【韓国】【韓国モビリティー】路線バスもエコで脱炭素貢献[車両](2021/06/09)

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温暖化ガス削減の鍵となる自動車の電動化は、乗用車よりも商用車で進んでいる。自治体が中心となり、路線バスでの電気自動車(EV)の導入も相次ぐ。国内最大手・現代自動車を中堅メーカーが猛追する一方、価格競争力を武器に中国製バスも攻勢に出てきた。温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「炭素中立(カーボンニュートラル)」実現には、バスやトラックなど大型車両の長期的な低炭素化が欠かせない。韓国における商用車の電動化の現状と課題に迫る。【清水岳志】

ソウル市の162番路線バスで運営中の宇進産電のEV「アポロ1100」=韓国・ソウル、2021年6月7日(NNA撮影)

ソウル市の162番路線バスで運営中の宇進産電のEV「アポロ1100」=韓国・ソウル、2021年6月7日(NNA撮影)

韓国では、路線バスが重要な「市民の足」となっている。路線は複雑に張り巡らされ、近年はバス専用車線も増えた。地下鉄よりも便利に目的地へ移動できるのが強みだが、その一方で、排出される温暖化ガスが環境に与える影響は無視できない。

韓国環境省によると、運輸部門における温暖化ガスの排出比率は、バスなど中・大型商用車が22%を占める。韓国ではPM2.5など微粒子状物質による大気汚染が深刻化しており、商用車の温暖化ガス排出量をいかに減らすかが課題となる。

■各地路線にEVバス登場

その解決策の1つとして、各自治体はEVバスの運用拡大を進めている。ソウル市の路線バスに現時点で投入されているEVバスは約380台。市内で運用されているバス全体(約7,000台、20年9月時点)の約5.4%にすぎないが、導入台数は徐々に増えつつある。

ソウル市北部の城北区から都心の鍾路区を通り、国会議事堂のある永登浦区汝矣島まで走る162番路線では2台に1台がEVバスで、車庫には専用の充電ステーションも備える。ソウル市都市交通室の関係者はNNAに対し、「市内の路線バスは市と民間の運輸会社が共同運営する『準公営』の形を取っている。そのためEVバスの導入を強制することはできないが、運輸会社からも『走行時の騒音が少なく、乗客からも好評だ』と追加導入を前向きに検討してくれている」と話す。ソウル市は今後5年以内に、市内の路線バスの半分以上をEVバスや水素バスに切り替える方針だ。

韓国で最もEVバスの普及が進んでいるのは南東部の慶尚北道浦項市だ。浦項市は昨年7月、12年ぶりに実施された市内バスの路線全面改編に合わせ、63台のEVバスを導入した。運用中のバス全体(263台)の24.0%がEVバスということになる。浦項市は今年中に、20台のEVバスを追加投入する計画を明らかにしている。

■中堅メーカーが存在感

環境省の補助金支給額を基にしたEVバス市場は、現代自がシェアトップを走るが、近年はエジソンモーターズと宇進産電の追い上げが目立つ。現代自のシェアが19年の40%から昨年は8ポイント減の32%となった一方、エジソンモーターズは同期間に26%から28%に、宇進産電は9%から12%にそれぞれシェアを拡大した。

エジソンモーターズは路線バス向けに、「eFIBIRD PIEV」と「SMART11H」の2モデルを供給している。1998年設立の同社はこれまで、圧縮天然ガス(CNG)バスなどの低炭素型商用車で市場をけん引してきた。近年はインドネシアやインドなど海外にもEVバスの輸出を開始したほか、今年から次世代電池とされるリチウム硫黄バッテリー開発にも着手した。

17年から使用している現在の社名は、「発明家のエジソンほど世界的に知られた会社に成長する」という目標から付けられた。同社のカン・ヨングォン代表は、韓国メディアとのインタビューで「10年以内に米テスラを超える」と強調しており、現在は小型EVを手掛けるセミシスコや企業再生手続き(会社更生法に相当)を申請した国内5位の完成車メーカー・双竜自動車の買収も推進している。

エジソンモーターズのEV「eFIBIRD PIEV」=韓国・ソウル、2021年6月7日(NNA撮影)

エジソンモーターズのEV「eFIBIRD PIEV」=韓国・ソウル、2021年6月7日(NNA撮影)

宇進産電は代表モデルの「アポロ1100」を武器に、EVバス市場でシェア拡大を図っている。20年に全国で新規導入されたEVバスは約660台だが、同社はこのうち約100台を供給した実績を持つ。

宇進産電は1974年に設立され、鉄道車両を中心として電動化に取り組んできた企業だが、EV事業部は設立されてわずか2年だ。独MANの韓国法人・マントラックコリアで大型バス開発に携わったイ・ホヨン社長の下、「国内のEVバスシェア30%」を目標に掲げ、主力の「アポロ」シリーズのラインアップ拡大を急ぐ計画だ。同社のEV営業担当者は「(宇進産電の)EVバスを導入した顧客の利便性向上のため、全国のサービスセンターを現在の3カ所から12カ所に拡大する予定」と話した。

■現代自は「水素バス」実用化へ

一方、現代自はバスでも水素燃料電池車(FCV)の普及を目指している。昨年12月にはソウル市の370番路線バス向けに「エレクシティー」のFCVモデルを導入。これを皮切りに、全国各地の路線にも水素バスを投入していく考えという。

現代自によると、エレクシティーFCVは1回の充電で最長434キロメートル走行できるが、商用車用の充電設備を使用すれば満充電までに15分しかかからない。ソウル市は「水素バス1台の投入で年間12トンの二酸化炭素(CO2)を削減できる。これは、樹齢30年の松の木1万9,000本が吸収する量に相当する」とし、25年までに1,000台の水素バス導入を目指す。

BYDのEV「eBus-12」。路線バスでは価格競争力の強い中国メーカーの存在感も大きい=韓国・ソウル、2021年6月7日(NNA撮影)

BYDのEV「eBus-12」。路線バスでは価格競争力の強い中国メーカーの存在感も大きい=韓国・ソウル、2021年6月7日(NNA撮影)

■中国バスの攻勢が脅威に

EVバスや水素バスの普及における最大の課題は「価格」だ。一般のバスに比べて割高なため、路線バス運用会社の購入負担が大きい。韓国政府はこれを考慮して補助金制度の予算を毎年増額し、購入者の負担軽減に努めている。

その一方で、比亜迪(BYD)や海格客車(HIGER)などの中国メーカーが脅威となりつつある。路線バス向けの国産車(48人乗り以上)の価格は平均3億ウォン(約2,900万円)半ばから後半程度だが、中国製のEVバスは2億ウォン半ばと比較的安い。ある中堅バスメーカーの営業担当者は「中国製は政府の補助金が手厚いため、タダ同然で購入できた」と説明する。

このため韓国政府は、今年からEVバスの購入時に最低1億ウォンの「義務自己負担額」を設定。中国製バスの購入時は補助金の支給額が相対的に減ることになる。政府はこれにより、高い価格がネックだった国産バスの購入を促す考えだ。

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