傘下に収めた。
⇨ その他の20周年企業……DMM.com、ゴルフパートナーなど。
⇨ 1999年の主な出来事……地域振興券発行、犬型ロボット「AIBO」がヒット、「ヤマンバ」「リベンジ」が流行語に。
●30周年 1989年(昭和64年/平成元年)創業
イーグランド……首都圏を中心に中古マンション再生、リノベーション、 リフォーム済みマンションの販売などを展開する。
⇨ その他の主な30周年企業……カインズ、スーパーホテルなど。
⇨ 1989年の主な出来事……消費税3%施行、ソウルオリンピック開催、岩戸景気に迫る好景気など。
●70周年 1949年(昭和24年)創業
デンソー……自動車部品世界シェア第1位を維持する自動車部品メーカー。本社は愛知県刈谷市にあり、前身はトヨタ自動車の開発部門。
⇨ その他の70周年企業……アイシン精機、日本ハム、ワコール、ロート製薬など。
⇨ 1949年の主な出来事……法隆寺金堂壁画が火災で面焼失、下山事件・三鷹事件・松川事件が相次いで発生など。
●90周年 1923年(昭和4年)創業
日本道路……業界第3位の道路舗装大手。近年は土木・不動産・建築・スポーツ施設等に多角化。
⇨ その他の90周年企業……江崎グリコ、ヤマトホールディングスなど。
⇨ 1929年の主な出来事……小田急江ノ島線相模大野駅 ─ 片瀬江ノ島駅間開通、ニューヨーク証券取引所で株価大暴落(世界恐慌)など。
●100周年 1919年(大正8年)創業
オリンパス……医療・科学・映像の3分野で、内視鏡、顕微鏡、デジタルカメラなどの光学機器、電子機器を製造・販売。スタートは顕微鏡や体温計など理化学計器類。
⇨ その他の100周年企業……川崎汽船、日本碍子、キユーピーなど。
⇨ 1919年の主な出来事……ヴェルサイユ条約締結、平塚らいてうらによる女性解放運動など。
2019年に創業110〜200周年を迎える主な企業
●110周年 1909年(明治42年)創業
講談社……総合出版社。「大日本雄辯會」として設立され、当初は弁論雑誌の『雄辯』を出版。
⇨ その他の主な110周年企業……京成電鉄、三井倉庫ホールディングス、東京書籍など。
⇨ 1909年の主な出来事……伊藤博文暗殺、味の素発売開始、大阪市北区で大火(天満焼け)発生など。
●120周年 1899年(明治32年)創業
日本電気……コンピューターや通信機器等を製造する、日本を代表する電機メーカー。創業は、アメリカ企業が出資した日本初の合弁企業。
⇨ その他の主な120周年企業……森永製菓、福井銀行など。
⇨ 1899年の主な出来事……東京 ─ 大阪間に電話開通、国産第1号の活動写真上映など。
●130周年 1889年(明治22年)創業
任天堂……世界屈指のゲームメーカー。創業初期から製造・販売する花札やトランプは、現在も継続。
⇨ その他の主な130周年企業……兼松、日本生命、関西学院大学、日本大学など。
⇨ 1889年の主な出来事……大日本帝国憲法公布、東海道本線全線(新橋 ─ 神戸間)開通など。
●150周年 1869年(明治2年)創業
松屋……銀座三丁目に本店を構える、日本を代表する百貨店。横浜で創業された呉服店「鶴屋」がそのルーツ。
⇨ その他の150周年企業……木村屋總本店、神田錦町更科、大手薬局など。
⇨ 1869年の主な出来事……戊辰戦争終結、東京奠都、版籍奉還など。
2019年に創業200年以上の周年記念を迎える主な企業
●200周年 1819年(文政2年)創業
石塚硝子……ガラス製品、プラスチックや紙などの容器を製造。本社は愛知県岩倉市。創業時は、現在の岐阜県可児市でガラス製品を製造。
⇨ その他の200周年企業……大原種苗、宮尾酒造など。
⇨ 1819年の主な出来事……塙保己一「群書類従」刊行、文政近江地震発生など。
●300周年 1719年(享保4年)創業
油長酒造……奈良県御所市の日本酒メーカー。代表銘柄は「風の森」「鷹長」。
⇨ その他の主な300周年企業……若松酒造など。
⇨ 1719年の主な出来事……相対済令制定、長州藩に私立学校「明倫館」開校など。
●400周年 1619年(元和5年)創業
帯伊書店……和歌山市の中心市街地「ぶらくり丁」に店を構える県内最古の老舗書店。
⇨ その他の主な400周年企業……堀口酒造など。
⇨ 1619年の主な出来事……江戸幕府が大坂城代、大坂町奉行を設置など。
いずれの周年記念企業も、東京・大阪の大都市に多い
2019年に周年記念を迎える企業数を業種別にみると、
10周年ではサービス業、建設業、不動産業の順
30周年と50周年では建設業、サービス業、製造業の順
100周年では製造業、卸売業、小売業の順……となっている。
これは、昭和期以前には建設業や製造業が隆盛し、平成に入ってからサービス業などが台頭してきたことを表している。
また、都道府県別では、10、30、50、100周年のいずれでも東京都に本社を置く企業がトップ、これに大阪府の企業が続き、大都市圏に多いことがわかる。そもそも企業数が多いのだから、当たり前の結果と言えるだろう。
周年記念は、記念キャンペーンや記念事業などを行うことで、企業にとっては販促のチャンスとなる。未来に向けて企業がさらなる飛躍を遂げるきっかけにもなるので、注目したい。
起業しやすく、長く続けていける環境づくりを
ちなみに、日本一の長寿企業は寺社建築の金剛組(こんごうぐみ)で、飛鳥時代の578年創業。2019年で創業1441周年ということになり、日本に限らず世界で現存する「最古の企業」とも言われている。
長寿企業であっても、スタートは小さな起業だ。近年、年間起業数は概ね5万件で推移しているが、この数字をもっと上げていかなければ長寿企業も増えることはない。
これからの日本社会には、若者が起業にチャレンジしやすく、そしてその企業を長く育てていける環境づくりが求められるのではないだろうか。
≪記事作成ライター:三浦靖史≫
フリーライター・編集者。プロゴルフツアー、高校野球などのスポーツをはじめ、医療・健康、歴史、観光など、幅広いジャンルで取材・執筆活動を展開。好物はジャズ、ウクレレ、落語、自転車など。