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10日で100億円還元を果たした、PayPayキャンペーン騒動の顛末

【転載元】
日本クラウド証券株式会社
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PayPay(ペイペイ)……。まるでパンダの名前のようなキーワードが、初冬の街に旋風を巻き起こした。

それは、ソフトバンクとヤフーが共同で設立した、スマホによる決済システムの新会社PayPayの大型還元キャンペーンだ。当初は4ヵ月にわたる予定のものだったが、わずか10日で終了となってしまったこのキャンペーン。いったい何が起こっていたのか……、今回はその顛末をのぞいてみよう。

スマホのアプリを使った、現金不要の決済システム

PayPay(ペイペイ)なんて、誰もが数ヵ月前まで聞いたこともない会社だった。それもそのはずPayPayは、ソフトバンクとヤフーが2018年10月に共同で立ち上げた、できたてホヤホヤの新会社だ。同社では店頭で現金を使うことなく、スマホアプリによって代金を決済するサービスを提供している。

使い方は簡単(仕組みは図を参照)。
●まずはPayPayのアプリをスマホにダウンロード
●個人情報の登録を済ませる
●銀行口座を使って「PayPay残高」にあらかじめ必要な金額をチャージ(クレジットカード登録も可能)
●お店でほしいものが見つかったら、レジでQRコードかバーコードを使って決済
●その後、決済額が引き落とされる

今なら新規登録するだけで、「PayPay残高」には500円相当がプレゼントされるので、とりあえず登録しておくだけでもお得ではあるし、ファミリーマートなどの加盟店で残高まで無料の買い物ができる。また、買い物をするたびに支払った金額の0.5%が、毎回ボーナスとしてポイント還元されるため、その値引き分を次の買い物に生かすこともできる。

後発が打ち上げた「100億円あげちゃう」キャンペーン


QRコードの決済じたいは、実は新しくはない。すでに「AmazonPay」「LINEPay」「楽天ペイ」「OrigamiPay」などが先行し、市場は日々拡大している。

世界から圧倒的に立ち遅れているといわれる買い物のキャシュレス化を、官民一体となって推進しようとする当局の積極的な政策もあいまって、市場規模は2018年の1000億円から、2023年には8兆円にまで拡がると予想されている。ソフトバンクの2018年秋の立ち上げは、むしろ後発といっていい。

すでに乱立気味の市場に割って入るためには、まず社名を知ってもらわなければならない。つまり、認知度を上げるための仕掛けが必要で、それが今回打ち出した「100億円あげちゃう」キャンペーン。豊富な資金力をもつソフトバンクとヤフーだからこそできる、大がかりなデモンストレーションだ。

ご存じの方も多いと思うが、PayPayを使って買い物をすると購入金額の20%相当が還元される。還元額は月額5万円までなので、最高で25万円までの買い物ならかなりお得だ。また、抽選で当たれば10万円までの買い物で決済した金額が「全額戻ってくる」というボーナス還元も組み合わせた。期間は2019年の3月31日まで。

マスコミがこぞってとりあげたことで家電量販店に大行列が

これだけの還元額は過去に例がなく、2018年12月4日にスタートしたとたん、マスコミがこぞってとりあげ、テレビでCMを流れたことも相まって、加盟店、なかでも高額商品を売る家電の量販店などに買い物客が殺到。一時は、PayPayのサーバがダウンして、客が店頭で立ち往生する一幕まで現れた。

大手家電量販店のビックカメラでは、もともと8%のポイント還元を実施しているので、PayPayと合わせると28%もの実質値引きとなり、その情報がSNSで拡散されて、お店には長蛇の列が連日続く騒ぎになった。

10月にスタートしたばかりなのでまだ加盟店が少ないこともあり、一部の店に客が集中したのも混乱の原因となった。さらにこれだけ還元率が高いと、一部のユーザの間では最初からフリマサイトに出品して利ザヤを稼ごうとする転売目的も現れ、SNSが仲介した形となり、市場はますます混乱した。

10日間で500億円前後のすさまじい売れ行き

そして12月13日、キャンペーンがスタートして10日。還元予定の100億円はあっという間に達成し、この騒動はあっさり終了となった。このあまりにも早い幕切れは、誰にとっても想定外だった。

当初、PayPayサイドはキャンペーン設定期間を3月31日までとしていた。100億円達成が先になるとしても、こんなに前倒しになるとは思っても見なかったはずだろう。しかしながら、たった10日間で500億円前後がPayPayアプリを通して販売されたことになる。すさまじい売れ行きだ。

また、ユーザの間でも、早すぎるキャンペーン終了にはとまどいと失望が広がっている。今回の騒ぎを聞きつけ、初めてPayPayという会社を知り、ならばアプリをダウンロードして、登録して……と思っていた矢先のいきなりキャンペーン終了である。クリスマスのプレゼントにスマホ決済を試してみようと思っていた消費者も多かったはずだが、それらはあっさりと打ち止めとなってしまった。さぞ、がっかりであろう。

イメージダウン? それともソフトバンクの思惑通り?

今回の騒動、実はまだ完全に終わったわけではない。

キャンペーンは終了したものの、消費者のもつスマホのアプリにいま100億円が蓄積されている。このお金は2019年1月10日から各加盟店で順次使われ始めることになっている。キャンペーン期間中は20%の還元目的で大型店に集中したが、今度は身近なコンビニなどの小売店で使われることにもなる。これらの小売店にとって100億円は、ちょっとした特需になるのだろう。

こうしてみると、今回のPayPayキャンペーン騒動、果たして成功だったのだろうか。それとも失敗だったのか。立場によって判断は分かれるところだ。

期間中サーバダウンが起こったことや、キャンペーンがあまりにも早く終わったこと、またその告知の際に混乱を来たしたことなどで、ソフトバンクへの批判は結構大きい。イメージダウンはまぬかれない。しかし、それを差し引いても、誰も知らなかったPayPayという会社は、これで一気に知名度を上げた。QRコード決済会社ではいちばん知られるようになった。ソフトバンクの思惑は、ほぼ期待どおり成されたといっていいのではないだろうか。

アプリでの決済が、市場に普及するきっかけに?

消費者の側からすれば、ほとんどの人は今回のキャンペーンには乗り遅れたが、ソフトバンクのことだから、また何か新しいキャンペーンに打って出てくるかもしれない。それならば、とりあえず登録をしておこうというユーザは少なからずいるはず。
それと同じくらいソフトバンクにとって有意義なのは、今回の騒ぎでPayPayに加盟したいという小売店が一気に増える可能性があるということだ。

PayPayでは今後3年間は加盟店の決済手数料は無料にすることを打ち出している。ここが大切で、これまで楽天やアマゾンに一方的にしてやられていたスマホ決済分野で、加盟店を一気に増やすことができれば、一矢報いることができそうな気配である。結局のところ、“ソフトバンクしてやったり”という感じであろう。

それよりも、もっと大きな意味で注目したいのは、今回の騒動をきっかけに、中国や韓国ではすでに当たり前となっているキャッシュレス決済が、日本でも一気に広がる可能性が出てきている点だ。アマゾンや楽天などの先行会社にとっても、全体のパイが大きくなることはいいことだ。新しいショッピング・スタイルがいよいよ日本に定着するかもしれない。

≪記事作成ライター:小松一彦≫
東京在住。長年出版社で雑誌、書籍の編集・原稿執筆を手掛け、昨春退職。現在はフリーとして、さまざまなジャンルの出版プロでユースを手掛けている。

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