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【マレーシア】繊維業界で50万人が失業危機[商業](2021/07/21)

新型コロナウイルスの収束が見通せない中、マレーシアの繊維・アパレル業界が苦境に陥っている。長引く操業制限で生産が不安定になった結果、昨年の繊維製品の輸出額は大幅に減少。現地生産から撤退する外資系企業も出ており、そのあおりを受けて廃業や事業縮小に追い込まれる中小企業も少なくない。業界団体は、このまま操業できない状況が続けば、関連業界も含めて50万人が失業する恐れがあるとみている。

マレーシア・ファッション・テキスタイル・アパレル連盟(FMFTA)の試算では、新型コロナの感染抑制を目的とした操業制限で、繊維・アパレル業界は1日当たり1億6,300万リンギ(約43億円)前後の損害を被っている。タン・ティアンポー会長は、長引く操業制限で事業存続が困難な企業が増えているとして、「サプライチェーン(調達・供給網)全体で約50万人が失業の危機にさらされている」と訴える。

同連盟によると、昨年には新型コロナの感染拡大で外資系の繊維・アパレル企業4社がマレーシア国内の工場を閉鎖し、合わせて約6,000人が失業した。その余波は中小企業にも及んでおり、昨年3月以降に国内の繊維・アパレル企業の15%が事業を停止。廃業や事業縮小による失業者は1万5,000人に上る。キャッシュフローの悪化や先行きの不透明さから、さらに30%の企業が存続の瀬戸際に立たされているという。

マレーシア国内の繊維・アパレル業界は1970年代から欧米諸国やトルコなどに製品を出荷し、輸出産業の成長のけん引役となってきた。しかしコロナ禍での操業制限により生産が不安定になっていることから、マレーシア企業との取引を忌避する動きも出ており、20年の繊維製品の輸出額は前年比22%減の210億リンギに落ち込んだ。納期を守れず、訴訟に直面している企業もあるという。

タン会長は「先行きが見通せないため、受注を控えざるを得ない。このままでは足元の注文を失うだけでなく、将来的に他国に顧客を奪われることになる」と危機感を募らせる。

コロナ禍からの復興の道のりを4段階で示す「国家回復計画」では、繊維・アパレル業界が操業を再開できるのは第3期以降とされている。第3期への移行は9~10月がめどとされ、タン会長は「第2期でも操業を認めるべきだ」と主張する。

マレーシアではこれまでにクランタン、トレンガヌ、パハン、ペラ、ペルリス、ペナン、サバ、サラワクの8州が国家回復計画の第1期(ロックダウン=都市封鎖=に相当)から第2期に移行した。政府は先に、新型コロナワクチンの接種が進んでいることで、8月初旬には全国的に第2期入りできるとの見通しを示している。

■川下の小売業も苦境に

繊維・アパレル業界の川下にある小売業も同様に苦境にある。市場調査会社リテール・グループ・マレーシア(RGM)のタン・ハイシン社長は「(営業が大幅に制限されている)小売業者はオンライン販売に頼らざるを得ないが、人件費や経費を賄うほどの売り上げは得られていない」と指摘する。

いまだ国家回復計画の第1期にある首都圏などでは、食品や日用品など生活必需品を販売する店舗のみが営業可能で、衣料品の販売は認められていない。政府は先ごろ、首都圏に店舗を構える日系百貨店に対して服飾売り場を含めた営業の全面再開をいったん認めたが、市民の反発を受けて撤回した。

小売店が本格的に営業を再開できるのは国家回復計画の第3期に移行してからで、9月以降になる見通しだ。

小売店の多くが休業を強いられる中、商業施設は閑散としている=スランゴール州(NNA撮影)

小売店の多くが休業を強いられる中、商業施設は閑散としている=スランゴール州(NNA撮影)

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